事業所名

社会福祉法人夢工房  特別養護老人ホーム  シスナブ御津

所在地

兵庫県たつの市

事業内容

社会福祉事業(特別養護老人ホーム)

従業員数

65人

うち障害者数

1人

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	1	施設内清掃、シーツ交換他
精神障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取組み内容
3. 今後の展望と課題

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）概要

社会福祉法人 夢工房において、「高齢者が自らの意志に基づき、自立した質の高い生活を送ることができるよう支援していく」を基本方針とし平成9年10月に開設。

敷地面積約4,600平方メートルに居室70床、その他様々な設備が兼ね備えられており、家庭的な雰囲気の中でサービスを提供している。

ちなみに、「シスナブ（CISNAV）」名前の由来は、

（2）障害者雇用の経緯

従来から、障害者法定雇用率が未達成の状況が続いており、ハローワーク（公共職業安定所）より障害者雇用に向けて指導を受けていたものの、職場環境上、従事する業務の洗い出しをなかなか見出すことが出来なかった。また経験不足から、障害者の雇用に対する不安感が拭いきれず、実際の雇用に至らなかった。

そういった中、法人本部から当施設においても障害者雇用に関する取り組みを積極的に行うように指示があったり、ハローワークが行う合同就職面接会に参加したりしていたところ、平成21年9月頃、ヘルパー2級の資格を持った人がいるので会ってみて欲しいと話があった。まずは、3者面談（ハローワーク職員、所属していた施設職員、シスナブ御津職員）の中で雇用するにあたっての課題の整理、職場定着に向けての支援方針等について意見交換を行った。その後、本人を交えて4者面談を行い、実習受入れに向けて取り組んで行くこととなった。

その対象となるAさんは、29歳の女性で知的障害（B1）と重度身体障害があり、特別支援学校を卒業後は、就労を目指して障害福祉サービス事業所を利用していた。

平成21年の9月末頃よりジョブコーチによる支援も受けながら、まずは一週間にわたり職場実習を実施。その後3ヶ月間の予定でトライアル雇用に移り雇用に向けて様々な取り組みを行った。仕事内容の理解には時間がかかる場合もあるものの、挨拶もよく出来、明るい性格で、他の職員からも比較的早く受け入れられた。そこで、トライアル雇用開始後2週間で正式雇用に切り替えた。

2. 取組み内容

仕事内容は清掃業務と介護補助他。正直言って雇入れる前は不安のほうが大きかった。現場はそれぞれの業務で手一杯の中で、余計に手間がかかるのではないか、利用者の方に迷惑がかからないか等心配していた。しかし、Aさん自身が明るく比較的どの職員にも自ら話しかけ、意思の疎通が図れていたり、利用者の方の安全を見守り、危ない時は近くにいる職員を呼びに来てくれたりしていた状況から、当初の心配が払拭されるのにさほど時間はかからなかった。

作業面においては何度も同じ指示を必要とするときもあるが、そこは粘り強く何度でも具体的に伝えることで、少しずつ作業を習得している。理解できているか否かを口頭で確認できるので、作業を教える上ではさほど問題はなかった様子である。

事業所としては少しでも作業がしやすいように、清掃道具を持ち運びする入れ物を小柄なAさんが使いやすい物（Aさんが以前の施設で利用していた物など）を用意したり、鍵穴の位置を付け替えたり、作業に必要な物の置き場所を工夫したり、作業をしている本人の様子を見て、時には本人の意向を聞きながら環境改善を行ってきた。

Aさんは時にはモチベーションが上がらず、作業態度に出ることもあるが、その都度、声をかけることにより気持ちを盛り上げていくように周囲の職員が心がけている。

Aさんに話を聞いた。「周りの皆さんに優しく接してもらえるのが嬉しい」作業に関しては、「1人で黙々とする作業は苦手。誰かと話すことも出来る作業は楽しい」と話し、この話をしているときにも、同席していた統括相談員に「こんな時どうしたら良い？」「○○の時に困ったけどどうしたら良い？」等、矢継ぎ早に質問が続いた。それを一つ一つ受け止めて、時にはアドバイス、時には叱咤激励をする統括相談員の精神的支えが大きいのであろうと感じられた。そんな中で「利用者の方の車いすを押したい」とAさん。「車いすを押すには利用者の方の名前を覚えないといけないから、車いすに貼っている名前をひらがなに書き換えましょう」と提案され、Aさんの表情がパッと嬉しそうになった。「もっと色々仕事がしたい」と仕事に意欲的な言葉が出てきていた。

3. 今後の展望と課題

Aさんが、作業が済むと大きな声で「すみました」と報告している様子を見て、他の職員が、自然と「報告」、「連絡」、「相談」などを意識するようになり、これまで以上にそれらを実践するようになるなどAさんの存在が職場に良い影響を与え、職場の雰囲気も明るくなっている。また、Aさんを雇入れたことにより仕事は誰でも基本的には“出来ることを一つ一つしていけば良いんだ”と思えるようになり、職員間のチームワークも芽生えた。お互いに助け合って仕事をすることが大切なんだと知らず知らずのうちに考えるようになったと、予想外の好影響が職場にも出ている様子である。

今後は、Aさんのモチベーションの維持を意識しながら、うまく声をかけることで意欲を引き出して行くことが重要かと思われる。

「ヘルパー1級にチャレンジしたら」とAさんに言うと、最初は少し後ろ向きであったが、「給料が上がるよ」と続けて言うと表情が一気に変わり、明るい表情で「頑張ってみようかな」とAさんの新たな目標が見つかった。

今回印象的だったのは、Aさんの表情が明るいのと、Aさんを見守る職員の表情に温かさが満ち溢れていたところであった。

Aさんは「将来結婚することがあっても仕事はこの場所で引き続きやっていきたい」と話す。

また、統括相談員がこれまで不安だった障害者雇用に対して、Aさんの存在によって多くの可能性を感じることが出来たので、早速、もう1名考えてみたいですと話されていたのが印象的であった。

作業の様子

Aさんが話している様子