事業所名

大同プレーンベアリング株式会社

所在地

岐阜県関市

事業内容

輸送用機械器具製造業

従業員数

388名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	1	機械オペレーター
内部障害
知的障害	3	製造・検査補助業務
精神障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取り組み内容
3. 取り組みの効果
4. 今後の展望と課題
5. 最後に

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）概要

大同メタル工業株式会社の100％子会社であり、自動車用エンジンベアリング製造のマザー工場として、生産に特化した世界トップクラスの規模である。

2009年12月現在、従業員数  388人（うち常用328名）、うち障害者数  4名（うち重度2名）で障害者雇用率は1．92％である。

（2）目立つ障害者雇用率不足

当社は2006年より従業員を増員しており、2007年の障害者雇用状況報告書から障害者の雇用不足が目立ち始めた。

そして、2008年に試算した内容では、2009年に3カウント分が不足する見込みとなり、さらに同年より障害者雇用納付金の対象となることから、法定雇用率のクリアが当面の課題となった。

（3）実習による採用計画

当社では工場東側の別棟で通い箱の洗浄作業を行っている。

騒音も少なく、少人数で作業を行っていることから、落ち着いて作業ができる環境となっており、そこが最も適切な職場と考えられた。

業務内容は繰り返し作業が多いため、真面目にこつこつと作業をすることに適性のある、知的障害者を対象とし、実習を行い、本人の性格と業務内容が合うかどうか見極めてから採用することとした。

2. 取り組み内容

（1）実習と委託訓練の実施

実習は地域の特別支援学校（以下「支援学校」）の先生と、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」）の職員に働きかけた。

まず、支援学校の先生と支援センターの職員に現地を案内、実習場所の業務内容を説明。両者より業務内容に合いそうな人材を紹介してもらい、実習生として受け入れた。実習の内容は、雇用に向けた実習という位置付けのため、基本的に雇用したときと同じ条件で行い、食事は社員食堂を利用した。

また、実習を通して、支援センターの職員から委託訓練の利用を提案された。未知の制度だったが、制度の説明に始まり、ハローワーク（公共職業安定所）や岐阜県職業能力開発校との取りまとめについても任せることができたため、利用手続きを安心して行うことができた。

（2）現場監督者による指導

実習生の面倒を見る現場監督者が不安を抱かないよう、実習生の障害特性や性格についてできるだけ支援学校の先生や支援センターの職員から説明を受け、実習前に現場監督者にその内容を説明し、実習中は具体的な作業内容の教え方等のアドバイスを行った。

その過程で、現場監督者が障害者雇用について深く理解できたため、誠意を持って実習生に接するようになり、毎日の実習で様々な工夫をした。

例えば、日々の作業の中で、実習生がある状況を判断する場合、判断に悩むことも予想されるが、その場合の解決方法として、悩んだ時はどうするかということまで教えていた。

そのためには監督者が作業内容を十分に分析する必要があったが、その労力を惜しまずに指導したため、実習生は日々成長し、実習は効果的なものとなった。

監督者の指導風景。
曖昧な指導はせず、具体的な指導を行う

3. 取り組みの効果

（1）2名の採用

◎支援学校の生徒1名を採用

実習をした支援学校の生徒1名、Aさんが当社での就職を希望してくれたので、1名を採用するに至った。

採用後は一般の従業員と同様の教育も行うため、トライアル雇用も併用し、定着に力を注いだ。

Aさんは知的障害で療育手帳はB1、障害者職業センターの重度知的障害者判定では重度。作業速度や正確性も問題なく、1日しっかり集中して仕事をしている。

◎支援センターの利用者1名を採用

支援センターと連携し、3ヶ月の期間で始めた委託訓練は、長期に渡って指導することが可能であったため、着実に業務内容を覚えてもらうことができた。

雇用へのハードルを取り除くことも容易となり、支援センターの利用者Bさんも当社への就職を希望してくれたため、採用に結びついた。

Bさんは知的障害で療育手帳B1、障害者職業センターの重度知的障害者判定では重度。急な残業にも対応してくれ、頼りにされている。

上記2名について、勤務時間は一般従業員と同様であり、特別な扱いはしていない。当然、最低賃金も確保しており、同じ会社で働く仲間の一人として接している。

（2）法定雇用率の達成

上記の2名が障害者職業センターの重度知的障害者判定を受けていたため、4名分としてカウントできたことから、当初の目標である法定雇用率を達成することとなった。

4. 今後の展望と課題

（1）関係機関との連携による定着支援

雇用するだけでなく、その後の定着を重視し、支援センターのサポートを十分に活用している。

支援センターは利用者である障害者について、特性や性格を理解し、信頼関係も築いていることから、雇用した障害者への日常の対応について様々なアドバイスを受けることができる。

また、月1回の職場訪問を受け、家庭での様子や職場での問題等についてアドバイスを受けている。そのためか、現在まで無断欠勤や私生活上の問題はない。

これらの職務面や生活面のサポートを考えると、定着を図るためには、支援センターの協力は必要不可欠であると思われる。

他にも、雇用支援協会の障害者雇用アドバイザーの訪問を不定期に受け、法改正や助成金についての助言を受けている。今回の事例についても、きっかけは障害者雇用アドバイザーの訪問指導から始まっており、不定期ではあるが重要な情報源となっている。

（2）将来の採用計画に向けた会社見学会

関係機関に加えて、家族の理解と協力がなければ障害者の定着雇用は困難であるため、支援学校の協力を受け、同校から当社に関心のある生徒と保護者を対象に会社見学会を行った。

当社の社長自ら、障害者雇用を企業の社会的責任として捉え、これからも当社に合った意欲がある人材を随時雇用していく方針であることを説明し、たいへん好評であった。

その後、見学会の出席者が、支援学校教育の一環として行っている就業体験実習の受け入れ先として当社を希望し、就業体験としての実習を行うことにもなった。

このように、将来の雇用のみならず地域への貢献といった観点からも、支援学校との協力は重要なものとなっている。

今後も、関係機関と連携し、一企業として積極的に社会的責任、地域への貢献を果たしたいと当社では考えている。

5. 最後に

これらの内容は、雇用支援協会のセミナーや特別支援学校の学校見学会を経て、ハローワーク、雇用支援協会、支援センター、支援学校から指導・助言を受けながら行っており、関係機関の助力を最大限に活用したものである。

これら関係機関は、誠意を持って協力してくれるため、これから障害者雇用を推進される企業の人事関係者には、気軽に相談されることをお勧めしたい。