意欲ある人、努力する人がわが社の戦力!!
~成果主義で自立をサポート~
- 事業所名
- 株式会社のだ初
- 所在地
- 岡山県倉敷市
- 事業内容
- 鶏卵の生産・流通・販売及び畜肉加工、惣菜、各種飼料販売
- 従業員数
- 100名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 食品製造 内部障害 知的障害 2 トレー・コンテナの洗浄作業 精神障害 2 養鶏・鶏の管理・集卵の最終チェック - 目次

1. 事業所の事業内容
“株式会社のだ初”は、倉敷市玉島の中心地から車で約15分の小高い丘の上にある。従業員85名・アルバイトを入れて約100名の会社である。
鶏卵の生産から流通・販売までの業務を行っている「たまごセンター」と同じ敷地内の更に上に「食肉加工・食品・鶏卵加工品を製造・販売している「食品加工センター」がある。また近くには中四国では初のたまごの加工品・ランチのいただける、のだ初直営の「たまご専門店 うぶこっこ家」がある。直営農場は「瀬戸内農場(玉島)」のほかに県内2ケ所と広島県1ヶ所の4ケ所、計7ヶ所の事業所がある。創業96年、まもなく100年を迎える老舗であり、「食を通じて健康と笑顔のお手伝いをする“のだ初”」を企業の使命感として、たまごの製造卸しを行っているが、決して伝統を守っているだけではない。様々な最新技術の導入で品質管理の向上やたまご屋としては日本で初のたまごかけご飯専門醤油「ぶったまごはん醤油」の販売を行っている。そして「プチエコ・プロジェクト」として、エコの問題にも出来ることからコツコツと行っていこうと実践している。また社会貢献として企業主催としては珍しい、学童軟式野球大会「第1回たまごニコニコ野球大会」を21年3月に開催。少子化問題によるスポーツ人口の減少やスポーツ離れによる子供達の体力低下などの問題に「野球が出来ること、そして支えてくれる人に対して感謝の気持ちを育む」というコンセプトにより始めたそうである。
2. 雇用の動機
障害者の雇入れは、最初はハローワーク(公共職業安定所)から勧められたものであったが「当社は成果主義を導入しているので、障害のある・ないを特別に意識していない、という考えで受け入れた」と経営管理部の守屋課長。平成19年は1人在職、平成20年には4人が入職。身体に障害がある従業員が1人、知的に障害がある従業員が2人(うち重度が1人)、精神に障害がある従業員が2人の計5人(うち重度が1人)の在職となった。採用基準は「仕事をしたいと強い意欲を持っている人で、明るさ・素直さがある人、それに当社では家族の方にもしっかり協力してもらう為に会社の説明に際しては必ず同席してもらっています」と守屋課長は話してくれた。これは「採用したなら定着してもらいたいから」との思いからだそうである。
3. 障害者雇用のための工夫
“のだ初”では、雇用について会社の勤務形態や時間に当てはめようとはせず、障害のある従業員の希望と体調に支障がないように、勤務時間はフルタイム・少し短時間・半日勤務など話し合って決めている。「もちろん親御さんにも必ず同席してもらっています」とのこと。給与は時間給が基本で、仕事が出来る人(出来るようサポートしていく)には時間を増やし、昇給も行うというシステムを組んでいる。会社のトップの考え方は「会社にとって全ての従業員は等しく、障害があるのだからという配慮はしない。それはどの従業員も会社の戦力の一員として考えている」からだ。“のだ初”の仕事の進め方は「基本的に自分の判断によるところが殆んど」で、本人から報告があると現場の責任者が確認する、というやり方である。周囲の障害のない従業員も同僚として扱っている。あくまでも自己責任が求められている。
4. U君の仕事振り

トレーの洗浄作業
U君の働いている“たまごセンター”の職場を見せてもらうことが出来た。職場は大型の洗浄機があるが、適度な広さで落ち着いた雰囲気である。場内には、トレーやコンテナが整然と台車やパレットの上に積み重ねられている。U君を入れて4人の少人数の職場で、見るからに和気あいあいとしている。
U君の仕事は、4つある農場から送られてきた、たまご30個が入っていた空のトレーやそれを入れていたコンテナを洗浄する仕事である。就職して2年7ケ月、同じ仕事をしているといっても、その行動は大変迅速で洗浄機へ使用済のトレーを数枚入れて、出口の方へまわり回収するという作業である。量も多くチェックするのも型くずれや汚れが少しあってもダメということで神経を使う作業に思える。洗浄を終えたトレーを重ねてコンテナの中へ詰め込んでいる。ここまでの作業の工程においては全てU君1人の判断で行われている。U君に“どんな点が作業上大事か”と聞くと、「今は、特別難しくはないが、始めたころは付着物のジャッジが一瞬では見落とすことがあった。トレーの歪みなども分からなかった」と語ってくれた。仕事が終って、U君とお母さんに話を聞くことが出来た。お母さんは「息子は“のだ初”さんに就職させてもらって大変恵まれている」と先ず感謝の言葉を語ってくれた。家庭で出来る協力は、就職したからといって決して終わる訳ではない。いまでも職場の上司との連絡帳で健康状態や作業上の問題、あるいは家庭の出来事を情報交換している。障害のある人の就職は困難であるが、定着することはもっと難しい。U君のご両親の考え方や、会社のサポートは障害者の雇用から定着に向けて1つのモデルになるともいえる。
U君は3歳のときに知的障害があることが分かったが、みんなと学習したいと中学校まで普通学級で一緒に過ごしてきた。高校受験に際し持ち前のチャレンジ精神で皆と同じ高校入試を目指したが“その症状”から、岡山西備養護学校の高等部へ進んだ。数社で職場実習を経験して、学校・ハローワークの連携からこの“のだ初”へ就職した。U君は朝、時折、家族に起こしてもらいながら片道8kmを自転車で通勤しており、入社以来無遅刻・無欠勤、と大変ながんばり屋である。勤務時間は8時30分から15時30分の6時間。フルタイムの就労ではないが、学校・両親から“同じ内容の仕事を継続することで自信につなげていき集中して仕事に取り組ませたい”との希望で「体力、能力を配慮して少し短めの時間」としている。
U君は“会社が楽しい、定年まで勤めたい”とその将来の夢を語ってくれた。先日は母校の後輩たちに体験の話をする機会があり、会社へ入ったら“挨拶が大事”“分からないことは聞く”というメッセ—ジを送ったそうである。
とにかく明るい性格で職場の先輩からも大変可愛がられており、仕事のミーティングにも積極的に参加している。趣味は高校から続けている陸上競技で、インターネット等で情報を集め、お父さんと一緒に県内だけでなく県外の大会にも参加している。種目は5kmの長距離競技に出場。家ではDVDでアニメを観たり、テレビでスポーツ観戦を楽しんだりしている。

トレーの洗浄作業

消毒ゲートによる車の自動消毒
≪障害のある従業員への支援≫
食品加工センターには知的に障害がある従業員と軽度の身体に障害がある従業員が働いている。いずれもハローワークからの紹介であるが、勤続年数は知的に障害のある従業員はすでに5年を超えており、また、身体に障害のある従業員も2年が経過している。知的に障害のある従業員には作業開始前に必ず作業を確認して、作業が終了したら必ず報告をさせ、何かにつけて声かけをする様にしている。身体に障害のある従業員は何ら問題なく障害のない人と同様の業務を行っている。
瀬戸内農場には、精神に障害がある従業員が2人働いている。44歳と30歳の男性である。この農場では飼養3大原則である水・エサ・空気の管理に徹底的にこだわっており、またたまごの生産履歴も明確な安心たまごを生産している最新の農場である。仕事としては養鶏・鶏の管理・集卵の最終チェックを行っている。勿論徹底した生産管理・衛生管理がなされているが、やはり最後は従業員の手と目が必要となるからである。職場は5人~6人のチームで働いている。コミュニケーションが苦手な2人には少人数で自分の仕事に責任を持ってコツコツと成し遂げていくやり方はとても落ち着いて働けるそうである。ハローワークからの紹介でトライアル雇用を経て採用。1人はすでに1年が経った。農場長が介助者となり“声かけ”“挨拶”は少し厳しく言っているとのこと。“現在は短時間勤務だが、本人と相談しながら少しずつ就労時間も延ばして、いずれ自立できるようサポートしていきたい。”と、話してくれた。
「障害者試行雇用奨励金(トライアル雇用奨励金)」・「ジョブコーチによる支援」・「障害者介助等助成金」などを活用している。
5. 今後の展望
今後の展望を守屋課長に聞くと「障害を持っている従業員の定着にはまだ試行錯誤している段階だが、ヤル気のある人にはぜひ長く勤めてもらいたい。そうなるようにしっかりサポートもしていきたい」と、定着に向けての抱負を語ってくれた。
『障害者雇用は決して思いやりや可哀想と思う気持ちだけでは長続きしない。障害のある従業員には確かに目配り、気配りは当然だが、“会社の戦力の一員として考えている。”』というトップの考え方は、雇用するに当たっての原点と言えるのではないだろうか。
“思いやり”と“面倒見”が感じられる会社で、大変清々しい気持ちで訪問を終えた。
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