事業所名

日本クラント有限会社

所在地

栃木県下都賀郡

事業内容

プラスチック塗装・金属塗装・スクリーン印刷・パット印刷・ホットスタンプ・レーザーマーキング等、表面処理全般  超音波溶着・各種ASSY等

従業員数

140名（うち壬生工場  67名）

うち障害者数

7名（壬生工場のみ）

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	1	検査
肢体不自由
内部障害
知的障害	6	治具の洗浄、ライン投入
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯、背景
3. 取り組みの具体的内容
4. 今後の課題と展望

事業所外観（壬生工場）

1. 事業所の概要

平成元年4月に創業、平成10年7月に会社設立。特殊印刷会社で、主にプラスチック塗装、金属塗装、スクリーン印刷、ホットスタンプ、レーザーマーキング等を行っている。金型製作からの一貫生産をグループ工場と共に受注（金製製作→単色・2色成型→加飾工程→検査→組立て）。

壬生工場で印刷部門と塗装部門を行っていたが、平成18年5月に都賀工場へ印刷部門が移転し、壬生工場では塗装部門のみを行っている。

平成21年1月に壬生工場が移転し操業を開始し、同年ISO9001認証を取得。壬生工場は、塵や埃が入るのを防ぐために作業スペース全体がクリーンルームとなっており、クリーンルーム投入前防塵ブースやクリーンルーム投入ラインを設けている。現在、従業員数（社員・パート・アルバイト・派遣を含め）140名、うち障害者が7名である。

2. 障害者雇用の経緯、背景

現在、雇用している障害者は7名で、全員壬生工場で働いている。障害者を雇用するということに対しては、あまり深く考えて始めたというわけではない。過去に障害者の受け入れの経験（短時間のアルバイト）もあり、壬生町にある授産施設の職員から、「知的障害者が出来る仕事はないか？」という問い合わせに、ここで仕事をしたいと思う人、また、うちの仕事ができる人であれば、障害があるないは関係ないと思い、雇用してみようと決めたのが始まりだった。授産施設の職員と昔からの知り合いということもあり、連携を取りながら授産施設から1名（Aさん）を初めて雇用し、その後5名の利用者のグループ就労訓練を約2年間行い、グループ就労訓練終了後は、その中から一人雇用を決め、現在も働いている。

授産施設や障害者就業・生活支援センターからの紹介で雇用した方たちは、現在も継続して働いている。ハローワーク（公共職業安定所）からの紹介で雇用し、その後の継続した支援を利用していない方は長く続いていないことが多い。トライアル雇用期間が終わったら支援も終わりでは、後ろ楯が無くなるようで企業側にも障害者にも不安が残る。支援者から企業側にアドバイスをいただき、関係機関との連携を取り合っていくことが職場定着に繋がるのではないかと思う。

3. 取り組みの具体的内容

（1）始めての雇用Aさんについて

平成18年3月から授産施設利用者（知的障害者）を、雇用前職場適応援助者（ジョブコーチ支援）による支援を利用しながら、壬生工場で1ヶ月間実習を行った。

過去に障害者受け入れの経験はあったが、現場従業員にとって、知的障害者への対応は初めてとなるので、Aさん本人の了解を得ながら、本人の性格及び障害特性や対応について、周囲の従業員に理解を求める為の助言・援助を行った。

作業内容は主に化粧品ボトル印刷の補助作業等。ボトルを印刷機から乾燥機のコンベアに移す作業では、印刷部分に触れないようボトルの先端を持ち、乾燥機のコンベアに倒さないように、接触させないように移すというもの。細やかな作業が得意ではない為、時間を要してしまうと支援者から聞いていたので、安全・確実に作業が行えるよう、現場責任者と相談をしながら支援を行った。

職務遂行上の指導方法としては、作業時の指示が正確に理解できているか確認し、随時相談しながら、正確性を高める為の支援を行った。また、事業所との連絡が適切に図れるように、Aさんの支援を行っている障害者就業・生活支援センターが中心となり、保護者・関係機関との連絡・調整を行った。

平成18年4月からトライアル雇用を開始して、5月下旬に印刷部門が都賀工場に移転。Aさんも異動となり、壬生工場から会社の送迎で出勤していた。都賀工場でも作業に関しては変わらず頑張っていて問題はなかったが、休憩時間が固定ではなく、作業状況に合わせて取るようになったため、指定時間に戻れないことが続いた。時間の認識が出来ない為に他者と話し込んで遅れてしまう様子が見られたので、キッチンタイマーを用意し、その都度セットして休憩時に渡す方法をとるようにした。それからは、時間に遅れることなく戻れるようになった。

平成18年10月、都賀工場から壬生工場へ移動。理由は、壬生工場で、以前利用していた授産施設の利用者の人達が企業内授産を開始したこと、実習中の利用者がいて働きやすいのではないかということ。また、壬生工場なら自力で通勤出来ると考えた。送迎により往復1時間費やしてしまう事は、事業所にとって大きな負担となっていた。

支援を行っている障害者就業・生活支援センターに、都賀工場から壬生工場への移動の報告をし、それに伴い通勤経路の再確認と出勤時間の調整を行った。

壬生工場では、印刷部門の仕事はない為、Aさんの出来る仕事を見つけるのにとても苦労した。治具を付けたり外したりといった作業や製品のブラシかけをやったりしたが、なかなか上手くいかなかった。不良品を出してしまうことが多くなり、この作業を続けるのは難しいと考えた。そこで、関係機関に相談した。出来る仕事を見つけたいという強い思いで、Aさんがいた授産施設、障害者就業・生活支援センターの方たちと協力し合い、単純作業で出来る仕事はないか、工場の中の仕事を全て見て歩き、一からのスタートだと思いながら探した。その結果、治具の洗浄の作業にたどり着いた。

塗装をする治具をブラシを使ってシンナーで洗浄するという作業だ。シンナーを使うので匂いがきつく、単純作業のため従業員は嫌がる仕事なので不安はあったが、今まで行ってきた作業の中で一番Aさんには合っていると感じている。

（2）企業側が作業以外で気をつけていること

健康面である。自分自身で体調が大丈夫かどうか分からない為、訴えることが出来ない人もいるので、休憩時や昼食時には、時々様子を見るようにしている。特にAさんは小柄でやせ形、食も細いので、注意して見るようにしている。また体調が悪くなった時、関係機関との連絡が適切に図れるように調整を行っている。

洗浄作業の様子

廃棄作業の様子

4. 今後の課題と展望

今後、障害者雇用を進めていくにあたり、今ある業務の中でいかに適した仕事を見つけていくのか、また今ある業務内容が何年も続くわけではないので、今雇用している人たちの仕事をいかに常時確保していくかが課題だと思っている。

現在、140名の従業員の方みな個性があり、うちの会社だけではなく、完全な人間はいないと思う。手が不自由な人、足が不自由な人でも、仕事があればやって欲しい。障害者という括りではなく、障害のない人も障害のある人も同じ一人の従業員として考えている。

働きたい意欲と出来る仕事があれば会社にとっては必要な人である。企業として利益を追求していく事は当然だが、大袈裟にいうと従業員全員が幸せにやっていけるように、出来る事を一生懸命やって、みんなで良い会社を作っていきたいと考えている。

障害者雇用を行う企業側としては、障害者就業・生活支援センターのトライアル雇用が終わっても定期的に訪問して作業の様子など見て貰える支援が必要なので、関係機関との連携を取りながら、障害者の雇用に取り組んでいけたらと思っている。