創業社長の思いが、「障害者雇用は企業の社会的使命である」という大きなテーマに
発展していった取り組み
- 事業所名
- 四国医療サービス株式会社(高知工場)
- 所在地
- 高知県高知市
- 事業内容
- リネンサプライ
- 従業員数
- 143名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 8 仕分け作業、たたみ作業 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯等
(1)事業の特徴
四国医療サービス株式会社は、昭和40年(1965)高知市に設立。昭和42年、前身である愛媛基準寝具株式会社(1962設立/松山市)との合併により、松山は四国医療サービス株式会社愛媛基準寝具事業所となる。
以来、高知・愛媛の両県において医療機関や介護老人福祉施設などを対象に、寝具類・白衣制服類・布オムツなどのリース・販売及び洗濯業務、その他紙オムツ・介護用品や医療機器の販売に取り組んでいる。また、滅菌事業部(1993)、介護福祉事業部(1994)、給食事業部(1995)を設立。関連にはホテル事業(国際ホテル/松山、宇部、山口)があり、吉永企業グループとして多角的に事業を展開している。
(2)障害者雇用の理念等
事業領域が医療・福祉分野を対象としていることもあるが、その前に創業社長に高齢者や障害者福祉への強い熱意があり、その思いが事業に活かされているといえる。
例えば、布オムツから紙オムツへの変化があった。紙オムツの開発・普及により、これまであった<オムツたたみ作業>が減少していく。
こうした社会の構造的変化は企業の業務内容にも影響し、現場からは余剰人員の削減が出てくる。しかし、その業務が縮小されたとしても、企業の根底には何とか障害者雇用を守るという創業社長の思いがあり、それが『障害者の雇用の促進等に関する法律』と重なり「障害者雇用は企業の社会的使命である」というテーマへと発展し現在に生きている。
だが、障害者の業務範囲は限られていて配置転換は簡単にできない。各部署で就業可能な現場を探し(創り)、作業の流れを止めないように指導訓練と並行させ、一定数の雇用の維持に努めている。

(3)障害者雇用の経緯、背景
創業社長は早くに父親を亡くし、母1人子1人で育ったことから事業を通しても高齢者や障害者福祉に関心が深く、今でも毎年、地域の高齢者を招き「しあわせのつどい」を純粋な奉仕の心で取り組んでいる。
こうした思いは創業時からあり、事業を通して生かされている。
障害者であっても「働きたい」という意欲、「働かせたい」と職場を求める親の熱意、「何とか応えたい」という思い。その純粋な思いから始まった取り組みが、企業体質となり、「障害者雇用は企業の社会的使命である」に発展したといえる。
今では、職場に障害者がいることが、違和感なく自然な光景である。これは、単に障害者雇用率の達成から生まれたものではない。
※各工場での障害者雇用状況
・高知工場 知的障害 8名(仕分け、たたみ作業)
・愛媛工場 肢体不自由 2名(縫製作業、選択前処理作業)
知的障害4名(仕分け、たたみ作業)
2. 障害者の従事業務、職場配置等
(1)障害者の従事業務
現在、高知工場で働く知的障害者8人(男性7人、女性1人)は、日高養護学校の卒業生であり、先輩後輩の関係にあるものが同僚となっており、全員が在学中に職場実習を体験し、卒業後に採用されている。
障害者の業務には、使用済みの洗濯物を職場マニュアルに添って分類する「仕分け業務」と、洗濯・乾燥をした後の仕上げ段階の「たたみ業務」がある。
男性の障害者は、仕分け業務を担当している。内容は、病衣(色別・サイズ別)シーツ類(柄別)がある。現場の流れに合わせてやらないと全体のスムーズな流れが止まってしまう。流れの前と後には、当然他の社員が一緒になって働いている。
一方、女性の障害者は、養護学校を卒業してすぐに高知工場に就職し、教育訓練などを受講していることもあり、業務には慣れ親しんでおり、病院別の指定の折り方、種類別仕分け・結束など、たたみ業務を担当している。家族と同居していて自転車で通勤している。

仕分け業務

たたみ業務
(2)雇用管理
ここにも創業社長の思いが生かされ、雇用形態は全員正社員として雇用されており、就業規則等に添った労働条件や雇用環境が整備されている。
当社では、1年単位の変形労働時間制を採用している。勤務時間は、8時30分~17時まで、昼休み(12時~12時50分)と休憩時間(15時~15時10分)を除き実働時間は7時間30分となっている。医療・福祉施設を対象とする事業のため、夏季休暇や年末年始の休暇も含め休日対応の業務体制となっているが、基本的に日曜日は休日とし、土曜日、祝祭日は年間スケジュールに沿った休日(年間87日)を決めている。年次有給休暇も法定通りである。
賃金形態は日給月給制で、勤務年数や会社の業績によっては加算もある。ただ、通勤手当以外の手当は特に設けていない。
福利厚生面では、特に健康管理に留意し、定期検診を実施している。
また、仕事以外では年1回の企業グループ研修旅行やレクリエーション、忘年会がある。研修旅行においては、障害のある人とない人を同室にして障害者を補助するとともに、愉しみながらコミュニケーションを図るようにしている。
3. 取り組みの内容
(1)障害者雇用の具体的な内容
業務については、障害者は理解したことはしっかりと真面目にするが、いくつかのことを一緒に指示すると、混乱するだけであり、良い方法でないことは周囲のみんなも理解している。現場責任者が中心となり、具体的に指示をすることで、障害者が惑わないように、一定のリズムで身体で覚え慣れていくように配慮している。特に、業務環境に慣れるまでは、機械に挟まれたり巻き込まれるなどの危険を避けるため、機械の側には近づかないよう、周囲の者が注意を怠らないようにしている。
平成9年度に「障害者職場定着推進チーム」を設置し、障害者がその能力を十分発揮できる職場環境づくりに取り組んで来た。この効果もあり、以降に入社した障害者は辞めることもなく、定着率は高い。勤続年数10年以上の障害者もいる。
また、職場内の人間関係にも気を遣うが、業務内容(質)については障害者だからという甘えは許されない。仕事を担う仲間として、ダメなことはその場ではっきりと伝えるようにしている。例えば、「おしゃべりはダメよ」とか「しっかり見て」とか、その都度、どこがダメなのかを具体的に伝え改善、改良を図るようにしている。
幸いにも当社の障害者は、学校からの推薦理由を証明するかのように、同僚ともうまくやっている。
(2)活用した制度や助成金等
納付金制度に基づく障害者雇用調整金、業務遂行援助者の配置助成金
4. 取り組みの効果と課題
(1)実施による効果
先輩の障害者が後輩のOJT担当者となることで作業能率の向上が図れるだけでなく、同じ境遇として障害者としての悩みやとまどいを受け止める体制になっている。
初めは「仕事ができるだろうか」の不安よりも、新しい職場に慣れる時間を共有してくれる応援者の存在が大きかったようだ。他の社員にしても、今では、職場に障害者がいることが当たり前の光景であり、障害者雇用が根付いてきた企業風土を窺うことができる。
(2)障害者のコメント
・男性の場合:「間違ったら、その場で指摘される。バスタオルもいっぱい色が違うし、難しい。何年やっても悩むこともある」「休みの時は学校時代の仲間とソフトボールをする」と嬉しそう。また、立ち仕事でちょっと疲れることがあれば、仲間とおしゃべりをしたくなることもあるようだ。
・女性の場合:「仲間がよくしてくれる。楽しいことばかりじゃないが、いやでもない」「仕事は教えてくれる。困ったら聞くけど、新製品はなかなか覚えられない」
・男女とも:「ここでずっと働いてきた、今後も仕事を続けたい」「一番の楽しみは給料で、自分の好きなものを買う」「給料の一部は家に入れている」と、仕事への夢を語ってくれた。毎日会社に来て働くということは、しっかりと身についている様子だった。
(3)今後の課題と展望
障害者が就業できる仕事範囲はまだ限られている。しかし、根気よく指導すれば、単純反復作業を確実にこなせるようにすることができる。
一方、仕事の幅を広げることは、これまでの体験からも容易ではないことはよく分かっている。しかし職場に障害者を受け入れる土壌はある。
今後、就業可能な職場を工夫して創り出し、新たな障害者雇用の枠を確保していくことも重要な課題ではあるが、もう一歩進めたい課題もある。単純作業的なものは、新しい製品や機械がとって代わっていく方向の中で、障害者自身の能力開発、それがもう1つの課題といえるのではないだろうか。

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