事業所名

越後製菓株式会社宮内工場

所在地

新潟県長岡市

事業内容

米菓製造

従業員数

36名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	5	米菓生地の仕込み、フライ（揚げ物）の味付け・箱詰め、米菓計量後箱詰め等
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者の従事業務、労働条件等
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット
5. まとめ

1. 事業所の概要

（1）事業の特徴・内容

当事業所本社は、昭和21年に茹出しそばの製造販売をはじめ、昭和28年に現在の米菓製造を開始し、現在は餅類・麺類・惣菜類の製造も行っている。当工場は昭和57年に長岡市内の製菓会社より当事業所が譲渡を受け現在地に設立された。米菓製造が中心である。企業全体では資本金2億3400万円、従業員数は800名（うち宮内工場は36名）と県内の米菓産業を支える代表企業の1つである。

本社内には、生産整備推進部を設置し、生産現場と一体となって生産にかかる設備装置の改善・改良を行いながら、省力化・合理化を押し進め、作業効率や品質の向上を目指している。

（2）経営方針

・ 相手の立場で物事を考える

・ 食の大切さ

創業者の「同じ釜の飯を食べる」、つまり同じ食事を摂ることで人と人との繋がりや楽しい雰囲気ができ、職場全体の雰囲気が変わるという考えを実践し、当工場での食堂では自社栽培の野菜を使用し、自社食堂で社員が作った物を毎日、全員が食べている。

工場内食堂

（3）組織構成

本社：長岡市

新潟県内9工場1営業所

新潟県外2工場12営業所2駐在所

（4）障害者雇用の理念

「特別扱いをしない」

得手不得手はあるが、適材適所に配置できるよう、入社時にゆっくりと自信を持たせ、1人の社員になれるよう育てていくことを目標としている。この取り組みが、現在の職場定着に繋がっている。

（5）障害者雇用の経緯

平成11年頃、他の工場からの依頼があり知的障害者1名を受け入れた。当初は一緒に働く人達の配慮が見受けられず、工場全体の雰囲気もとげとげしいものであった。気配り・目配りができない雰囲気の中での仕事の成果は知れたものであり、

①工場全体のチームワークを良くする事

②人に対して教え上手になってもらいたい（個々の復習にも繋がる）

を目標に、近隣の特別支援学校や縁故からの雇用を進めるようになった。

平成22年2月現在、重度知的障害者4名、重度以外の知的障害者1名の計5名が在職しており、勤続年数も7～12年と定着率も非常に高い。

2. 障害者の従事業務、労働条件等

（1）従事業務

①フライ（揚げ物）の味付け・箱詰め

フライされ、流れてきた物を壊れていないか確認しながら選別し、味付けする。

②海苔巻き作業

海苔付き米菓となる商品に一個一個海苔を巻く。

③米菓を計量し箱へ仮詰め作業

完成したものを計量し、箱へ仮詰めする。

④米菓包装作業

仮詰めされた米菓を本包装し、箱詰めをする。

慣れるまでは、連続した指示をださず、見守ることを大切にし、作業を徐々に慣らし、一つずつを理解させながら体で覚えられるように指導している。

フライされた米菓の選別作業

銅鑼を回しながらの味付け作業

海苔巻き作業

仮箱詰め

米菓包装室

（2）労働条件・福利厚生等

現在勤務している5名とも1年更新契約の正規社員である。給与については、日給制と時給制があるが、最低賃金の適用除外は考えず、個々にあわせた給与形態をとっている。年2回の昇給と賞与がある。

会社の行事としては、企業全体で行われる新年会や忘年会、運動会のほかに、工場別での花見会や納涼会、社内旅行などがある。

3. 取り組みの内容

（1）取り組みの具体的内容

採用当初については、勤務時間を9：00～15：00や午前中のみといった形で、本人に合わせた勤務形態をとらせている。業務の内容についても全てを「こうでなければいけない」といった決まりを作らず、見守ることを第一に取り組んでいる。

周囲の従業員には甘やかすことは程々に、「繰り返し教えること」「ほめること」を勧め、注意するべき点については、工場長が直接本人へ注意する等、職場内での輪を大切にしている。ゆっくりゆっくり自信を持たせていくことを心掛け、付録ではなく1人の従業員として育てている。「頭で覚えたことは忘れてしまうが、体で覚えたことは忘れない」という工場長の言葉が印象的であった。

その結果、勤務時間や業務内での得手不得手をそれぞれが克服し、自然と8：00～17：00や8：30～17：00といった通常勤務ができるようになり、適材適所で自信を持って休まずに、精勤している。

通勤に関しては、採用当初から朝は社員が会社の車で全員を迎えに行き、帰りは公共交通機関等を利用し、帰宅している。また、本人の自立へ繋がるよう、両親との同居であっても会社を休む場合には、必ず本人から連絡をさせる等、会社の一員であるという自覚と自分の業務への責任を持たせるようにしている。

（2）活用した助成金等

平成12年より重度知的障害者に対し、障害者介助等助成金の業務遂行援助者の配置助成金を利用した。「障害があるから」という理由での特別扱いはしていないため、基本的には助成金や様々な制度に頼らず、平成20年に障害者職場定着推進チームを設置し、職場全体の協力の中で一人前の社会人に育て上げるべく努力をしている。

4. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

（1）取り組みの効果

社員同士の工場内での言葉遣いがとても丁寧になり、自分だけでなく周りに対し気配りができる親切な職場に成長した。結果として事故やケガ等が非常に少なくなり、安全面での改善がみられるようになった。

障害のある社員に対しても、その障害に合わせた器具や機械を社員同士で考え、作ったりしながら、どうしたらその業務がスムーズにできるようになるか工夫するようになった。

どんな業務でもできるという自信が、障害のある社員達が長く働く原動力となり、定着率を上げていると思われる。

（2）障害者雇用のメリット

障害のある社員から学ぶ事は沢山あり、障害者を基準にした作業内容、作業手順にすることによってクレームや工場内でのケガ等を少なくすることができた。

障害のある人を雇用することによって、彼らが職場の潤滑油となってくれ、それぞれがバランス良く違和感なく働いている。

また複数の障害者を雇用することは、障害者同士で良い意味での先輩後輩関係が構築され、個々の自信から「自分の言葉で伝える」という自己表現も可能となり、大きな成長を見ることができた。

5. まとめ

工場で働く5名の障害のある社員達は、毎日イキイキとした表情で出社し、抜群の集中力で担当業務をこなしている。業務上の注意点が全て工場長から本人へ伝えられていることから、工場長が目の前に来ると彼らの顔の表情が引き締まっていた。

工場内での役割分担をはっきりし、「教えること・褒めること」は一緒に働く者で共有し、そして注意はあくまでも工場長が個人的にという、「輪（和）」と「人と人との繋がり」を大切にした創業者の考えがしっかりと受け継がれている。

お昼の12時、工場食堂で山盛りにご飯を盛り、手作りの惣菜をたっぷりとお皿に盛って、満面の笑顔で食事をとる彼らの姿が印象的だった。

執筆者：社団法人新潟県雇用開発協会  障害者雇用アドバイザー  木  江麻