2009年度作成

事業所名

白金鍍金工業株式会社

所在地

愛知県名古屋市

事業内容

プラスチック製品、金属製品のめっき加工

従業員数

132名

うち障害者数

26名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	26	製品の運搬、治具がけ・はずし、箱詰め、片付け等
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組み内容
4. 今後の展望

1. 事業所の概要

めっきは日用雑貨からロケットなどの先端科学まで、人間の営みに欠かせない加工技術となっており、めっきは「古くて新しい技術」と言われる中、数千年の歴史を持ちながら今もなお進化し続けている。

白金鍍金工業株式会社は名古屋市に2つの工場をかまえ、昭和24年の創業以来、60年以上にわたり、めっき一筋に邁進してきている企業である。そして「優れた技術は、優れた人によって育まれる」をモットーに、常に社員の能力開発に力を入れ、環境有害物質やアレルギー物質を使用しないめっき製品の開発、実用化に向け、大学や公的機関との産学官連携による幅広い視野からのめっき技術開発に積極的に取り組んでいる。

※  社会全体で障害者雇用の理解と協力が進み、就労がこれまで困難であった障害者も様々な職に就き活躍する姿が見られるようになってきた。しかし、まだ就職を希望している多くの障害者がいるにもかかわらず、職場の確保が難しい現実もある。これは障害者の受け入れへの不安や、適した仕事を見つけ出す難しさがあることにも一因がある。一人一人が持っている力や適性を見出し、作業内容や作業環境を改善することにより、障害者が生き生きと活躍している事例は多くあり、これは事業所や社会にとってきわめて有意義な結果をもたらしている。今回は、長い年月の中で障害者の適性や環境整備を行い、障害者雇用に長く取り組んでいる事例を紹介する。

2. 障害者雇用の経緯

創業者である笹野富次郎氏の時代に精神障害者と刑余者を雇用し、30数年前より知的障害者の雇用も行うようになった。その後も障害者雇用が増え、現在に至っている。昔は障害者を世の中にあまり出したくないと思う保護者が多かったが、ここ何十年の中で、少しずつ世の中に出て働くようになり、世間も知的障害者のことも少しずつ理解するようになった。そのような時代の流れの中で、作業の担い手として認識するようになり、徐々に雇用を広げてきた経緯がある。

とくに「知的障害者は一つの仕事に対して「根気」があり、会社としては社会貢献というよりも障害者にあった仕事を見つけただけである」と笹野常務は言われる。しかし、長い雇用経験の中、様々な取り組みが雇用を進めていく上で自然に行われてきている。とくに笹野常務の「そんなに特別なことをしているつもりはない」と言われたことがとても印象的であった。

3. 取り組み内容

白金鍍金工業株式会社では、多くの 障害者が働いている。作業内容はプラスチック部品の表面処理をするため、治具（ハンガー）にたくさんの部品を引っ掛ける「かけ」という作業、表面処理された部品をハンガーから一つずつはずす「はずし」という作業がある。部品の素材によってラインが異なり、様々な場所で障害者が働いている。会社では一つの工程を熟練してもらい、それをふまえてライン構成すれば「人一人」として十分働いてもらえるという経験により、障害者の適性の見極め、適材適所に力を入れている。また、笹野常務は特別なことはしていないと言っていたが、工場内では様々な工夫がなされていた。それを紹介していきたい。

(1) 障害者の個性に合わせた仕事の方法

① 障害者の適性を見た作業工程

障害者の個性を、実習や作業を繰り返すことにより、会社のどの作業工程がどの程度できるのかを判断している。それにより、本人が過度な負担の中で働くことはなく、自然に徐々にスキルアップが図れるようになっている。また、作業工程を細分化することにより、一つの仕事をする上でいくつかの工程を受け持つ状況を回避している。

写真はAさんの作業風景である。Aさんにとって作業工程が分かりやすく、とても集中して取り組んでいる。また、入社時よりも作業スピードが上がり、現在ではこのグループの中では一番速く「かけ」「はずし」の作業ができている。本人の負けず嫌いな性格も功を奏しており、Aさんのことを笹野常務はとても嬉しそうに話しているのが印象的であった。

② 職場のグルーピング

職場の中で適材適所を進めていく上で、重要になってくるのが一緒に働く人達である。職場のグルーピングにも配慮されており、とくにそのグループのリーダーになる人とのコミュニケーションを大切にしている。

写真はBさんの作業風景である。Bさんは作業グループの人達とも一緒に作業をしながら、質問したり、質問に答えたりしながら作業を進めていた。それらの人達に「よくがんばっていますよ」と言われ、本人も嬉しそうに働いていた。

(2) 工場内での職場環境整備

① 決められた場所での作業

工場内は広く、その中で障害者は自分の作業工程の決まったエリアで働いている。広い場所での作業であるが、一人の障害者が働いている場所は変更しないようにしている。場所の移動があまりないので、必然的に混乱が少ないように思われる。会社では適材適所、決められた工程をその障害者にまかせることにより、大きく職場環境が変わることのない状況を作り、作業が持続できるように工夫している。

② 整理整頓された職場環境

障害者にとって雑然とした職場環境というのはとても苦手なものである。職場環境が整理整頓され、部品や道具等の場所が決まっていることにより、例えば、「軍手はここ」「治具（ハンガー）はここ」というように仕事の中で非常に分かりやすくなり、作業効率を上げる効果が期待できるのである。

(3) 社員一人一人の意識（障害のある社員への対応）

① ノウハウの蓄積

白金鍍金工業株式会社は障害者を長期にわたって雇用してきた実績がある。その経験の中で、精神障害者から始まり知的障害者まで、様々な支援のノウハウがある。障害者雇用の実践の中から生まれる蓄積というのは非常に大きなものであり、笹野常務は「特に特別なことをしているつもりはない」と言う。非常に大切にしなければならないことが自然に行われている。

② 新入社員への面接場面で

障害のある社員を「人一人として」とらえていると感じられるのが、障害のない人を採用する際の面接でも分かる。面接において、障害のある社員と一緒に働けるかを確認し、一緒に働けない場合は採用しないと決めているそうである。これも、障害のある社員を大切にしているからこそであると思われる。

4. 今後の展望

障害者を長期にわたり雇用する白金鍍金工業株式会社にとって、障害者雇用は社会貢献のためのものではなく、障害者自身が働くために雇用され、会社にとっても必要な社員を得られるということで、両者にとっての好事例であると言える。今後の展望についても、引き続き「障害者に仕事をしてもらうために」をモットーに、障害者雇用に力を入れていきたいとのことであった。自然な形での障害者雇用を進め、実際に雇用のみではなく、企業内就労の場も提供し、より発展的に今後の事を考えている。今後の障害者雇用のモデルケースとして大きく発展することを願ってやまない。

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