事業所名

天狗缶詰株式会社三河工場

所在地

愛知県豊川市

事業内容

業務用・給食用缶詰、レトルト食品の製造、輸入、販売

従業員数

253名（三河工場および白鳥工場）

うち障害者数

6名（三河工場および白鳥工場）

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害	1	食品材料加工ライングループリーダー
知的障害	5	うずら卵の選別、缶詰の梱包出荷作業
精神障害

目次

1. 事業所の概要～地元産品の加工
2. 障害者雇用の経緯～地元養護学校との連携
3. 従事する業務
4. 障害者雇用の効果等

事業所外観（三河工場）

1. 事業所の概要～地元産品の加工

当社は1923年（大正12年）、名古屋市に缶詰を製造する工場として創設した。第二次世界大戦時、およびその後の混乱期には食材供給の不足、伊勢湾台風（1959年）による工場被害など、多くの苦難を乗り越え、1961年に豊川市に工場を新設してからは、生産・流通部門の拠点を名古屋市から豊川市に移し、現在に至っている。

特に、1999年豊川市に新設した三河工場はHACCP方式を導入し、原材料の受け入れから出荷に至るまでのすべての製造工程で必要な検査を行い、食品の危害発生を未然に防ぐ方法をとっている。取扱商品は、うずら卵、小倉あずき、ぎんなん、みかん、寒天などの業務用缶詰を中心に製造をしている。特に全国的にヒットしているおでん缶は当社の商品である。これらの商品は、三河工場隣接の配送センターから全国の飲食店や家庭に届けている。うずら卵は愛知県が全国シェアの約70％を占め、さらに隣接する豊橋地域は、県全体の約80％を占めて全国一の産地を形成している。当社ではこの地域の特産品を主力取扱商品として長きにわたって製造している。

2. 障害者雇用の経緯～地元養護学校との連携

当社では新卒者を中心に障害のある人を雇用している。

特に、地元の愛知県立豊川養護学校とは、高等部生徒の現場実習の受け入れも行いながら密接な関係を築いている。進路指導担当教諭からの紹介に始まり、学校カリキュラムの一環として実施される年2回（各10日間計20日間）の現場実習により、高等部生徒を積極的に受け入れている。これは、当社の業務を実践的に体験することで、その生徒の職業適性を図ると共に、卒業後の進路に直結する機会でもあり、極めて重要なカリキュラムである。当社としても、障害の特性を現場の社員が知る機会ともなり、その後の職場適応にも効果的な機会となる。引き続き現場実習は積極的に受け入れていきたいと考えている。

現在、当社に勤務するBさんは昨年の4月地元養護学校から採用された知的障害のある男性である。高等部2年の時より春と秋の現場実習に加え、長期休暇中にも実習を行い、早い段階から現場の作業内容を知ってもらえる機会を持つことができた。また、現場の担当者らも実際に業務に従事する様子を知ることができたので、スムーズに採用することができた。マニュアルの理解が困難な人たちにとっては、現場での業務をこなすことで、業務そのものを理解することは、その後の職場定着にたいへん有効であることが確認できた。

以下に、現場実習および長期休暇中の実習における学校と当事業所の支援の流れを示しておく。

ここでの重要なポイントは、実習終了後のケース会議である。この段階で明らかになった課題は次回の実習開始時までに解決しておくことが、本人、家族、学校にて確認される。つまり、次回実習時までの目標ができ、それが学校における指導のポイントになる。この課題を解消できるかどうかが、その後の採用に大きく影響する。

3. 従事する業務

Aさんは、地元中学校を卒業し入社して19年が経過した。当初は、豊川市内中心地にあった工場まで自転車で通う毎日であった。しかし、1999年に新工場が現在の位置に移転してからの通勤方法は大きく変わった。新工場は中心地から車で30分。特に公共交通機関もないため、このままでは、通勤に大きな支障をきたしてしまう。そこで、旧工場近くから新工場まで通勤バスを運行することとした。これは、Aさんに限らず熟練した社員の通勤を援助することにもつながり、これらの社員も就労継続が可能となった。結果として生産性の維持に大きく貢献している。

これによりAさんの暮らしのリズムは多少早起きをしなければならなくなったが、引き続き安定した就労を維持することができている。

Aさんの業務は、皮むきの終わったうずら卵を、目視により不良品をピックアップするものである。次から次へと流れ出てくるうずら卵を選別するのは至難の業だ。それを手際よくこなしている姿を見るに、これまで19年にわたる経験のたまものであることを感じる。

うずら卵の区別は、写真により形状を示すことで従事するものが確認できるよう工夫している。これもHACCPの一環であり、それが障害のある人も雇用しやすい結果をもたらしている。さらに、この形状確認は、そのときの生産状態を表すものとなり、不良品が多い場合は生産者に一定のペナルティが課せられ、反面、不良品が少ない場合は報奨金が支払われるという。Aさんの仕事の結果がそのまま生産者との信頼関係にも大きく影響するものだけに、安易な判断はできない重要な業務であることがわかるであろう。

うずら卵の選別作業

卵の形状チェック表

Bさんは、梱包、出荷作業に従事している。梱包機によりPPテープをかけることについてはひとりで行うことができる。これ以外に段ボールの組み立て、商品の運搬なども自らこなしている。1年目でありながら、前述のように実習を繰り返したことが、業務をスムーズにこなすことにつながり、加えて、課題の把握や課題の解決につながり、職場不適応につながるような問題は発生していない。

梱包作業

4. 障害者雇用の効果等

障害のある人を雇用することには、現場に負担をもたらすのではないかとの不安感があると聞く。ところが、当社ではそれとは裏腹に、現場での一体感が増すという効果がみてとれる。あいさつの励行、作業工程での問題点の発見、残業や休日出勤のときのシフト上の配慮など、これまで以上に障害のある人を中心に無理のない作業ができるようにとのおもいやりが現場担当者らの間で広まっている。このことにより、障害のある人の定着率が高くなり、長期雇用につながっている。

地元産品のうずら卵を中心に缶詰の製造を行い、HACCPの実践の中から障害のある人も雇用しやすい環境を引きだすことができた。特に障害のある人の特性を理解することができる実習の活用を積極的に取り入れ、それを生かすことが長期の雇用継続につながるということを実践をもって理解することができた。当社としては、引き続き新規の採用、長期間にわたる安定雇用を目標として障害者雇用を行っていきたい。