「思いやりの精神」「慈悲の心」で接し、「適した職場」に配置して楽しく仕事をしてもらう
- 事業所名
- 株式会社小松製菓
- 所在地
- 岩手県二戸市
- 事業内容
- 菓子製造
- 従業員数
- 250名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 2 機械の開発・点検・補修、包装作業 内部障害 知的障害 2 包装作業 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要等
①事業の概要 | 菓子製造 |
②経営方針 | 感謝と創造(社訓) |
③組織構成 | 代表取締役社長 小松 務 |
④障害者雇用の理念 「思いやりの精神」と「慈悲の心」で接し、適した職場に配置して楽しく仕事をしてもらう。 |
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⑤その他 昭和23年に、現社長の母である小松シキ氏が南部せんべいの製造販売業を始め、昭和45年に法人化。子どもの頃から苦労したシキ氏なので、常に周りに感謝することを忘れない。それが現在同社の社訓になっている「感謝と創造」につながっている。 岩手県北部と青森県南部にまたがる旧南部藩の地域で、郷土菓子として親しまれている南部せんべい。その製造販売から始まった同社だが、現在はそれを核にさまざまな菓子も手がけている。そんな中で盛岡市につくった洋菓子店「タルトタタン」は順調に業績をのばし、現在は別会社にしている。 また、定年退職者の新しい雇用の場として、蕎麦などの郷土料理を提供する「自助工房四季」を本社近くにつくり、運営している。 |
2. 障害者雇用の経緯、背景等
①経緯
現在雇用している障害者4人のうち、右手に障害のある男性(67歳)は、同社の機械開発部門に勤めていた20年前に、機械の事故により障害を持ったのだが、リハビリなどを経て仕事に復帰。現在も機械の開発や点検、補修を担当している。
そんな中、小松社長が二戸市社会福祉協議会の副会長となる。障害者雇用に意欲を示し、昭和63年に養護施設からの依頼で、知的障害者の女性を初めて採用。「菓子製造業は包装作業や選別作業があるので、お願いしたいと思う」という戸舘誠二常務の言葉どおり、せんべいにイカを付ける作業や袋詰め作業を担当している。
その後も、平成12年に地元の公共職業安定所(ハローワーク)からの紹介で足に障害のある女性を、平成19年に養護学校からの依頼で知的障害の女性を採用。前者は包装部門に配属され、基本的に立ち仕事なのだが、慣れたら特に問題はないという。また後者も包装部門に配属され、商品の箱詰め作業を担当している。
そのほかに取材時には、今春正式採用の知的障害の男性も現場の体験実習に参加していた。また、上記の他にこれまで3人の障害者が入社したが、結婚などの理由で退職。最初に採用した女性は子育てしながらの勤務をこなし、19年度には永年勤続20年の表彰を受けた。
②背景
社長が福祉協議会の副会長という事もあってか、福祉に対する理解が深い。また、創業者のシキ氏から受け継いだ独特の社風が大きいと思われる。
戸舘常務によると、同社には「モラロジー」の考え方が根強くあるという。「モラロジー」とは「モラル」と「ロジカル」の造語で、「思いやりの精神」や「慈悲の心」が根底にある。シキ氏の夫の実氏はこの「モラロジー」を早くから学んでいたこともあり、この考え方は社員にも浸透しているようだ。
また、シキ氏が定年退職した従業員のために働く場としてつくった「自助工房四季」の存在も大きい。シキ氏は、お客様にはもちろん取引先や従業員に対しても感謝の心を忘れていなかった。それを身近で見てきた小松社長が、福祉活動に積極的なのも頷ける。
同社では10年以上前から、二戸市や隣の一戸町にある授産施設に、箱の組み立てやシール作りなどの作業を委託している。
③その他
同社では「感謝と創造」を社訓に掲げるほか、毎朝朝礼で唱和している7箇条がある。
もう一度会いたい人格をつくります
もう一度食べたい製品をつくります
仕事を通して社会に貢献します
思いやりの心で人と接しましょう
小さなことを大切にしましょう
身の回りをきれいにしましょう
明るくあいさつします
これらを見ても、経営陣の考え方や社風が「人寄り」であることが理解できる。障害がある、ないに拘わらず、人を大切にする企業といえる。
3. 取り組みの内容等
①具体的な内容
・足に障害のある女性に対しては、障害のない人と同様の指導をしている。
・知的障害者については、実習期間を経て採用を決めている。一戸町の養護学校から雇用を依頼される際は、施設と共に体験実習を企画し、その参加者の中から採用を決めている。体験実習は1日6~7時間で、1~2ヶ月間実施。だいたいは包装作業を学んでもらっている。混乱しないよう、同じような作業を担当させるよう心がけている。
・あまりに単純作業だと集中力が続かない事もあるので、違う菓子の種類の箱詰めや包装など、ポジションを変えることもある。
・知的障害者への対応としては、早口ではなく、ゆっくり説明するように気を付けている。また慣れるまでは、決まった人をそばにつけてマンツーマンで教えるようにしている。
・実習後、就職希望者が多い場合は、作業能力や、周りとコミュニケーションがとれる明るい性格かどうかを見て、採用を決めている。「性格によるところが大きい。中には自分の殻に閉じこもる人もいるが、それでは職場にはなじめないし本人も後で苦しむことになると思う。やはり楽しく仕事をしてもらいたいので、明るい性格の人がいい」と戸舘常務。
・障害を理解し、万が一トラブルが起きた時でもうまく対応できるようにするため、養護学校の先生やスタッフとはまめにコミュニケーションをとるようにしている。
②活用した制度や助成金
重度障害者職場適応助成金、試行雇用奨励金
③その他
・もともと工場がバリアフリーになっているので、採用に合わせて特にハード面で整備していない。
「障害者の人たちのために新しく仕事を作ったとか、機械などを導入した、ということもない。現在の職場の中で適した場所を見つける事が、最終的に良いのでは」と戸舘常務。

箱詰め作業をする知的障害者の女性。

工場内の作業場のそばには箱詰め例を大きく貼り出し、
ミスを防ぐ。

箱詰め作業をする、
勤続20年以上のベテランの女性。

足に障害のある女性は、この日は座っての作業。
立ち仕事にも慣れているが、
時々こうした配慮をしているようだ。

今春入社予定の知的障害者の男性。
すでに慣れた手つきで仕事をしていた。

男性の作業場に貼られた、
作業工程を記した紙。

工場内には商品を仕分けるための標示が多い。

個装された商品が入った箱の外側には
中に入っている商品の写真を貼り、間違いを防ぐ。

同社工場の外観

同社では珍しい、機械を使った流れ作業。
4. 取り組みの効果
①取り組みを実施したことによる効果
・知的障害者に関しては、実習を経ているので、正式採用後はスムーズに仕事をこなしてもらっている。特に平成19年に入社した知的障害の女性は、障害のない人と同様に働いている。一方、20年以上勤務している知的障害の女性は、なれない仕事では作業効率が落ちるが、それでも忙しい時は応援部隊として活躍している。これは本人も飽きずに仕事をするということでプラスになっている。
・実習を経験していると、上司や同僚ともすでにコミュニケーションがとれているので、トラブルなどは発生しにくい。
・平成19年に入社した女性は、明るい性格なので、職場にもなじんでいるようだ。同僚からも人気がある。
②障害者雇用の波及効果
・現在働いている障害を持つ従業員たちは、全体的にまじめで遅刻や無断欠勤などはない。その点で他の社員の見本になっている。
③障害者自身のコメント
・女性2人は共に、「仕事は楽しい」と話していた。
④その他
体験実習には最初は興味を持って参加するが、実際に体験すると単純作業に集中して取り組むことができないケースも少なくない。その見極めは重要だ。また、最初はまじめな印象でも、中には無断欠勤が続く人もいた。そういう場合は自分から辞めていく事が多いという。
5. 今後の課題・展望等
「会社としては、『地元に残れる企業』としてあり続けたい」と戸舘常務。本来南部せんべいの市場は決して大きなものではないが、最近は健康食品ブームや郷土食ブームが定着傾向であり、新しい商品の開発にも積極的に取り組む方向だ。
障害者雇用については、今春1人が正式入社予定なので、今後は特に採用を予定していない。
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