2009年度作成

事業所名

株式会社 南光

所在地

鹿児島県鹿児島市

事業内容

金属製品製造業

従業員数

261名

うち障害者数

8名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	3名	溶接及び組立工（内、役職者1名）
肢体不自由	1名	セラミック研削機械のオペレーター
内部障害	4名	経理担当、営業担当（内、役職者1名）
知的障害
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯及び理念
3. 募集と採用に関して
4. 長期定着の理由
5. 今後の課題
6. 障害者の採用を検討している経営者の方々へ（社長からのメッセージ）

1. 事業所の概要

昭和46年創業。県内同業者の中では後発組であるが、創業精神である「仕事を断らない」「（我々は）サービス業である」を頑固なまでに堅持しながら、それ以外の部分では周囲の状況に合わせて変化し続け、またこれからも変化していくべきという柔軟な進取の精神も大切にして、順調に業績を伸ばしてきた。

事業の主力は、創業時より続く金属製品製造（建築金物、半導体製造装置、プラント等の設計、製作、施行）であるが、十数年前より環境関連機器の開発に着手、現在、その第一弾として植物性廃食用油リサイクル装置（廃棄される植物性食用油から軽油代替燃料を作り出す装置）の設置・販売も行っている。

営業所等	本社第一工場（鹿児島県鹿児島市：今回の取材先） 他
	工場（県内4・県外2か所） 支店・営業所 計3か所

2. 障害者雇用の経緯及び理念

上田平（かみたひら）孝也社長の言によれば、創業者である先代社長が「法律で義務付けられているのであれば、我々も障害者を雇用しなくてはならない」という思いを強く抱いたことが障害者雇用の始まりであったようだ。

話は続く。私企業である以上、効率の追求、利潤の確保・拡大はもちろん不可欠であるが、それが全てではない。経営者たる者、常に「何のために経営を行っているのか」を考えなければならないが、その答えの一つは、企業は社会的責任を負う存在であり、世の中のため人のために何らかの社会貢献を果たす義務があるということだ。そしてその具体的行動の一例が障害者に職場を与える、開放することだと捉えている。

現在、同社ではあらゆる面において障害者であることを理由とした『特別扱い』を認めていない。障害者のためだけに、あるいは障害者のみに向けて、『健常者とは別に』行われるなにかが、ほとんど存在しない。

例えば、今回取材した本社第一工場では3名の聴覚障害者が溶接・組立工として働いているが、彼らが『健常者とは別』の『特別扱い』されるのは、コミュニケーションの方法においてだけである。

つまり、朝礼や会議の内容、図面の細かいニュアンスを伝達・確認する際には身振り手振りや筆談、あるいは別途に作成した文書を用いるし、在宅中の障害者と会社がコミュニケーションを取る場合は、ファクシミリを使用し、又は障害者の家族（健常者）に両者の中継役を務めてもらうという、聴覚障害者に対して一般的に行われている、ごくありふれた方法をとる。

3. 募集と採用に関して

お客様のどのような注文にも応えるのが創業精神の一つ「仕事を断らない」だが、採用に関しても同様に「来る者は拒まず」の姿勢を貫いている。すなわち、経験者・未経験者の別、障害者・健常者の別などに関わらず、入社を希望する者には等しく門戸を開いているのである。同社で働く工員の中には、レストランの元コックという異色の経歴の持ち主も珍しくなく、経験者よりは未経験者の方が多いくらいだという。

20年くらい前からは新卒者の採用を開始。この未曾有の不況下、特に地方の製造業にとってはより厳しい状況が続いているが、雇用調整を一切行わず、平成22年度も新卒採用を予定している。（新卒採用では、中小企業家同友会の共同求人のシステムを利用している。）

未経験者あるいは新卒者であっても、資格取得奨励策及びOJTによる社内研修制度がしっかり確立されているため、業務上必要な資格は入社後の取得が可能であるし、スキルアップも問題なく果たせるという自信に裏打ちされた募集・採用方針である。

また、中学生、高校生の工場見学、養護学校生徒のインターンシップなども積極的に受け入れている。その中から同社に興味を持つ生徒が一人でも出てくれれば、それが将来の人材確保に繋がると考えるからだ。

4. 長期定着の理由

上田平社長は、各人がこの仕事にやりがいを感じていることが一番の理由ではないかと考えている。例えば注文書や設計図を読み間違え、欠陥品を作ってしまった場合、始末書を書かせ、注文の製品が完成するまで必ずやり遂げさせるのだという。こうして一人ひとりに自覚と責任を持たせることで、高いレベルでのモチベーション維持を図っている。また、自分たちが作ったモノを実在の建造物や製品の中で見ることができるというモノづくりならではの長所が、誇りと喜びに繋がっており、それもまたやりがいに繋がっているのだろうという。

さらに川原工場長が続ける。同社の製品は100％注文生産であり、同一の商品を繰り返し作るということがないから、飽きがこない。そしてなにより、皆モノ作りが大好きであり、全員手先が器用で（程度の差はあるが）、かつ納得するまで妥協しない気質、頑固というか職人肌というか、を持ち合わせており、モノ作り向きの人材であることも長期定着の一因と考えられるのだそうだ。

本稿2「障害者雇用の経緯及び理念」の欄で述べたように、同社では障害者を『特別扱い』していない。それは具体的にはどういうことなのか。障害者のための特別な取り組みがないので、同社の制度・取り組み  ～それはつまり障害者・健常者のどちらにも適用されるということ～  の一部を紹介することで、障害者も平等な扱いを受けており、もって長期定着の一因となっていることの説明としたい。

・給与体系、昇格昇進などの人事管理の面で、障害者と健常者の間に差異は皆無。

・必要ならば残業も平等にこなしてもらう。

・年1回のスポーツ大会（ソフトボール、ゴルフ、バドミントンなどで争う工場対抗戦。社員の家族も参加。）を始め、会社行事・レクリエーションは原則全員参加。

・NPSスクール（業務の効率化等を目的とする同社の職務改善活動。1年半ほど前から実施。）への取り組みは全員参加。

・業務に直結する資格等の取得奨励策は全員に適用。

業務上必要な資格は多岐にわたる（フォークリフト、クレーン、塗装、プレス機械取扱、各種溶接関係など）。以前は会社が業務命令を発し、試験手数料などの費用を負担する、いわば会社主導で社員に資格を取得させていた。5、6年前より、費用の本人負担（ただし、会社の立替制度を利用できる）、必要なら年次有給休暇を使用することとする、社員の自主性・積極性を尊重する制度に変更、資格取得者に対する給与面での処遇を厚くした（具体的には資格手当の範囲拡充と額の見直し）。

・業務に対する積極的な工夫・改善策の提案を全員に義務付けている（1件以上／月）。

・毎月一回定期開催される幹部会、従来は各工場等の責任者を集めて本社で開催していたが、3年くらい前より各工場等での持ち回り開催に変更した。こうすることで少なくとも数か月に一回は各現場を直接見ることとなり、安全衛生面における効果はもちろん、現場の問題点（時として、それは障害者が働きやすい職場つくりにも影響する）に対する会社としての意思決定が迅速化した。

・「見える化」の実施。

工場内にスキルマップを設置、現時点での個々人の持つ資格や技量の程度、今期の個人目標を書き込むことで、資格取得やスキルアップに対する意欲向上を図っている。

※  スキルマップは、縦軸が氏名（上から勤続年数の長い順）横軸が資格名称となっている。氏名を隠すため、写真では縦軸を切ってある。

5. 今後の課題

手話通訳のできる社員が数年前に定年退職して以降現在に至るまで、手話のできる社員がいない状態が続いている。聴覚障害者とのコミュニケーションを深めるため、手話に堪能な社員を増やしたい。会社が命令するのではなく、社員に自主的・積極的に手を挙げて欲しいので、手話を勉強したいという社員を社内公募する予定である。

6. 障害者の採用を検討している経営者の方々へ（社長からのメッセージ）

まずは障害者と話をしてみてください。可能性を求めて話し合うことで先が開けてきます。障害の態様は個々人によって様々ですが、会社の中にもいろいろな仕事があります。このことを十二分に踏まえ、かつ障害者それぞれの特長にあった仕事、会社内で出来る仕事を見つけてあげるという気持ちを忘れないでください。そしてもう一つ。障害者を採用する最初の取り組みのときは、とても勇気が要りますが、是非その勇気を持っていただきたいと思います。

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