事業所名

医療法人神明会  介護老人保健施設ラ・アケソニア

所在地

大阪府箕面市

事業内容

通所リハビリテーション（デイケア）、訪問リハビリテーション、介護老人保健施設（グループホーム等併設）

従業員数

110名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	4	クリーンスタッフ・介護補助
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. ワークシェアリングに取り組んだ動機～Aさんの雇用を守るために～
3. ワークシェアリングの具体的な取り組み
4. ワークシェアリングの取り組み効果

事業所外観

1. 事業所の概要

通所リハビリテーション（デイケア）、訪問リハビリテーション、グループホーム等を併設している3階建ての4,300平方メートルを超える比較的大規模な介護老人保健施設である。箕面の山のふもとにある住宅地の中にあり、赤茶色の瓦屋根が特徴的なスパニッシュ様式のリゾートホテルを思わせるような施設である。

障害者雇用の取り組みは2005年に開設した当初より、入居スペースにある約20の個室トイレの清掃業務を中心に障害者雇用に取り組んでいる。地域の就労支援機関の支援を受けて、現在では3名の障害者がトイレの清掃業務以外の仕事にも広がり勤務している。

2. ワークシェアリングに取り組んだ動機～Aさんの雇用を守るために～

最初に雇用したAさんは、30代のてんかんを伴う知的障害者。一人暮らしをしているAさんにとっては、少しでも長い時間の就労をすることで、生活面を安定させていきたいとの強い思いがあった。確かに当初は順調で長期間の就労も見込まれていたが、体調不良による欠勤が徐々に目立つようになってきた。原因はてんかん発作によるもので、生活リズムの乱れが発作を誘発しているようだった。支援機関からの助言を受け、体調を考慮して勤務日数や時間を減らす措置をした。しかし、回復の兆しは見えないまま、時間ばかりが流れていった。Aさんの雇用によってスタッフの従事体制が見直されたことで、Aさんが本来担当すべき清掃場所であるトイレの清潔さを保つことに課題が出てきた。

この段階でAさんには離職してもらい、新たな障害者の雇用に取り組むことも選択肢ではあったが、関係者全員で検討した結果、Aさんに職場復帰の道を残すことを選択したのである。それが、後で述べるワークシェアリングの取り組みのきっかけである。

3. ワークシェアリングの具体的な取り組み

具体的にはAさんの職場復帰の可能性を残すために、業務の中心となるトイレ清掃を週4日勤務の人と週3日勤務の人の2名でシェアする体制にした。Aさんの体調が回復して職場復帰ができるようになっても、体調に無理のない範囲で週3日の勤務にとどめておけるようにすることをねらいにしていた。

新たな人材として支援機関から紹介されたBさんは、50代の知的障害者であった。これまで、フルタイムでの就労経験は有るのだが、加齢による体力低下が否めず、無理なく働き続けられる短時間での就労を前提に、就労先を探していたところだった。Bさん自身も十分に納得した上での短時間就労だった。

AさんとBさんの障害者2名体制がうまく機能することを期待していたのだが、Aさんの体調は思うように回復へと進まなかった。支援機関を通じて慎重に状況を確認すると、職場復帰を目指すことが却ってプレッシャーとなっていたことがわかった。やむをえず、Aさんは退職し療養に専念することとなった。

Aさんのために考えていたワークシェアリングではあったが、Aさんの離職後に新たに40代のCさんが従事することになった。Cさんも体調には不安があったので、負担の少ない短時間での勤務を希望していた。「Cさんが体調を崩して休みが続いても、Bさんが週4日は清掃業務を従事するのでトイレの清潔さが維持できるから大丈夫」という考えのもと、Cさんの雇用の機会も提供することにつながった。

4. ワークシェアリングの取り組み効果

従事する日をシェアすることにより、「1人でやらなければいけない」「休んだら迷惑をかけてしまう」というプレッシャーからBさんもCさんも解放され、体調がよくない時は無理をしないで休む選択ができるようになった。体調の悪い時に遠慮せずに休めるということが、体調を崩してしまうことを防ぎ、結果、継続勤務の大きな要因になったことはまちがいない。

事業所にとってもBさんCさんのどちらが休んでも、トイレの清潔さが維持できることにつながっていることは、これまでで述べてきたとおりである。

Cさんのトイレ掃除の様子

Bさんのトイレ掃除の様子

もともとのAさん一人分の仕事をシェアすることにより、一人ひとりの業務量としては、無理なく働ける範囲におさめた。それが、フルタイムでの就労に体力面等から不安があるBさんやCさんにとっての就労を実現できる機会となった。

高齢や精神的なことが理由からフルタイムでの勤務は困難だが働きたいというニーズのある障害者は少なくない。そういった人たちの就労を実現しやすくするため、今回取り上げたワークシェアリングの考え方は、モデル的なものに十分なりうると考える。