職場環境を整え、タクシー事業における障害者雇用の拡大と継続を図る
- 事業所名
- 勝山自動車株式会社
- 所在地
- 福岡県北九州市
- 事業内容
- 一般乗用旅客自動車運送業
- 従業員数
- 163名
- うち障害者数
- 9名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 3 配車係、タクシー乗務員 内部障害 6 タクシー乗務員 知的障害 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
勝山自動車株式会社は、昭和27年創立以来、北九州市を中心にして、タクシー事業を行ってきた。現在は、6営業所で、営業車110台ほどである。配車センターは1カ所で、国内でも最新の車輛位置把握システム(GPS)と地図上の顧客の位置を電話ナンバーディスプレイ情報により検索できる配車システムを取り入れ、より迅速な配車を実現している。安全、安心をモットーにして、市民の足となり、地域で貢献できるタクシー事業をめざしている。
一般的にタクシー業界では、乗務員の勤続年数は短いと言われているが、当社は平均よりも勤続年数が特に長く、40年以上勤めている乗務員もいる。
(2)障害者雇用の経緯
障害者雇用には10年以上前から取り組んでいる。会社役員が人権問題、差別問題などに取り組んできたので、自らが進めていかなければならないという強い思いが、障害者雇用を進めることにつながった。障害者雇用においては、障害のない人と区別をしないということを基本としてきた。特に障害者雇用を進めるにあたっては、障害があっても仕事ができるように配慮してきた。配車部門においては、手の不自由な人には、足でボタンを操作できるような装置に改造するなど、環境の整備はその都度行ってきた。その他、特別な技能や知識を必要としないシステムを導入することで、さらに障害者雇用を進める結果となった。
当社は、全車両にカーナビをつけて、顧客の位置や経路等の情報がすぐに確認できるような配車システムである。一般的にタクシーの配車係は、乗務員としての経験が必要と言われている。地理や道路状況に詳しくなければ配車はできないとされてきたからだ。たしかに、無線で乗務員に指示する方法では、経験がなければ無理があるが、新システムでは、乗務員としての経験がなくても、パソコン入力ができれば配車係として仕事ができるようになっている。椅子に座ってパソコンを使っての仕事なので、そこでは障害のある人も活躍している。1名は配車センターの責任者として役割を果たしている。
このようにシステム改善をすすめてきたことで、幅広く誰にでも働ける職場が実現した。


2. 取り組みの具体的な内容
(1)個々の条件に配慮する
タクシー乗務員というと、障害のある人には無理ではないかと思われるが、そうではない。内部障害のある人も乗務員として勤務している。それは、個々の条件に配慮して勤務体制を整えているからである。透析が必要な内部障害者もいる。当然、病院通いが必要なので、病院に通いながら働ける勤務体制を組んでいる。また、長時間勤務ができない障害者もいるので、体力に合わせた勤務体制を組んでいる。これは障害者と同様に、高齢者雇用についても同じことがいえる。高齢者はどうしても体力的に無理がきかなくなる。そのため、夜勤務ではなく昼勤務中心にしたり、また、勤務日数を減らしたり、勤務時間を短くしたり、個人の希望も聞きながら、体力にあわせて仕事ができるように調整している。それは、子育てや家族の介護が必要な人にとっても同じで、個々の条件に配慮して勤務体制を整えている。タクシー乗務の仕事だからこそ、乗務員の健康と安全のために、このような配慮が必要である。このように、条件によって勤務を調整するということを行ってきたので、障害者雇用の拡大を図ることができた。
(2)労働条件
大切なことは、障害のある人と障害のない人を区別しないということであると考えている。乗務員の賃金体系は基本的に歩合制となっており、売上に応じた給与となる。短時間勤務者の場合は、フルタイム勤務者とは違う条件整備をしているが、基本的には区別はない。一人ひとりの努力と成果がそのまま給与に反映されるので、働きがいへとつながっていく。
(3)障害者に配慮した取り組み
障害者だからといって、必要以上に気を遣うことはかえってよくないと考えている。タクシーを利用されるお客様にもいろいろな人がいて、障害のある人の利用もある。そのとき、過剰に配慮することがかえって失礼になることもある。社員は誰でも公平に対応し、困ったときには手助けするようにしている。何か困ったことがあれば連絡できるように、常日頃からのコミュニケーションを大切にしている。
身体が不自由で機械操作に支障があるようなときは、システムを使いやすいものにしてきた。手の不自由な人が勤務した場合は、足で操作できるように装置を改造するなど、工夫改善の努力をしてきた。
教育研修については、障害の有無で区別はないが、未経験者、特に高齢者であっても、やる気のある人は採用し、2種免許を取得するため、しっかりした研修を行っている。3ヵ月間の見習期間を保障し、乗務員として育てていく。他社で乗務員経験がある人も、一から同様に研修を受けることになっている。
(4)取り組みのまとめ
タクシー乗務員の仕事は、人の命を預かる仕事としての自覚が大切である。それには、障害のない人・障害のある人の区別はない。勤務体制では、個々の条件に配慮しながらも、労働条件の整備や教育研修制度などで社員全体のレベルアップをはかっている。その結果として、障害のある人の受け入れ体制や、働きやすい環境の整備で雇用の定着も進んでいる。
また、事故を起こしたときの指導は厳しいが、どんな小さな事故でもその原因を全員が共有し、二度と同じ事故を起こさないように確認し合っている。
3. 取り組みの効果
(1)職場の雰囲気の改善
安全に対する意識、マナ—など向上していくための勉強会を行い、常に乗務員と共に会社も成長しているため、働きやすい職場となっている。その結果、社員の勤続年数は、業界の平均よりも長い。また、配車係の仕事では、障害のある人が責任者となって活躍しており、障害者職場定着の推進が実現できている。
(2)コミュ二ケーション技術の向上
全員がレベルアップしていくためには、情報を共有し、自分自身に役立てていくことが大切である。そのために、班ごとの会議を定期的に行っている。また、実施できない年もあったが、社内旅行も続けてきた。
さらに、役員が社員とコミュニケーションをとり、何か問題あればすぐに対処できるようにしている。事故は起きてはならないが、起きてしまったことに対して、責めるのではなく、全員で共有して、同じ事故を起こさないようにしていく。そのような確認の場を持つことがコミュニケーション技術の向上につながっているのだと考える。
(3)職場の活性化・生産性の改善
タクシーは安全が第一であるので、事故に対しては厳しい。これは障害の有無にかかわらず、全員同じである。無事故が生産性へとつながるので、安全対策、事故対策を取ることが基本であると考えている。また、誰でもがんばればそれに見合った収入を得られるということが、活性化にもつながり、障害のある人も自信へとつながっていくのではないだろうかと思われる。
4. 今後の課題と対策
タクシー乗務員は未経験者であっても、高齢者であっても、障害者であっても働くことができる職種である。また、女性も乗務員として働き、深夜の乗務も行っている。そのために、特に安全面には配慮しているが、やる気があれば老若男女問わず、誰でも挑戦できる仕事である。一般的に、障害があれば乗務員や配車係の仕事に就けないのではないかと思われがちであるが、そうではないことを、もっとわかってもらいたい。障害があっても程度や部位によっては働ける可能性のあるのがタクシー業界である。こういったことを広く知っていただき、今後も障害者の雇用をすすめていきたいと考えている。障害者だからと区別をされることのないような職場づくりが、障害者雇用をすすめていく上での基本である。
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