事業所名

社会福祉法人西九福祉会  山王福祉工場（就労継続支援A型事業所）

所在地

佐賀県佐賀市

事業内容

クリーニング・リネンサプライ業

従業員数

65名

うち障害者数

32名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	31	クリーニング作業
精神障害	1	クリーニング作業

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果
4. 今後の課題と展望

事業所外観（山王福祉工場）

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

平成12年4月、知的障害者通所授産施設「ワークス山王」は定員20名で開設された。ここでは、クリーニング、農作業等を通して「自立と参加」を基本とし、一般社会で働くことを目的として訓練が行われている。授産施設での就労訓練で成果が見られる障害者の雇用の場を確保するために、平成16年4月、知的障害者福祉工場「山王福祉工場」を定員30名で開設、平成19年11月より、障害者自立支援法に基づく「就労継続支援（A型）事業所」として「自立と自活」を目的に障害者の就労支援に取り組んでいる。

障害者の雇用は、昭和54年1月、鳥栖市に西九リネン株式会社を創業したのを機に取り組んでいる。障害者の雇用を進めていく中、生活の場としてのグループホームや福祉ホームの整備も行っており、平成12年4月には、知的障害者通所授産施設「ワークス山王」を開設している。このように、現在までの西九リネン株式会社の障害者雇用の経験を生かしながら、業務拡張の一環として、また、より多くの障害者を雇用するために福祉工場という形態をとっている。

2. 取り組みの内容

（1）募集・採用

募集は、県内ハローワーク(公共職業安定所)の一般公募の他に、同じ敷地内にある知的障害者通所授産施設「ワークス山王」での訓練効果の高い利用者や、特別支援学校、障害者施設等にて募集を行っている。福祉工場の仕事は、1日7時間15分の間、立ち仕事を行うことになるので、作業に対する集中力や継続してやれるかどうかが課題となる。このため、採用にあたっては、面接を行ったうえで、授産施設での作業体験等を実施し、その結果を踏まえて決定している。

（2）障害者の業務・職場配置

クリーニング・リネンサプライにおける障害者の作業内容は、運び込まれた洗濯物の仕分け作業、全自動で洗濯された物を自動でアイロン掛けする機械へ差し込む流し作業、クリーニング製品のたたみ作業、結束、検品等があるが、一人ひとりの作業能力や性格等考慮して職場配置が行われている。障害者だけで作業を行うと作業リズムや進み具合が遅れがちになったり、機械を扱うため危険防止の配慮が必要であったりするため、どの作業部署においても、障害のある人とない人を組み合わせた業務配置がなされている。

工場自体が知的障害者の福祉工場として設立されているため、障害程度や能力に応じた、作業部署の設定や作業内容の単純化が図られている。また、知的障害者が理解しやすいように、作業上の注意等について、絵を主体とした貼紙で表示して危険防止を図り、作業量が数字でわかる表示機を設置し、作業意欲の向上や作業量の確認が障害者自身でできるよう工夫されている。

常勤の障害のない人は全員が支援員となっており、定期的に安全・衛生委員会を開催し、作業場の安全面の点検、改善計画や障害者への支援等について検討がなされている。また、月2回、障害者と生活指導員が昼食をとりながら話し合う場がもたれており、障害者とのコミュニケーションも図られている。

洗濯物の仕分け投入作業

結束作業

3. 取り組みの効果

クリーニングの仕事は立ち仕事で、夏は暑く冬は寒い中で同じ作業を繰り返すため辛抱強さが求められるが、真面目によく頑張っている。同じ敷地内に知的障害者の通所授産施設が設置されており、作業内容も同じクリーニング作業であり、授産施設で訓練効果の高かった者が福祉工場で働くことができるシステムとなっているため、授産施設で働く者は福祉工場で働くことを目標にしている。そして、福祉工場で働く障害者は、最低賃金が保障されていることもあり、福祉工場で働くことに自信を持ち、さらに、福祉工場の中でも作業工程に難易度があるため、仕事を競って覚え、次のステップへ進みたいと切磋琢磨して仕事に取り組むという姿勢が見られるようになった。

障害者の作業能力は個人差があり、年月の経過とともにバラつきが生じてくるため、年1回の職能上の評価を行い、給与を決めていく方式が採られている。福祉工場であるため、障害者も最低賃金を下回る者は無く収入も安定しているが、少しでも高い給与査定を受けることができるよう、一生懸命働くという意識も生じてきている。

職場での人間関係にも配慮が必要なため、特に挨拶、返事等がきちんとできるよう指導がされていた。また、年間を通して、親睦旅行やレクリエーション、クリスマス会等の行事が行われており、福祉工場で働く従業者間の親睦やチームワークを高める配慮が図られている。

4. 今後の課題と展望

山王福祉工場は、障害者自立支援法に基づく障害者就労継続支援A型事業として位置づけられている。この事業は、就労移行支援事業を利用したが、企業就労に結びつかなかった者や企業に就労していたが離職等で現在雇用関係を持たない者、特別支援学校卒業者で、就職活動を行なったが企業就労に結びつかなかった者のうち、雇用契約の可能な身体・知的・精神の障害がある65歳未満の者を対象とし、生産活動やその他就労に関する知識や能力の向上を図ることを目的としている。企業就労に結びつかなかった障害者が福祉工場で就労継続支援を受けることにより、工場内で職員と障害者の区別がつかないほどスムーズに作業工程をこなして働いている姿は、次のステップとして一般企業就労が可能な障害者の出現も期待される状況であると思われた。

現在、20歳から58歳までの32名の障害者が働いているが、福祉工場の近隣に住まいの場としての福祉ホームやグループホームが設置されており、知的障害者の就労支援と生活の場の確保をトータルに提供する体制がとられているため、障害者が安心して地域生活を営むことが可能となっている。しかし、今後は高齢になり定年等で退職した場合の生活の場の確保や、作業能力が低下してきた場合の日中活動の場をどう整えて行くのかが、課題として残されており、福祉行政機関や障害者相談支援事業所、福祉サービス提供事業所等との連携を取りながら対応して行くことが必要である。

最近は経済状況の悪化に伴い、クリーニング受注件数も減少してきており、厳しい状況の中で福祉工場の経営努力がなされているが、障害者の就労支援としての福祉工場の果たす役割は重要であり今、後の更なる発展が期待される。