事業所名

株式会社関門海（セントラルキッチン）

所在地

大阪府松原市

事業内容

とらふぐ料理専門店「玄品ふぐ」を関西、関東を中心に135店舗展開

従業員数

212名

うち障害者数

1名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	1	とらふぐ加工補助、調理済み食材の箱詰め、洗浄など補助作業
精神障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 障害者雇用等における取り組みについて
3. 関係機関との連携
4. まとめ

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

弊社では、とらふぐ料理専門店「玄品ふぐ」を全国135店舗で展開している。またグループ会社として、食材宅配サービスを事業としている株式会社トドクック、とらふぐ養殖および水産加工品の製造販売を事業としている株式会社富士水産、そして全国12店舗の回転寿司店を事業としている株式会社だいもん、と食品加工業と外食産業へ積極的に事業展開している。

知的障害のあるMさんの雇用は、ハローワーク（公共職業安定所）での求人票を通じて大阪市内にある障害者職業能力開発施設（以後、能力開発施設という）の紹介であった。知的障害のある人の雇用ははじめてであったが、その能力開発施設の担当指導員からMさんに関する事柄について説明があり「とにかく働くことへの思いは強い。しかし精神的な弱さと、まだまだ働くことへの意識の未熟さが課題である」という。彼の長所だけでなく課題も伝えられたのが良かったのではないかと考えている。

2. 障害者雇用等における取り組みについて

（1）業務内容・職場配置について

Mさんの働いている現場は、セントラルキッチンという機能を果たす部署での業務である。弊社は事業所の概要でも述べたように、とらふぐ専門料理店を全国に展開しており、その各店舗にセントラルキッチンで加工した食材を供給している。

その中でMさんは、食材加工ラインの周辺業務に携わっている。Mさんの障害特性として、細かな手作業よりも、大きく身体を使った業務の方が得意だろうと判断し、例えば仕入れた食材の入っていたダンボールくずしや配送前のダンボールの組み立て、使用済みのトレイ等の洗浄、加工前後の食材を台車に積載し冷凍庫までの運搬作業などを中心に取り組んでいる。ただし、時には少々苦手な部分ではあるが、手作業としてふぐひれの貼り付け作業や、食材加工後の袋詰め作業なども行っている。

全体的に動き回る作業が中心であるが、もう1つの彼の特性として作業の集中力の弱さがあり、1つのことを継続する作業よりも動き回っている方が、Mさんの良い面を引き出すことができている。また、彼がその周辺業務に携わってくれることで、食材加工ラインでの作業員も加工業務に集中して取り組むことができている。

業務中の風景

（2）指導方針について

『責任感を育てる  ～決して諦めず、伝え続ける～』を指導方針としてMさんへの指導を行っている。まず基礎的な事柄については徹底して指導を行った。例えば挨拶や返事、また業務中における報告・連絡・相談というのも、大きな声ではっきりと行うこと。それと「あなたが、きっちりと責任をもって取り組んでくれないと困る」ということを、彼のレベルでなく、弊社の要求するレベルで伝えている。

特にMさんは注意や指導を受ける際、その注意されている内容よりも、険しい顔つきで指導されていることに恐怖心が先に出てしまうことがあるので、抽象的な表現ではなく、より具体的に説明することが重要であった。それと先述したように「あなたが、きっちりと責任をもって取り組んでくれないと困る」ということを、現在も決して諦めず、伝え続けている。

（3）職場体験実習の場として

また、雇用という形ではないが、施設や支援機関等からの依頼を受けて『職場体験実習の場』として積極的に協力している。だいたい10日ほどの体験実習ではあるが、将来企業で働くことを目標としている障害者を受け入れ、弊社のセントラルキッチン内での業務に携わってもらっている。

働くことの基礎的な事柄（人間関係の構築、挨拶や返事、礼儀など）や食品加工業の専門的技能の習得（衛生・環境管理、品質への意識）などを身につけることで、企業で働くことへの意識や動機づけの一助となればと考え受け入れている。

先日、能力開発施設の担当指導員より、以前に実習受け入れをした訓練生が、今春から働く企業が内定したという、大変嬉しいことを聞いた。特に弊社の実習を終えてから、非常に声が大きくなり、基本的な挨拶や返事、業務中の報告など見違えるほどであったらしい。もともと作業能力は非常に高いものがあったが、積極的な人間関係の構築などコミュニケーション力の弱さが課題であった。弊社の現場担当者からは「もっと、あなたの存在を、みんなに知ってもらうことが大事。もっと大きな声で元気に」ということを伝え続けた。たかが10日ほどの職場体験実習で、彼がこれだけ変化し、働けるようになったことは本当に嬉しい限りである。

3. 関係機関との連携

先述したように、Mさんが職業訓練を受けた職業能力開発施設との連携や信頼関係というのは、非常に重要であると考えている。実際に、雇用した当時に比べて頻度は徐々に少なくなってきたが、職業能力開発施設の担当指導員の定期的な訪問があったりするので、弊社も相談できるし、Mさん自身も相談できたり、緊張感を取り戻せたり・・・と効果的である。

実際は弊社とMさんとの雇用契約に基づくものであり、日ごろの業務にかかわる指導は弊社の役割であるが、Mさんの将来の生活についてであるとか、ご家族との関わりの中で、こういった支援者が側にいるということは非常に重要であると考えている。

働くことへの意識や知識、技能向上への指導は弊社が責任をもって取り組み、生活を支える部分ではご家族はもちろんのこと、職業能力開発施設などの支援機関、支援者の支えがあって、それぞれの立場が役割を分担することによって、よりよいMさんの確立した就業生活が送られるものだと考える。

4. まとめ

Mさんも平成19年6月から弊社で働きはじめ、採用当初と比較すると、業務の流れも理解し、高い意識の中でスムーズな業務遂行が可能となってきたと思われる。この3年間、Mさんとの関わりを通して、知的障害のある人の雇用を考えた際、一番重要なのは、その障害者の特性を十分に生かすことのできる業務を準備、配慮をすること。それと、こちらの思いや考え、意思を具体的に伝えることだと考える。知的障害者だからと、伝えるべきことを遠慮するのではなく、業務を遂行する上で重要なことは障害あるなしに関係なく、社員同様の教育、指導が必要であると確信している。特に当現場は、各店舗に食材を供給するセントラルキッチン機能という非常に重要な部署で働いている一員であるということの意識を持ち続けていかなければならない。その重要な部署で働くことを通じて、弊社（セントラルキッチン）で、さらなる活躍をしていただくことを願っている。また働き続けることによって豊かな人生が送れることを願い『責任感を育てる～決して諦めず、伝え続ける～』をモットーに、ますます彼と歩み続けていきたいと思う。