事業所名

株式会社TKX

所在地

大阪府大阪市

事業内容

砥石事業、ソーラー事業、研磨・研削・切削技術・熱処理技術及び洗浄技術を応用した研究開発

従業員数

457名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	3名	経理、情報システム、事務
内部障害
知的障害	2名	事務
精神障害

この事例の対象となる障害

肢体不自由
その他（特発性捻転ジストニア）

目次

1. 事業所の概要およびポリシー
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組みの内容
4. 今後の課題等

事業所外観

1. 事業所の概要およびポリシー

TKXの社名には、

T＝Technology(テクノロジー)：高い技術力

K＝Knowledge(ナレッジ)：豊富な経験・知識

X＝無限の可能性への挑戦

技術と知識で何にでも挑戦し、常にナンバーワンであり続けるという意味がある。現状に満足することなく、常にナンバーワンを目指すことにより、企業は発展していくものという考えを表している。

TKXは1922年、研磨材の製造販売業として創業した歴史ある会社である。工業用砥石メーカーとして確固たる地位を築く一方で、1997年には砥石事業で長年培ってきた研削研磨技術を活かして新規事業であるソーラー事業へ進出し、次世代の新エネルギーとして期待されている太陽光発電システムの重要部品であるシリコンウェハーの加工を行っている。シリコンを、歩留まりよく薄くカットする技術は、国内外から高く評価されており、世界屈指の加工枚数を誇っている。また、顧客は国内の大手太陽光発電システムメーカーだけでなく、ヨーロッパ、アメリカ、アジアへと全世界に広がっている。

地球温暖化など地球環境問題が深刻化している中、環境負荷が少なく無尽蔵の太陽光エネルギーは注目されており、今後ますます実用化・普及促進が図られてくることが予想される。それに伴い、当社のソーラー事業も拡大の一途を辿っており、世界に向けて大きく飛躍を遂げようとしている。今後もさらに、日々の技術革新を続けるとともに、社員一人一人が地域との融和を図り、地球環境の改善に貢献することで、企業の社会的責任を果たしていきたいと考えている。

2. 障害者雇用の経緯

会社規模が急拡大すると同時に、企業の社会的責任を果たすべく障害者雇用に取り組んできた。実績としては、本社の経理部門、工場の総務部門における採用がある。本社については、設備面に課題を有し、障害のある人の物理的な面でのマッチングが難しい状況にあった。

人事担当者が、障害者雇用に関するセミナーに参加した際、職業訓練施設である大阪市職業リハビリテーションセンター（以下、「センター」という。）を知った。センターの見学を申込み、職業訓練風景を見る機会を得ることにより、障害のある人の職務としてどのような業務が期待できるのか、という具体的なイメージが沸いたという。

センターの求職者から複数名の面接を行った中、Aさんは、センターにおいて2年の間、ITの基礎技術として、プログラミング作成、データベース作成技術、Webサイトの構築、ネットワークの構築技術を学び、情報処理技術者としての素養を習得していたことが評価につながり、採用に至った。会社とセンターの関わりは、業務への対応力のある面接対象者の選定や就職後の状況把握等に限定されるが、企業側としては、面接前段階での選定及び入社後のフォロー機関があることに対する安心感は大きい。

3. 取り組みの内容

Aさんは、神経難病である特発性捻転ジストニアによる右上肢機能の障害があり、障害等級は2級である。障害の進行により明瞭な発語が困難となり、自分からコミュニケーションをとる場合は、筆談を主な手段として用いる。

Aさんは、これまで業務経験がなく会社組織で働くという経験が初めてであるが、ITに強い。Aさんを業務面でバックアップしてくれる上司の存在は、非常に心強い。会議など普段接することの少ない話し手との会話や緊急を要する場合は、上司が代弁することでカバーしている。コンピュータ用語で、コンピュータシステムに関わる高い問題解決能力を有する人を「ウィザード（WIZARD）」と呼ぶが、本人にとっては、現在の上司の存在はまさに「ウィザード」である。身近にメンター（良き指導者）が存在することにより、業務に楽しんで取り組むことができている。

また、実質、筆談なしには、発語が不明瞭であるAさんの言葉を確認する作業は困難であるが、IT用語を基盤としたコミュニケーションが多く、上司と本人のIT知識の共通理解の上に会話が成り立っているため、それほど手間取ることはないという。補助手段として、メール、筆談やホワイトボードを利用することもあるが、不自由さはそれほど感じられていない様子であった。

体調管理や治療による通院日が必要なため、決まった曜日に休暇を取ることがある以外は、「障害を持っているから」という意味での業務上の特別扱いはしていない、という上司の話であった。Aさんにとっても、その方が逆に気遣いが少なくなるのではないかという配慮である。

Aさんの職務は、現在、主として、長浜工場のWebサイトの構築で、PHPを用いたWebプログラミングを担当している。その他、本社におけるネットワークエンジニアリング（サーバー管理、保守、クライアント保守の手伝い）、情報セキュリティ関連や事務的な雑務をこなしている。また、本人は、学生時代より司法試験を目指し、法律関連にも明るいことから、法制が関連する文書の作成などを担当することもある。

上司に本人の今後の育成面について伺うと、「1年目なので、未熟な部分はフォローしているが、ITは数をこなす必要がある。自分で考え、壁を乗り越え、調べてやっていけるということが必要である。その点では、Aさんは、ある程度本人にまかせ、必要なタイミングで確認して、アドバイスをしていくことで、業務を遂行することができている。将来的には、IT戦略やITシステム企画ができる人材となって欲しい。」また、社内にはシステム化していくことで業務効率が向上する案件がたくさん点在しており、アウトソーシングではなく、社内の人材で開発を検討しているようだ。今後、Aさんもその担い手になっていくこととなり、活躍の場はますます拡がることとなるであろう。

Aさんにとって、ITの業務は、本人にとってやりがいのある業務で、「現在までに培った全ての経験や知識を使うことができるので楽しいし、新たな刺激もある。ソーラー等環境技術の会社であるため、地球に貢献しているという意識も持つことができる。職場の人間関係もよく働きやすい。サーバー管理等は業務に与える影響も大きく責任感も必要とされる。」とのことである。

業務の様子

4. 今後の課題等

人事担当者からは、「設備的な面の改善や更なる受入環境の改善が必要である。障害を持った方が当たり前に働けるような環境を作っていくことは、継続した課題である。障害の有無ではなく、仕事面でのマッチングが重要である。全社員にも意識の持ち方を変えてもらわないといけない」という話があった。

Aさんを受け入れたことにより、Aさんの今後の業務面での活躍が、社員の一人一人の意識改革の礎となり、大きなうねりとなることを期待したい。

非常に楽しい雰囲気でお話を伺うことができた。上司との強力なタッグで業務を進められているAさん。仕事を任されて、楽しみながら、やりがいを感じながら業務を遂行している様子を伺うことができた。入社前には、コミュニケーションの困難さを心配していたが、そのような不安は、本人が培った“時代のニーズにマッチした業務スキル”が解決してくれている。本人の強みを作ること、また強みを生かして業務を推進していくことは、本人の努力の結果でもあるが、それを活かし、受け入れる周囲の環境や柔軟性の高い社風も、本人が活躍できる場を拡げる要因として、大きく影響していると考える。