「急がない・焦らない・あきらめない」で雇用の可能性を引き出す
~希望と喜びを持って働ける職場づくり~
- 事業所名
- 島根ナカバヤシ株式会社
- 所在地
- 島根県出雲市
- 事業内容
- アルバム、商業印刷、手帳・製本、文具紙製品、環境機器、事務機器、
オフィスファニチャー製造・開発 - 従業員数
- 526名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 DTP(印刷をするためのデータ処理) 肢体不自由 2 検査、製造 内部障害 1 管理 知的障害 3 製造 精神障害 1 製造 - 目次

1. 事業所の概要
【事業内容】
ナカバヤシ株式会社のフエルアルバム生産拠点として昭和46年に島根県下に新設された工場群が前身である。平成17年に、出雲ナカバヤシ株式会社・平田ナカバヤシ株式会社・松江ナカバヤシ株式会社の3社が合併。平成20年に佐田工場、掛合工場と合併して、ナカバヤシグループにおける生産子会社として新たにスタートし、島根県から国内外に向けて製品を供給している。取扱品目は、アルバム、商業印刷、文具紙製品、収納用品、環境機器、事務機器、オフィスファニチャー等である。
【経営方針】
Q(品質)・C(原価)・D(納期・数量)でお客様の満足と信頼を獲得し、地球に優しく安心・安全なもの作りをいたします。
2. 障害者雇用の経緯
障害者雇用は、身体障害者を採用したことから始まり、平成15年に島根県雇用促進協会主催の障害者職業生活相談員の研修を受講した。ちょうどその頃に、ナカバヤシ平田工場で福祉施設より実習の受け入れについて相談があり、このことがきっかけとなって知的障害者の受け入れを行った。しかし、当時は障害者雇用のノウハウもなく、活用できる雇用支援制度も知らず、福祉施設、本人、会社で試行錯誤しながら、支援体制を整えていった。実は、その過程で「コミュニケーションの円滑化」の重要性を痛烈に認識することとなり、実習過程の不安要素を取り除くためにいろいろと考慮した中で、一人での実習は孤独感を感じるかもしれないと思い、2名を実習生として受け入れることにしたり、休憩時間の配慮を行う対策を試みたりした。また、施設職員が自主的にタイミングよく何度も職場に足を運び、本人と社員の仲立ちをしてくれたことが大きくプラスの方向に作用し、社員も上手く対応ができるようになっていった。
その後、障害者合同面接会に参加するようになり、実習受け入れの経験効果などにより、様々なハンディのある人の受け入れができるようになった。その頃より、ハローワーク(公共職業安定所)や障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等との関わりができ、雇用支援制度や連携した支援体制等が徐々に理解でき、現場でのジョブコーチ支援も効果的に活用できるようになってきた。
近年では、特別支援学校の実習の受け入れも行っている。採用に関しては、合同面接会でお会いした人達には、急いで結果を出さず、焦らず、本人にできる仕事を探し、マッチングできる時に声を掛けている。実際に採用までは、実習や訓練制度等を活用する事が多いが、仕事を覚えて職場定着するまでは、実質的にかなりの時間がかかる。その間にさまざまな課題が出てくるが、あきらめないで、支援機関と一緒に支えていける体制作りを行っている。
3. 取り組みの内容・効果
【内容】
Aさん
○実習
平成15年に福祉施設からの実習の受け入れがきっかけで採用をすることになった。実習の受け入れの段階で、まずは1名の予定であったが、初めて来る企業で実習を受け入れるのに、本人1人だけという不安要素が高いメンタル的な面を考慮し、最終的に2名を受け入れることとなった。
コミュニケーションが上手く取れるか不安があったが、まずは物事の基本となる挨拶から初めた。作業環境に徐々に慣れてもらうために、休憩時間にも少しでも会話ができたらと一緒に過ごしたり、仕事中にも様子を窺ったり、配慮を施した。このような状況の下で、当初本人も受け入れる側もどちらも緊張が続いていたが、次第にその緊張感も和らいできた。ただ残念なことに、1名はコミュニケーションが上手くいかず、自ら実習を辞退することとなった。
○実習後の定着
Aさんは毎日、雨の中も風の中も自転車で通勤し、欠勤、遅刻、早退もない。社員の手本となるような真面目な勤務態度で行動するなど、基本的に働く姿勢において動機づけがされている。まずは業務に定着してもらうために、仕事面では何度も同じことを繰り返していった。体を動かして会得することを地道に実践していくことができ、覚えたことは確実にこなしていけるようになった。通常は、特殊印刷業務を行っている。確実に仕事を覚えてきた成果として、一台の機械を任せられるまでになった。
また、通常業務以外の複数業務を行うことができるようになるなど、多能工として着実に成長しており、充分に会社の戦力となっている。
特に本人にとっては、機械を任せられるようになったことで仕事への自信もつき、社員とのコミュニケーションも上手く図れるようになり、このことが定着へ結びついている。

Bさん
○出会い
障害者合同面接会での出会いがきっかけで採用する事になった。高次脳機能障害者との出会いは初めてで戸惑いがあったが、初めて会った時にはハンディを全く感じなかった。
福祉事業所の支援、ジョブコーチ支援を利用しながら、実習、トライアル雇用の制度を介して正式採用となった。
○実習・・・ジョブコーチ支援の活用
記憶の障害と聞いていたため、受け入れる側として最初に意識して心掛けたことは、何度も同じ内容の声掛けを繰り返し続けることであった。また、本人も指示されたことはすぐにメモを取るなどの努力を行うが、メモしたことを忘れてしまったり、メモした紙をどこに置いたか分からなくなったりと時には失敗もあったが、そのことを恐れず前向きに果敢にチャレンジする日々が続いた。そうした過程において、一生懸命にがんばる本人の姿勢に、まずはきちんと応えてあげたく、その成果が出しやすくなるように、たとえば出入り口のドアや機械に名称・使用方法等の内容を書いた紙を貼って表示した。時にはジョブコーチの助言もあり、できるだけ本人に負担が掛かりにくく、かつ有効となるような可能な限りのサポートを心掛けてきた。
○トライアル雇用制度の利用
ハローワークからの紹介でトライアル雇用制度を活用した。ジョブコーチ支援は、雇用前から必要に応じて利用していった。本人の努力状況に適応したサポート制度の活用等により、今ではメモを取ることも少なくなり任される仕事も増えてきた。

○戦力
今では沢山の仕事をこなせるようになり、戦力となっている。仕事がこなせるようになると自信も付き、それが表情からも窺えるようになってきた。
現場の係長より「記憶の障害は良くなってきている。改善しているのではないかと思う」とのこと。今では出会った頃とは違った意味で、ハンディを感じないほどになっている。
ますます仕事への意欲が高まっており、今後も期待を寄せている。
【効果】
どんなハンディがあっても、まずは現場が理解し受け入れることが大切である。そのためにも支援機関との連携は重要である。障害者雇用を積極的に行うようになり、ハローワーク、雇用促進協会、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターとの連携が強くなってきた。会社では支えきれない生活部分の支援を関係機関で行ってもらえることで会社も安心している。会社の中のチームワークはもちろん、関係機関とのチームワークも良くなってきている。
様々な障害者の受け入れをしているが、支援機関との連携により、その人にあった配慮を考え対応できるようになってきた。時には他の従業員の理解を得て、個々の状況に適合させた勤務時間の対応等もあった。障害者の受け入れを行った部署では、ハンディへの配慮をすることで、その部署全体のチームワークが良くなってきた。障害のある人でも社会の中に入れば、社会人としての自覚が芽生え、配慮する事もだんだんと少なくなり、会社にとって充分といえる戦力となっている。
4. 今後の展望と課題
当社では、今後介護や福祉分野にも携わっていきたいと考えおり、障害者雇用も更に積極的に行っていきたい。現在は平田工場をはじめ、他の4つの工場、どこでも受け入れができるよう受け皿を醸成したい。厳しい雇用状況ではあるが、可能性はゼロではない。
○急がない
出会いを大切にしている。固定概念にこだわらず、急がないで、本人にできる仕事がマッチングできた時に連絡をしている。
○焦らない
上手くマッチングをしなければ、離職につながる可能性が高いので、マッチングを焦らないでじっくりと検討していく。
○あきらめない
当社の仕事を希望された人は、あきらめないでチャンスを待ってほしい。
また、当社で働きたいと思い続ける限り、あきらめないで支援を続けたい。
上記の「急がない、焦らない、あきらめない」で可能性を見いだしていきたい。先入観や固定概念にこだわらず、仕事のできる場を広げていくことが企業の役割であると思う。希望と喜びを持って働ける職場でありたいと考えている。
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