事業所名

株式会社ミロット

所在地

神奈川県横浜市

事業内容

各種化粧品製造

従業員数

170名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	1	事務
内部障害
知的障害	3	化粧品製造、包装、倉庫管理
精神障害

目次

1. 世界の女性の美を支える黒子役
2. 受け入れには不安の声もあったが
3. 自ら新しい仕事にチャレンジする意欲も
4. 一歩ずつ着実に

事業所外観（ミロット本社・工場）

1. 世界の女性の美を支える黒子役

株式会社ミロットは、70年以上の歴史と実績をもつ化粧品メーカーである。とはいっても、一般にはなかなかその名を知られることはない。創業から一貫してOEM生産（Original Equipment Manufacturing＝他社ブランドの製品を製造すること）にこだわってきた、いわば「化粧品業界の黒子」のような会社なのだ。

受託専門メーカーとして手がけるアイテムは、化粧水、クリーム、乳液などの基礎化粧品から、ファンデーション、口紅、アイシャドーなどのメイクアップ化粧品、シャンプー、リンス、トリートメントなどのヘアケア商品、さらには香水やシェービングクリームまで、実に幅広い。

「依頼された製品をただ作るだけでなく、共同研究・共同開発にも取り組むほか、新商品のご提案などもさせていただいています。ここ横浜の本社・工場での生産が難しい場合は、グループ会社（株式会社アリエ）の富士宮工場（静岡県）とも連携を取り合い、対応しています」、そう語るのは、高野勝明工場長。

ミロットに製造を依頼する企業は、国内の大手ブランドをはじめ、アメリカやヨーロッパの有名ブランド、通信販売専門などの中小メーカーも数えると、150社は下らない。

納期厳守の徹底や安定した高い品質はもちろんのこと、新しい技術にも積極的に取り組み、また、さまざまな顧客のニーズに柔軟に応える姿勢が、多くの企業から信頼を寄せられる所以であろう。

オリジナルの自社ブランドを持たないことについて尋ねると、「今のところ考えていません」とキッパリ。有名にならなくても構わない。目立たなくても堅実に、信頼される仕事を続けていきたい…。そんな職人気質の社風が見て取れた。

高野勝明工場長

2. 受け入れには不安の声もあったが

現在、ミロットで働く障害者は4人。うち3人が知的障害者である。

「知的障害のある社員の最初の採用は、2003年のこと。それも、障害者を特定して募集したのではなく、ハローワーク（公共職業安定所）に作業員の求人を出したところ、たまたま障害者の方の応募があったのです」と、総務部の東俊彦部長。

障害者就労支援センターの職員と養護学校の先生に付き添われて現れた彼は、面接と工場見学を終えた後、「ぜひここで働きたい」と訴えたという。

作業現場からは、初めて知的障害者を受け入れることに対して、さまざまな声が上がった。

仕事の指示は理解できるのか？

コミュニケーションはとれるのか？

ベルトコンベアのスピードに作業がついていけるのか？

そもそも1人で通勤させて大丈夫なのか？

「でも、結果的にはすべて杞憂でした」と東部長。

「確かに作業の習得などは、障害のない人に比べて少し時間がかかったようです。しかし何より熱心だし、意欲がありました。それに、彼を採用したことが我が社に『障害者雇用』の意識を芽生えさせるきっかけとなったのです」

障害者のまじめな働きぶりを見た石橋雄三社長は、企業の社会的責任という面も踏まえ、障害者雇用の推進を決定。その後、横浜市立日野中央高等支援学校より2006年に1人、2008年に1人と、新卒の女子社員を採用するに至った。

東俊彦部長

3. 自ら新しい仕事にチャレンジする意欲も

現在、3人の知的障害のある社員は、第一号の男性社員が倉庫の助手、2人の女性社員が工場の作業に従事している。

特に女性2人は、障害者だからと区別せず他の社員と同じ作業現場に配置したのが功を奏したようで、チームリーダーが特別に配慮しなくても、他の社員が自然と面倒を見るようになったとか。女性ばかりの職場のせいか馴染むのに時間もかからず、落ち着いて仕事に臨んでいるようだ。

彼女たちは、知的障害者の特性ともいわれる「根気強さ」を十二分に発揮し、連続作業にも集中して取り組むなど、今や現場の「戦力」といえる存在だという。

コンベア上を流れるクリームのビンにフタを取り付け、次の包装・梱包ラインに送る

包装・梱包ライン

特筆すべきは、最近、1人の障害のある社員が、与えられたコンベアの仕事だけでなく、ビンにクリームを詰める充てん作業を、自ら「やってみたい」と言い出したことだろう。

「コンベアの仕事が一通りできるようになった彼女に対して、チームリーダーがちょっとやらせてみようかと教えたそうなんです。そうしたら興味を持って、『もっと覚えたい！』と意欲を見せて。現在、指導中です」と高野工場長。

「知的障害者だから難しいことは無理」と決めつけるのではなく、どんどん新しい課題にチャレンジさせることは、彼らのやる気とやりがいにつながる。「いろんなことをやってみたい」という小さな声に、耳を傾けることが大切なのだ。

ビンにクリームを充てんする作業を教わる

4. 一歩ずつ着実に

ミロットは2008年に新卒者を採用して以降、障害者の採用ほか実習生の受け入れなどは実施していない。

「会社の方針として、障害を持った方にはいつでも門戸を開いています。残念ながら、ここ数年は支援学校生に適任者がなく、未採用が続いていますが…」と、東部長はやや表情を曇らせる。

今はまず、雇用した3人の知的障害者がやりがいをもって仕事に取り組み、長く働き続けられるよう、より環境を整えることが目下の課題。

「『目標は障害者雇用率○○％！』なんて言えれば格好いいかもしれませんが、そんな大風呂敷は広げられないし、第一、実態にそぐわない。できることから一歩ずつ、地道に障害のある社員を増やしていくだけです」、化粧品業界の黒子に徹するミロットらしい発言だ。