案ずるより産むが易し。障害者雇用のススメ
- 事業所名
- 株式会社ニチレイフレッシュプロセス
(旧株式会社ニチレイティーピーセンター) - 所在地
- 神奈川県横浜市
- 事業内容
- 精肉加工、畜肉を使用した総菜の加工
- 従業員数
- 123名
- うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 清掃洗濯 内部障害 2 精肉加工・清掃洗濯 知的障害 8 精肉加工・清掃洗濯 精神障害 - 目次
- ホームページアドレス
- http://www.nichirei.co.jp/fresh/index.html
1. 食卓を陰で支える精肉加工
「ニチレイ」と言えば冷凍食品だが、ニチレイグループでは食品の製造・加工をはじめ物流事業など、さまざまな事業を行っている。
株式会社ニチレイフレッシュプロセスは、主に国内外から仕入れた畜産物や水産物を加工・販売するニチレイフレッシュグループの一員として、畜産物の加工を担当している会社。国内外から搬入されてくる鶏・豚・牛などの食肉を加工し、スーパーマーケットや外食産業に納めている。
「加工といっても、お客様との取り決めによってスライスやミンチなどしてスチロールのトレイに盛ってパックするほか、鶏肉なら唐揚げ用に切り分けて味付けしたり多種多様。クリスマスの時期には照り焼き用の鶏もも肉の準備で大忙しです」、そう語るのは、中尾総務部長。
季節により加工の内容は変化するが、「おおむね秋冬は出荷量が多く、春夏は少なくなりますね」と、消費動向を分析した。
また、鶏一羽丸ごとや、豚や牛も大きな肉塊のまま売買されることの多い海外と違い、食習慣の違う日本では、食肉は細かくスライスやカットして店頭に並べられることが多い。料理に時間をかけていられない忙しい家庭の主婦にとって、精肉加工は便利で力強い味方でもあるのだ。
「日本では当たり前のように思われていますが、実は日本の食卓を陰で支える大切な仕事なんですよ」
2. 知的障害のある社員は戦力
ニチレイフレッシュプロセスは、本社のある横浜南事業所と川越事業所(埼玉県)と2ヵ所の事業拠点を持っているが、現在、横浜南事業所では重度身体障害者2人を含む11人の障害のある社員が働いている。うち知的障害者は8人。初めて知的障害者を雇用したのが2003年というから、かなり短期間で雇用数を伸ばしてきたことになる。
「私がこの横浜南事業に着任したのが2005年。その頃、知的障害のある社員は3人いたのですが、彼らの仕事ぶりを見て、実際『これはいける』と思いました。作業スピードは多少ゆっくりですが、ひとつひとつ確実にこなしますし、何より熱意があります。ほとんど会社を休まないという真面目な勤務態度にも驚かされました」。
当時は従業員の応募が非常に少なく、採用難が問題となっていた。社員不足に悩まされていた中尾部長には、一途に働く障害者の姿は一筋の光のように見えたのだ。
その後、中尾部長は横浜市立日野中央高等特別支援学校や神奈川県立武山養護学校から積極的に実習生を受け入れることにし、それ以外にも横浜南部就労支援センターを通じて人材を紹介してもらうなど、雇用の枠を増やしてきた。
「2005年の採用以降は一人も辞めていません。仕事にも慣れているし、みんなもうベテランの域。他の障害のない社員同様、会社の重要な戦力ですよ」。
ニチレイフレッシュプロセスでは横浜南事業所で培ってきたノウハウを生かし、今後は川越事業所でも知的障害のある社員を増やしていく構えだ。
3. 個性と能力に合わせた仕事を
横浜南事業所では、障害者だけを集めて特別な作業をさせるのではなく、障害のない社員に混じって一緒に仕事をさせている。重要なのは、適材適所の人材配置。現在、それぞれの能力や個性に合わせ、主に以下の仕事を担当させている。
●各地から入荷した原料用冷凍肉を段ボール箱から取り出す(段ボールの片付けまで)
●原料用冷凍肉を解凍用の棚に並べる
●鶏・豚肉をカットする(手作業、マシン作業)
●カットされた肉をトレイに盛りつける
●味付けされた鶏唐揚げ肉の袋詰め
●出荷用の箱の組み立て
●できあがった製品の箱詰め
●できあがった製品を冷蔵庫に移す
●館内の清掃作業
●作業服、ふきん類のクリーニング
中でもナイフやカッターマシンを使うカット作業は、高いスキルが必要とされる。
冷凍肉を解凍するための専用棚
カットされた肉をトレイに盛りつけ、次工程に流す
特筆すべきは、体力の衰えなどで現在の職場に適応できなくなった人に対して、例えばその時点のレベルで適応できる業務(作業服やふきん類のクリーニングや館内の清掃)に配置換えをしていることだ。
「現在担当している仕事が難しくなったから、はいサヨウナラというわけにはいきませんし、できる仕事は探せば他にもあるはず。クリーニングや清掃は職場の衛生面を担う重要な部署ですし、皆が責任を持って取り組んでいますよ。それに、クリーニングを外注せずに内部でこなすことにより、コストダウンにも貢献してます」と中尾部長。
たとえ「戦力外」となった場合でも、そのときの個々の能力に合った仕事を探し出し、臨機応変に作業内容を変えてやることが大切だ。障害のない人に比べて加齢による能力の低下が顕著といわれる知的障害者を雇用する際には、念頭に置いておかなければならないポイントだろう。
業務用ランドリーが並ぶクリーニング室
4. 実習生を受け入れよう
(1)コミュニケーション能力があるか
現在、横浜南事業所では毎年定期的に日野中央高等特別支援学校や神奈川県立武山養護学校の実習生を受け入れている。1回につき1~2名で、2週間程度。必ずしも採用となるわけではないが、それでも生徒にとっては「働くことが体験できる」貴重な機会となっている。他にも高等部の1・2年生に先輩たちの職場を見てもらう「進路先見学」に、毎年協力している。
何人もの実習生を受け入れてきたなかで、中尾部長が採用のポイントとしているのは「コミュニケーション能力」。といっても、話が得意だとか、自己アピールができるということではない。「要は、人の言うことを理解できるか、指示通りに動くことができるかということ」とズバリ。
「我が社はチームでする作業が多いですから、指示がきちんと理解できるか、分からないことがあったら人に質問することができるか、そういった能力があるかを見ます」。
(2)案ずるより産むが易し
実習生と会社が、お互いに「この会社で働きたい」「この人を採用したい」と決意するには、相性やタイミングもある。だから、実習生にはいくつもの会社を体験するなかで本当に働きたいと思える会社に出会ってほしいし、企業もまず実習生を受け入れてみて知的障害者の実力に触れてほしい…。中尾部長は、いいマッチングこそが障害者雇用の鍵だと信じている。
「『案ずるより産むが易し』。障害者雇用をためらっている会社にアドバイスできることといえば、この言葉に尽きます。彼らは会社の戦力になれる可能性を十分に秘めています。実習生の受け入れを第一歩に、そこから会社の望む人材を探し出し、育ててもらいたいですね」、優秀な障害のある社員を短期間で採用、育成した実績が語る、説得力のあるメッセージだ。
5. 品質の証「Nマーク」を守るため
近年、産地偽装や異物混入など、食品の品質をめぐる事件は社会問題となっている。ニチレイフレッシュプロセスでも、「安心・安全」の品質の証として広く信頼されているニチレイの「Nマーク」を守るため、日々、品質事故防止に努めている。
なかでも一番気を付けなければいけないのは、髪の毛の混入だ。工場に入る人は全員、作業服に帽子、マスクを着衣し、その上から粘着ローラーをかけ、お互いにチェックするよう義務づけられている。工場の入口には、写真入りでその順序が示されていた。
このような、分かりやすく工夫された指示書が、工場の随所に掲示されていたのが印象的だった。「誰にでも分かりやすい」「誰でも使いやすい」というのは、究極のバリアフリーの姿だ。障害者雇用は、誰もが働きやすい職場づくりのひとつのきっかけにもなるのだ。
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