「特別な意識をもたず、自然体で取り組む障害者雇用」
- 事業所名
- 有限会社白洗舎
- 所在地
- 島根県安来市
- 事業内容
- 一般クリーニング、リネンサプライ(ホテル・旅館のシーツ・浴衣リース)
リースおしぼり、100円ショップ、コインランドリー、衣類のリフォーム - 従業員数
- 280名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 1 ドライクリーニング 仕上げ作業全般 内部障害 0 知的障害 3 ドライクリーニング 洗い・仕上げ補助
リネンサプライ 洗い・仕上げ作業精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)概要
当社は昭和32年4月に創業。安来市に本社をおき、山陰両県(松江、出雲、安来、米子エリア)及び岡山県(津山市・岡山市)で事業を展開している。業務内容は一般クリーニング及びリネンサプライ、コインランドリー等である。
“人間社会への理解と貢献”がポリシー。お客様から“このお店があって本当によかった”と思って頂くことが最高の喜びであり、さらに従業員にとっても“なくてはならない存在”になり、人間的魅力いっぱいの会社組織にすることを理想としている。
(2)障害者雇用の経緯
当社が障害者雇用に取り組み始めた最初のきっかけは、20年以上前、地域の医療機関から社会復帰を目指す精神障害の方のための訓練を依頼されたことである。リネンサプライ部門は当時、機械化していない部分が多く、手作業で行う単純な工程がたくさんあり、同じ作業を繰り返すという特性もあったため、障害者にも取り組みやすい業務ではないかと考えた。また、地域貢献をしたいという思いもあったことから、5~6名の患者さんを受け入れ、社会復帰のための訓練を行ったことがスタートである。
その後、特別支援学校(中等部、高等部)の先生からも職場実習の依頼がくるようになり、知的障害のある生徒の職場実習、採用に関しても取り組み始めることとなった。そして、“職場実習を何度かやってみて、良ければ採用する”というパターンが定着し、今までの障害者雇用ではこのパターンが一番多い。職場実習に関しては、依頼があれば基本的に受け入れることにしている。
近年の雇用は知的障害者が中心であるが、これまで精神障害者、知的障害者に限らず、聴覚障害者や高次脳機能障害者等、様々な障害者を受け入れてきた。
2. 取り組みの内容、効果
(1)現在の雇用状況
当社は現在、4名の障害者を雇用しており、業務内容等は以下の通りである。
障害種別 | 性別 | 勤続年数 | 部門・業務内容 |
---|---|---|---|
肢体不自由
|
女性
|
16年
|
【ドライクリーニング部門】 ・仕上げの工程全般。 |
知的障害
|
男性
|
27年
|
【リネンサプライ部門】 ・シーツ、枕、タオル等の洗い、仕上げ作業。 |
知的障害
|
男性
|
5年
|
【ドライクリーニング部門】 ・洗い・仕上げ補助。 |
知的障害
|
女性
|
12年
|
【リネンサプライ部門】 ・シーツ、枕、タオル等の洗い、仕上げ作業。 |
(2)勤務条件
勤務時間は9時から17時まで。昼の1時間休憩を除く9時から12時半、13時半から17時までの実働7時間であり、日によっては1時間程度残業することもある。シフト制の勤務を組み、3ヶ月間の勤務日数が75日であり、勤務時間、日数ともに他の一般の従業員と何ら変わりはない。
基本的には時給制であるが、4名のうち1名は出勤状況や勤務態度に関する評価を踏まえ、正社員としての待遇で月給制をとっている。
(3)採用から定着まで(指導の流れ)
1つ1つの作業自体はさほど難しくない、繰り返しの作業であるため、とにかく現場で指導し、出来るまで毎日同じことを教えていく。
採用当初はノルマがないところにまず配置する。他の従業員の傍らにつき補佐をすることから始め、一般の従業員のスピード感覚をしっかりと覚える。最初にゆっくりしたペースに慣れてしまうと、その後の伸びが鈍くなってしまうため、ここは重要なポイントであると考えている。
そして、ポジションを移動し、複数の作業を覚えていく。2つから3つのポジションをこなせるように指導し、ローテーションで仕事をまわす形をとる。これは単純作業の繰り返しに飽きさせない工夫であると同時に、複数のポジションを経験させるなかで作業適性を見極め、うまく能力を引き出すことにも繋がる。
あとはスピードをいかに上げていくかが課題となるが、きちんと仕事を覚え、定着するまで時間がかかる人が多いため、長い目でみることにしており、だいたい3年くらいかけてじっくりと教えていく。忙しい時期とそうでない時期、暑い時期と寒い時期等、年間を通して様々な状況があるため、そのなかで対応していけるか時間をかけて見極めている。時間はかかったものの、結果的には他の従業員よりも作業スピードが速くなった、というようなケースもある。
仕事に慣れてくれば、定着させるために部署を変えたり、目標を設定させたりすること(例えば“これが出来たら次は機械を使う作業をやってみよう”)等も重要なポイントだと考えている。

浴衣プレス補助作業

洗い機械作業

仕上げ補助作業

ズボン仕上げ作業
(4)支援体制・配慮のポイント
障害者に対する支援は、基本的には従業員の指導が全てであり、特別なことは行っていない。以前、家庭との連携が難しいケースがあった際、ジョブコーチ支援を依頼し、ジョブコーチの方に当社と家庭の間に入って調整をしてもらったことがあったが、現在は外部からの支援は受けていない。
きちんと仕事が出来るか、続けていけるかどうかは、一緒に働く従業員次第であると考えている。障害者の力をうまく引き出せば伸びる可能性は高い。当社の従業員は、ともに働く障害者に対して特別な意識を持っていない。障害のあるなしに関わらず、従業員が同じチームとして、“一緒にやろう”という気持ちで働いている。特別扱いはしない、ということが一番大切であり、叱るときにはきちんと叱るし、“甘やかす”ということは絶対にしない。変に甘やかすような対応をすることで、「出来ない。」と言い出したり、「これは嫌だ、こんなことはしたくない。」等、仕事を選ぶようになったりすることが出てきてしまい、本人が成長する可能性を阻害してしまうことになる。
当社で働くために最低限必要なことは、言葉遣いや礼儀作法、しつけである。読み書きや計算の能力は二の次と考えており、家庭で行う最低限のしつけが出来ていれば、仕事に関しては指導することで伸ばすことが出来る。
また福利厚生に関しても、他の従業員との区別は一切無い。忘新年会等の飲み会、全従業員が集まる勉強会等、全て隔たりなく参加させている。
3. 今後の課題と展望
厳しい経済情勢の今だからこそ、長期的な戦略が必要である。当社は現在、経費削減、生産性向上のため機械設備の更新、レイアウトの変更を行っている。同時に人材は不可欠であり、必要な人員を確保していかなければならない。世代交代をしなければならない時期にきていることもあり、障害者雇用に関しては要請があればいつでも検討するし、適材がいれば今後も雇用していく、というスタンスは変わっていない。
障害者雇用を促進するためには、企業の理解促進に加えて、地域社会全体の理解促進、ご家族の意識変革も必要ではないかと感じている。しかしながら今日でも、世間体を気にして当事者を社会に出させない、オープンにしないというようなことも多い。
当社では“特別な意識をもたず自然体で”、当社に合った方法で、今後も障害者雇用に取り組んでいきたいと考えている。
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