障害者雇用は、企業の社会的責任であると同時に、人の成長にとっても得るところ
の大きい取り組みである。
- 事業所名
- 株式会社フタガミ
- 所在地
- 高知県南国市
- 事業内容
- ホームセンター、小売業
- 従業員数
- 333名
- うち障害者数
- 6名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 3 店鋪作業・企画・木工加工 内部障害 1 電算業務 知的障害 1 店鋪作業 精神障害 1 事務 - 目次
1. 事業所の概要
(1)事業の特徴
昭和21年(1946)木製建具の二神として創業。1967年に株式会社二神木工として法人化、以後、企業名を「株式会社フタガミ」(以下、フタガミ)とし、「ゆとりのライフスタイル」の下、ホームセンター、住宅(新築・リフォーム)、カー用品、ペットショップ、キッチンや生活雑貨等、フタガミグループとして生活全般をとらえた事業を展開している。
(2)障害者雇用の理念等
フタガミでは、人の成長が企業の成長につながるという社長の信念の下、人材育成をすすめている。雇用においても、学歴・性別・雇用形態等で区別することなく、成長する人材が重要な役割を担うのが当然である。障害者雇用においても同様であり、障害があってもチャレンジする気持ちがあればチャンスは公平に開かれている。
2. 障害者雇用の経緯、背景
(1)取り組みの経緯
障害者雇用の始まりを特定するのは難しいが、木製建具の製作販売を行っていたフタガミの前身「二神木工」からである。業務上の災害で手先等が不具合になることもあり、可能な業務で雇用の継続を図ってきた。技能の継承は当然のことであるが、そうした姿勢(雇用の継続)もその後の事業展開の中に活かされ、障害者雇用へと発展し、現在では障害者雇用の範囲も広がり多様となっている。こうして、企業としての障害者を受け入れる風土は自然に作られてきたといえる。
今回の事例者以外の障害者も勤務年数は3~8年と長く、職種は違うがそれぞれ職務の一環を担う立場にある。
品出し業務
作業日記
(2)取り組みの背景
フタガミグループには障害者雇用の土壌があるとはいえ、接客が中心のホームセンターでの勤務となると未知の分野である。お客様は、障害のある人・ない人の区別なしに店員として接してくることを予想し、新入社員同様、OJT担当者を中心に障害者職場定着推進チーム(以下、「推進チーム」という)を編成した。そして、教育訓練や職場配置も、障害者として相対するのではなく、他の従業員と同じように接することができる環境づくりを目指した。
現場では、「配慮はするが遠慮はしない」方式で戦力として育て、責任を持って仕事にあたってもらい、やりがいも感じてもらえるようにと配慮してきた。そのため、急な不在等にも対応できる仕事内容やシフトを考えたアフターフォローの体制、同時に業務への慣れや周囲との親しさづくり、そして商品知識や接客等への成長に向けてのチャレンジする気持の高まりを期待した。幸い、OJT担当者や周囲の配慮が功を奏し、大きな失敗もなく現在は安定した状態で仕事を進めている。
フタガミグループでは、ボランティア活動などを通じて「気づく心」を大切にしていることから、障害者雇用は企業の社会的責任だけでなく、当社スタッフにとっても得るものは多いと考えている。
3. 障害者の従事業務、職場配置
(1)障害者の紹介
紹介するのは、フタガミグループのホームセンター(20店鋪)の1つ「ホームセンターマルニ山田店」に勤務する、入社2年目の知的障害の女性従業員(以下、Aさん)である。山田店は、店長以下パート従業員を含めて総勢16名の職場で、業務は19部門に分かれている。
Aさんは、家庭用品売り場の品出し業務(店内の売り場棚への商品補充や整頓、入荷商品の段ボール片づけ梱包等)を担当。現在は、レジや接客の店内業務を試みる段階まで成長している。
(2)仕事内容
朝は8時30分ごろ出勤。連絡ノートを読んで、前日のことや当日の作業内容についての確認。朝礼での内容を店長や担当者が再度確認することもある。
作業は先ず、トイレットペーパーや洗剤等の家庭用品売り場とインテリアの品出し業務を行う。レジ業務は、釣銭間違いもなく一人でも出来るようになってきた(分からないことがあった場合は、すぐに聞くことが出来るようになった)。また、他の部門の手伝いも頼まれれば引き受けることが出来るようになってきた。
現在は、返品作業やポイントの後付けなどのカウンター業務も含めて、接客業務を試みている。
(3)サポート体制
フタガミグループには障害者に対する基本的な理解はあったが、接客が中心のホームセンターでは初めてのことでもあり、サポート体制を確立するため、平成20年、総務および関係部署、店長や現場OJT担当者により「推進チーム」が設置された。
障害者がホームセンターの職場に適応し、定着し、さらに戦力となっていくためには、障害者の能力・特性を根気よく見守るということが重要といえる。
障害者本人も周りも安定した状態になるまでにはどうしても時間がかかるが、「推進チーム」を中心に根気よく見守ってきた。
4. 取り組みの内容
(1)具体的な受け入れ体制
平成19年、近くの山田養護学校からAさんの実習受入について熱心な依頼があった。2回の実習(2週間×2回)から、覚えは遅いが、覚えれば他の人とそれほど変わりない状況になることが見受けられた。接客が外せない職場であるから、不安が無かったとはいえないが、山田店で雇用することになった。
1・ホームセンターでの知的障害者勤務は山田店が初めてであることから、他の従業員にとって負担とならないよう、当初の受け入れは適正人員+アルファーとした。
2・現場OJT担当者が当人の障害を十分に把握し、根気よく接した。(当人とも相性がよかった)
3・養護学校の先生が頻繁に訪れ、励ましてくれた。また、当店に障害を理解するパート従業員がいて、現場での介助役を努めてくれた。
このように、本人の前向きな姿勢と同時に、他では難しかったかもしれない絶好の受け入れ環境が当山田店にあったことが良い結果を招いたといえる。
レジ業務
掲示板
(2)店長からの報告
実習段階では、正直なところ心配だった。ハローワーク(公共職業安定所)や養護学校からは「1つずつ教えて欲しい」との申し送りがあり、分かるまで繰り返し教えるようにしてきた。
他の新入社員と比べると4、5倍の時間がかかった。例えば、口頭での指示に対して返事はするが、実際には、分かってない、理解できてないことがあり、その都度、実際にやらせて確認を繰り返す必要があった。しかし、今では、レジ業務、品出し業務、それに関わる作業もこなせるようになり、安心して任せることができる段階まできた。連絡ノートを見ても分かるが、自分から仕事をみつけて動けるようになってきた。
接客はまだ問題が残るが、お客様の話を最後まで聞くように指導している。また、検品、店間移動、カウンターでの接客業務についても試みている。
今のところ、お客様からのクレームもなくうまくいっている。同僚とのコミュニケーションも、本人が活発とまではいかないが素直な性格なので、周りから可愛がられている。遅刻や欠勤もなく、気分のムラや感情的になることもほとんどなく、周囲から無理なく受け入れられている。
(3)活用した制度や助成金等
・第1回研修(平成19年10月22日~11月6日)、第2回研修(平成20年1月15日~2月8日)は「トライアル雇用奨励金」を活用。
・平成21年6月1日以降は、「業務遂行援助者の配置助成金」を利用。
5. 取り組みの効果と課題
(1)店長は、「Aさんは、いなくては困る存在になっている」という。
今回の雇用は、障害のある人も障害のない人も先入観なく、気持よく働ける職場づくりにつながっていることに気づかされた。気づきの心や思いやりの心、チームワークの大切さをみんなで作ってきたことにより、改めてみんなの中にそうした心が現れてきた。このことは、マルニグループでは、トイレ掃除を通じて大切にしている「気づきの精神」に共通することでもあり、それを実践できる人材育成にも通じる。
障害者雇用は、企業の社会的責任であると同様に、人の成長にとって得るべきことが多いと判断できるようになった。今後もこの姿勢を貫いていくことが重要であり、又課題でもある。
(2)Aさんのコメント
「ここは先生が勧めてくれた。お昼休みには恋愛の話もする。やりたいことは、家庭用品部門のことを覚えたいし、立派になりたい。仕事で大切なことは笑顔だと思う」・・・仕事からしっかりと学んでいるようだ。「やめたいと思ったことはあるか」の質問にも「2、3回思った。人間関係で悩んで、でも勇気を出して続けた」とはっきりと答えた。
「母校で、後輩の前で仕事の話をしたことがある。先生が喜んでくれてよかった」と成長の言葉を聞かせてくれた。
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