事業所名

ヘイコーパック株式会社

所在地

栃木県芳賀郡芳賀町

事業内容

紙袋・包装紙の製造業

従業員数

115名

うち障害者数

20名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	2	梱包作業
肢体不自由	2	事務、印刷機オペレーター
内部障害	0
知的障害	15	梱包作業、清掃作業
精神障害	1	事務、梱包作業

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容とその効果
3. 最後に

事業所外観

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

創業は昭和38年、紙袋・包装紙の製造業として昭和55年に現社名に組織変更して今日に至る。ていねいで穏やかな生き方の中に、真の生産性の向上を目指すことを目的に、挨拶・後始末・掃除を徹底・重視して、経営の根幹に据えている。和の社風が創る心豊かな社員と、みんなの思いをのせた製品が事業所の最大の強みとなる。

以前は手加工のものがあり、養護学校（現特別支援学校）との交流があったことから、早くから障害者雇用の実績があった。しかし、本格的な雇用のきっかけは以下のとおりである。第一に、障害者合同就職面接会で当事者や家族、ハローワーク(公共職業安定所)からの熱心なアプローチにより3ヶ月間のトライアル雇用を経て本採用に踏み切ったこと。第二に社会福祉法人こぶしの会けやき作業所との地域交流により、障害者雇用への理解が深まり、採用に結びついたこと。

昨年は、障害者合同就職面接会や特別支援学校から、2名採用をした。

2. 取り組みの内容とその効果

（1）Aさんについて

Aさん（33歳、女性）精神障害  2級

平成12年から第2けやき作業所（精神障害者小規模共同作業所、現多機能型就労移行支援事業所）に通うようになり、平成18年から一般就職に向けての作業に取組みはじめた。

作業内容は、事業所から請け負った作業で、週5日1日5時間、意欲的に取り組んでいった。Aさんは、真面目で礼儀正しいが自己表現することが苦手であったため、作業以外でも利用者自治会等で、様々な人と交流することで苦手なことを克服した。

主治医と相談しながら生活リズムの改善に努め、精神面での安定が見られたため、平成21年2月の障害者合同就職面接会に参加し、面接を受け、見学→実習→トライアル雇用という流れでの採用となった。

作業風景

（2）定着への取り組み（実習編）

Aさんは新しい環境の中では、極度の緊張や精神的不安になりやすいと自覚していたため、第2けやき作業所就労支援員が障害者就業・生活支援センターに相談した結果、まずいきなり就職するという不安の軽減を図る目的として、1日2時間の実習（就業体験事業）を2週間行った。実習中は、自転車通勤や職場の環境（仕事・対人関係）に慣れるための体験をし、作業所の就労支援員と障害者就業・生活支援センターが連携して訪問を行い、本人の様子を把握していった。

作業内容は、作業所でも取り組んでいた事業所製品の紙袋に中敷きを入れる作業や梱包作業を工場内で行ったり、商品がラインから流れてきたものをラックへ積む作業を交互に行ったりした。対人関係での不安もあったが、実習中は自ら女性パート従業員や障害のある従業員に、指示を仰ぎながら取り組む姿勢が見られた。

課題となったのが作業の継続力、疲労等によるふらつきと眠気、人からの指摘に対するストレスにAさんが耐えられるかどうかであった。

（3）定着への取り組み（トライアル編）

上記の課題が見られたため、本人、事業所、ハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、作業所の就労支援員が出席するケース会議でジョブコーチ支援を導入することとなる。初めの1ヵ月は、週3日程度の訪問頻度で、Aさんの作業遂行と精神的ストレスや疲労の負担軽減、事業所へ精神障害の理解を図る支援を行った。また、Aさんの心身状態を把握するために、睡眠時間や疲労程度、作業の感想等を記載した日誌を支援ツールとして活用した。訪問時、日誌を確認して不眠や疲労がある場合は、その都度Aさんに確認して無理のないようにアドバイスをし、同時に事業所にも配慮してもらうよう努めた。

作業面では、事務作業と梱包作業を交互に行った。事務作業もはじめはゆっくりとしたペースだったが、作業のコツをつかみスムーズな動作で取り組むことができるようになった。ジョブコーチから他の従業員へAさんの特徴を伝えていたため、人からの指摘に対する強いストレスは感じないとのことで、素直に聞き入れることができるようになった。

服薬等による仕事中の眠気やふらつきが半年ほど続いたが、その後徐々に体力や集中力がついてきたためか軽減されてきている。

3. 最後に

正式雇用されて半年が経過し、Aさんは事務作業を中心に工場内の梱包作業を行っている。今では包装紙の種類を覚えるために、包装紙のスクラップノートをつくり、仕事に積極的に取組んでいると事業所から評価されている。

はじめての精神障害者の雇用で事業所としては気をつかう場面もあったが、「Aさんはまだスタートした段階なので、これからが大切」と鈴木健夫社長は話す。「今後いかにやりがいのある仕事をしてもらうかを現在考えている」とのことで、事業所側の理解があってこそ今のAさんの安定した職業生活があると改めて感じた。

現在もAさんは、短時間の勤務（3時間）であるが、体調面に留意しながら今後30分ずつでも勤務時間を延ばしていきたいと向上心に満ち溢れている。その気持ちを関係機関で支えていければと考える。