その人の特性を活かした雇用と就労継続を目指して
- 事業所名
- まるほ食品株式会社 徳島工場
- 所在地
- 徳島県美馬市
- 事業内容
- 屠鳥、解体仕分け、鶏肉加工処理、冷凍ピザ製造
- 従業員数
- 132名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0人 聴覚障害 0人 肢体不自由 0人 内部障害 0人 知的障害 5人 カゴ洗浄、鶏掛け、鶏足掛け、鶏の尾切り 精神障害 0人 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
昭和38年 香川県高松市でまるほ食品を設立し、営業開始
昭和39年 徳島県美馬市に徳島工場新設
昭和41年 香川県仲多度郡に多度津工場新設
昭和44年 香川県仲多度郡に本社を移設
昭和48年 愛媛県新居浜市に新居浜営業所を新設
昭和50年 岡山県岡山市に岡山営業所を新設
昭和59年 多度津工場にてピザ製造を開始
昭和61年 サンフーズ株式会社設立
平成 1年 食鳥検査制度対応の処理機械導入
平成 5年 讃岐コーチン処理開始
平成15年 自動骨抜機システム導入
(2)障害者雇用の経緯
雇用率未達成であり、ハローワーク(公共職業安定所)の指導などより、職場適応訓練を行い障害者の雇用を行う。当初は、障害者雇用に対してマイナスイメージを持っていたが、実際に雇用してみると、障害者の持つ能力を適材適所で活かすことで、障害のない人にも劣らない仕事の結果を生み出し、平成20年度より障害者雇用や実習を積極的に受け入れるようになった。
事業所の障害者雇用への考えとして、最初から、この人は雇用できないと決め付けるのではなく、受け入れることを前提に実習等を行い評価して採用をしていく。十人十色であり、その人の色や個性がある。仕事に本人を合わせるのではなく、本人に仕事を合わせて働いてもらう。本人と会社だけでなく、家族や支援者など関係者全員で障害者の就労生活を支えていきたいという考えの下で障害者雇用を行っている。
2. 従事業務、取り組み内容
〈助成金等の活用〉
・職場適応訓練 ・トライアル雇用 ・職場実習・見学促進事業
・ジョブコーチ支援事業 ・特定求職者雇用開発助成金 ・障害者介助等助成金
〈職場配置〉
当社では、障害者雇用の一番のポイントは職場配置であると考えており、その人の障害ではなく、これまでの経験や取り組み方を参考に現場実習を行い、本人の適性や能力を活かせる職場配置を決めている。
また、馴染みやすい環境を作るために、近隣地域の方やグループホームで仲が良いなど、その人に合った条件でペアやトリオといった関係を職場内で作れるよう、職場配置に考慮しており、この関係が、病気になった、何か不安を抱えているなどといった時に支えてくれる予防線となっている。
<社員教育>
職員教育に、企業内の管理者教育の方式のひとつであるTWI方式(企業内訓練教育)を取り入れており、仕事の知識の習得→現場での実践→実践の評価を繰り返すといったOFF-JTとOJTを通し社員の能力向上に努め、障害を持つ人の教育にも活かしている。
〈作業内容〉
『鶏掛け・かご洗浄』


『カゴ洗浄・配布』


『鶏の尾切り』 『鶏の足掛け』


〈取り組み事例〉
【事例1】(N.Hさん)
トライアル雇用とジョブコーチ支援を活用し就職する。本人の特徴を活かせるように、本人のこれまでの職歴・性格などを元に考え、反復動作だけでなく、少しコツをつかむことが必要である職場を提案し実習をした。「少しのコツ」が必要という少し高いが到達できる目標を掲げることで、本人のやる気を引き出し、仕事に誇りを持って取り組むことができた。また、外国人の多い職場で意思疎通も難しい現場であり、これまで人間関係で仕事を辞めてきた経緯があったので、コミュニケーションについて課題があったが、ジョブコーチによる精神面への支援とともに、本人の自宅がある地域と同じ地域の上司をつけ、地域の話題などから上司との関係を形成し、そこから周囲の外国人の方とも関係を築けた。職場内の人間関係上の問題があれば、上司が対応している。生活面に関しても、職場で何かあった場合には、就業・生活支援センター、相談支援事業者に連絡をとり、関係機関と連携しながら対応し、雇用の継続ができている。
【事例2】(Oさん)
職場適応訓練を1年間利用後、トライアル雇用を利用し雇用する。本人の仕事に対する真面目な姿勢を評価し、冷凍製品の検品・発送準備業務に配置する。真面目に一つ一つを丁寧に検品し、障害のない人が見つけられなかった異物を発見することが多く、Oさんが業務に従事してからクレームがなくなり、本人の能力と事業所の利点が合致する好結果を生み出した。しかし反面、気が短い性格と職場内に外国人の同僚が多いことなどが相まって、コミュニケーションの行き違いから口論になることが多くなり、「もう仕事を辞めたい」と、何度か無断欠勤を繰り返した。そこで、ジョブコーチの支援を活用し、休み時間を利用して本人の精神面のフォローを行った。また、グループホームでの規制が疎ましくなり退所を望み、生活面でも問題を抱えだした。当社としては、『仕事さえしてくれれば良いわけではなく、生活があっての仕事であり、生活と仕事を一体的に支えていく必要がある』と考えている。関係機関の協力をいただき、仕事の継続と一人暮らしができるように、終業後の時間を使って会議や相談を行った。その結果、一人暮らしを始めることになり、仕事・生活に問わず問題が生ずれば、対応できる支援体制を整えた。しかし、他県で生活する家族の同居の意向や外国人同僚とのコミュニケーションの行き違いなどが重なり、何度も環境を整えるよう各機関と調整を行ったが、本人は退職してしまった。
〈関係機関との連携〉
(1) ハローワーク
定着指導・職場適応訓練生に対する指導・助成金申請手続き等で担当官・相談員と常時連携をしている。
(2) 障害者職業センター
職場実習や職場適応について、カウンセラージョブコーチ等と連絡を密にしている。
(3) 障害者就業・生活支援センター及び相談支援事業者
職場・生活を通し、問題や課題がある時には連絡をとり関係機関・家庭の調整を図っている。また、今後障害を持っている人の社員教育に関しても連携し行っていく。
3. さいごに
「大きな機械があるから危ない、衛生面には特に気をつけなければならない、作業が複雑、忙しいから」などと障害者雇用を断わる事業所が多いが、まずは、雇用を前提に実習などにより受け入れてみることで、その人の特性や才能と出会える。適所に配置することで生産効率が上がり、当社では障害のない人には出せない成果を生み出した。また、職場内の作業手順や、環境づくり等の改善点に気付くきっかけにもなり、挨拶や真面目さ、基本的な習慣など彼らから学ぶべき点も多くあった。一般的に言われる習得に時間がかかる、何らかの配慮が必要であるなど、様々なデメリットもあるが、それらを考えても障害者雇用は様々な会社にとってメリットが十分ある。障害者雇用を検討されている事業所には、ぜひ取り組み方の参考の1つとして、障害者の特性を活かし共に利益のある障害者雇用に取り組んでいただきたい。今後の課題として、仕事以外の生活面についても学ぶ場、コミュニケーションなど、後手に回らない問題対応、相談をしやすいシステム作りを整えていきたい。
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