事業所名

株式会社アパレルオオタ

所在地

長崎県南島原市

事業内容

衣服・その他の繊維製品製造業

従業員数

80名

うち障害者数

9名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害	2	衣服製造工
知的障害	7	衣服製造補助（アイロン、仕上げ）
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経過及び想い
3. 雇用への不安とその対策
4. 雇用上の配慮

事業所外観

1. 事業所の概要

当社は昭和61年10月創業、20人の社員でスタートし昭和62年に法人化。平成17年12月には、分散していた工場を一つに集約化し、現在は約120名の社員数で、主に婦人服、子供服を生産。裁断から縫製、仕上げに至る全ての作業を一貫して行っている。

東京や大阪の有名アパレルメーカーから加工委託を受けている。各取引先の要望に応えるために、品質、納期を最優先し、近年では、多品種小ロット傾向にあるが、日々努力している。

事業所の特色としてはつぎのとおり。

（イ）ベビー服・子供服部門では  新生児～14歳迄の服  全て生産が可能。

（ロ）企画・提案をスムーズにするため、サンプル班にて試作品を作り、展示会サンプル
提案サンプル作成等、生地や製品の研究を行い、時間を短縮化し、完成度の高い製品を提供している。

（ハ）日本製にこだわり、安心・安全な製品を生産。

（ニ）特殊な機械の導入により、生地の裁断法にこだわり、肌が弱い方にも安心して着用していただける製品を開発。

（ホ）従業員は全て地元、南島原市内の住民である。

2. 障害者雇用の経過及び想い

10年前、当社に長年勤めていた従業員が、内臓疾患で身体障害者の認定を受けた。その後も、闘病しながら会社のために貢献してくれた事が、障害者雇用を始めたきっかけとなった。

もともと、地元の知的障害者施設に簡単な業務の一部（仕上げ等）を外注していたことから、毎月1人～2人の障害者の方を体験実習生として受け入れてきた。

平成17年の新社屋建築創業と同時に、体験実習生を中心とした知的障害者を公共職業安定所（ハローワーク）の紹介で6名採用した。作業内容は完成した製品のアイロン作業及び包装が主である。アイロン作業に関しては安全性に配慮したアイロン台を特注する等、作業環境の整備を行った。高齢・障害・求職者雇用支援機構の助成金を活用して、今後も雇用を拡大するために作業場を新設した。障害者全体でアイロン、仕上げ作業を行っている。現在、雇用障害者8名（うち重度7名）に作業指導者2名が付いて、作業に従事している。

障害者と共に作業し、得意な事と苦手な事、それぞれの体力・特性などを把握した上で、その状況に応じた役割分担とし、褒めることで自信に繋げて、勤労意欲を向上させている。

最初は、作業がスローペースで粘り強い指導を必要とするが、着実に業務量を上げている。また、自分自身での判断が苦手な事や、抽象的な表現の理解が困難であるため、具体的な説明と作業手本を見せ、判断基準を明確にすることで確実な作業が可能になる。重度障害者は、下札作り（製品タグや注意下札をロックスに通す）や、それらを製品に取り付ける等の、比較的単調な作業を主としている。

文字の識別が苦手なため、小箱に下札を分けて入れ、手順カードを作成し渡している。自己表現が苦手で、出来ない事にも「はい」と返事をしてしまう事や、体調不良を訴えられない時もあるので、少しでも気になれば声を掛けコミュニケーションを図っている。「どのようにして欲しいか？」と、問いかけるなど、本人との会話を通して体調管理やメンタルケアに努めている。

もうひとつは、業務に持続して集中できるよう、休憩時間を設けている。

アイロン作業の工夫として、寸法に注意することが必要なため、アイロン台に製品のサイズをカラーテープで印をつけた。これにより作業の流れがスムーズになった。

作業の様子

また、製品のたたみ作業（製品に応じ、サイズ別の台紙を使い形状に注意してたたむもの）では、色分けした目盛の付いたプラスチックの台紙を用いて、視覚的に理解しやすく工夫し、時には、イラストを描いて、形状の注意点を伝えている。

3. 雇用への不安とその対策

採用になり当初は不安もあった。まず、周囲の理解が得られるのか？また、様々な問題が起こった時に、どう対応すれば良いのか？障害の程度は、軽度から重度とあり、同じような配慮で足りるのか？幸運にも近くに障害者施設があったので、様々な知識を享受してもらった。その施設と連携し、障害者の悩み、不安等を考慮して本人の適性、その日の体調などを把握し、作業内容に無理がないよう、心のケアにも十分に配慮するよう心がけている。通勤寮を拠点とした毎日の生活をする中で、生活面の悩みや、人間関係の悩み、自分自身の想いが伝わらないなど、悩みは様々である。それに加えて、自立に向けての仕事がプラスされ、ストレスは増大すると思われる。

生活面に対しては、生活を共にしている、通勤寮や障害者施設の指導員にまず相談をし、今後の対応を一緒に考えるようにしている。

仕事に対する不安や不満があれば、まず、話を聞き、最善の方法を探す。しかし、毎日の作業量が同じとは限らず、応用が困難な時もある。その変化にストレスを感じ、疲れやすくなることも起り得るが、コミュニケーションや会話を通じて軽減が可能である。原因が解かれば、作業工程での手順も容易に変更可能であり、その時こそ、指導員がキーパーソンとなるのである。

平成19年、雇用支援協会の助言により作業施設の増築を行い、現在8名の障害者が楽しく明るく、障害のない人にも負けない競争心で作業をしている。

今後も、一人一人の個性を重視し、また1ランク上の仕事を目指すため、反物の延反（自動延反機）を習得中である。

反物延反機

作業施設を建設

4. 雇用上の配慮

（1）毎日、午前10時と午後3時に休憩時間を取り、作業能率を上げている。

（2）本人たちが住んでいる通勤寮の指導員が時々来社し、障害者との対話などを通じて、仕事が苦痛にならないように指導してもらう。

（3）当社の指導員とも意見交換をしながら、作業計画を立てている。

（4）通勤は、専用マイクロバスで、会社と通勤寮間を送迎をしている。

（5）イベントは全員参加とし、定着しやすいように日々努力している。

（6）障害者作業施設があるので、最大15人位までは作業が出来る十分なスペースを備え、今後も福祉施設からの受け入れを検討している。

（7）個性豊かな人材がいるので、今後は別の作業分野を視野に入れ、積極的に採用を促して、一層の増員を考えている。

指示された事をきちんと守るよう指導を続け、適材適所を見極めれば、障害のない人に劣らない働きが充分期待できる。

昼食時間：休憩室にみんな集まって楽しい話に花が咲く。時々は社長も同席して話の輪に入り、困ったことなど聞き出している