企業内における障害者雇用の拠点としての取り組み
- 事業所名
- 二幸産業株式会社九州支社佐世保営業所
- 所在地
- 長崎県佐世保市
- 事業内容
- 総合ビルメンテナンス業
- 従業員数
- 117名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 5 清掃作業 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要
(1)佐世保営業所の状況
当事業所は、二幸産業株式会社の佐世保営業所として下記により開設された。
①所在地 長崎県佐世保市
②開設 平成9年10月
③事業内容 主として大型商業施設等の清掃業務
テリトリーは長崎・熊本の両県、営業所は九州内に福岡市・佐世保市の2カ所あり、今後順次拡張される見込みである。
また、佐世保市内に点在する職場への勤務については全て直行直帰とし、1週の労働時間40時間内の1カ月単位変形労働時間を採用している。
現在当事業所が雇用している従業員数、ならびに平均年齢は下表の通りで、比較的高年齢者が多く、「杖をついても出勤できるなら仕事を続けて良い」という営業所長の考えがあり、従って平均年齢も高くなっている。
区分 | 男 | 女 | 合計(平均) |
---|---|---|---|
人員
|
41名 | 76名 | 117名 |
平均年齢
|
45.4歳 | 54.4歳 | 51.2歳 |
(2)本社の状況
二幸産業株式会社が掲げる事業内容(営業項目)は、①ビルのメンテナンスを含めた施設や設備等の総合的な運営・管理事業、②廃棄物処理プラント機器の開発・販売等環境関連事業、③ホテルの運営・管理事業、④グループホームの運営やデイサービス等の介護事業など、4つの部門を経営の柱に全国展開を行っている。これまでの実績や規模等の面から観て、まさにビルメンテナンス分野のリーディングカンパニーと言える企業である。
企業全体の雇用従業員数は、正社員が744名、パート社員が3,235名、合わせて3,979名で、雇用率の算定障害者数は12.5名、それ以外の障害者4名となっている。
また、年商は約120億円(平成18年3月で)、関連会社として富士警備保障株式会社など4社を有している。
(3)経営方針
当社は、昭和36年11月に設立して以来、これまで「お客様第一主義」を経営理念に、一貫して総合ビルメンテナンス分野でのリーディングカンパニーを目指し、徹底したプロフェッショナルなサービスを展開して来た。結果、多くの顧客の高い信頼を得るところとなり、今日の業容拡大をみるに至り、2011年には創業50周年を迎えることになる。
企業としてはこれを機に前述の4部門の事業のさらなる充実・強化に努める一方、企業の社会的責任として、障害者の積極的な雇用および自立支援に積極的に取り組むことにしている。
2. 障害者雇用の経緯、背景
(1)障害者雇い入れの経緯・背景
当社の障害者雇用は、企業としての取組みの早い段階から、障害者の雇用推進を求められており、平成16年に知的障害者の職業能力開発を行う訓練施設から相談があったことに始まる。その後、営業所へ本社人事部長が来所されたことにあわせ、社団法人長崎県雇用支援協会担当者から障害者雇用についての支援内容等の説明を受け、更に理解を進めていった。
さて、雇用を開始したものの、初めてのことであり、生活、職業全般に渡っての指導等に不安があり、まさに石橋を叩いて渡る様なところから出発した。本人が仕事に慣れるまでには思わぬ日時を要したが、時間の経過とともに指導者も本人も理解し合うことが出来るようになった。そうしている内、次第に仕事や職場の人間関係にも慣れ、いつの間にか他の従業員に劣らない作業内容が出来るようになった。そのことを企業として深く受けとめ、パート社員から正社員と身分変更し、以来今日まで、新しい職場を開設した場合、あるいは欠員が出た場合等、順次適任者の雇い入れを行いながら、当初は、企業の法定雇用率の達成に寄与できればとの思いから始めた取組みであるが、結果として、当営業所の障害者雇用率は6.54%という高い数値となった。
(2)障害者が従事する業務と取り組みの概要
営業所の業務内容は、日用食品や生活用品の販売が主目的の大型商用施設(量販店や生鮮食品の専門店など)の清掃や廃棄物処理作業がメインとなっており、障害者が従事する仕事内容は殆どが清掃業務である。
働く環境は、店舗規模の大きい小さい、広い狭いの差はあるものの、業務内容が多岐にわたるとか高度な職務知識や特殊な技術・技能等を必要とするものではなく、予め決められた業務を所定の時間内にキチンと終ることが必要となる。
知的障害者の特性として、単調な反復作業を飽きることなくこつこつと続ける力、指導が行き届けば、見られていなくても真面目に働く力が、清掃業務に十分発揮されている。そして、働くことの喜びや達成感、さらに仕事を通じた生甲斐を感じてもらえるよう、良くできた場合は、みんなの前で褒めるとか、頼りにしていることを感じとれるように気を配っている。これまでのところ1名の解雇者も出していないことから、その目的は達せられたものと考えている。


(3)活用したツール
知的障害者の内、重度障害者については、業務に入るところから業務手順の指導、業務内容の確認等のため目配りをする者を配置する必要があり、社団法人長崎県雇用支援協会の説明を受け、業務遂行援助者の配置助成金を活用。
3. 取り組みの内容、効果
(1)取り組みの概要
当社の業務内容が単純作業であるものの、時と場合によって顧客の商用施設内での「バーゲン・セール」などの催しものが頻繁に開催され、一挙に来客が押し寄せ、施設内が混雑することもしばしばある。その様な中で作業を行わなければならないため、万が一にも顧客にとって大切な来客に失礼な行為など迷惑をかけることがあっては、顧客に多大の損害を与えることになり兼ねないことから、業務遂行援助者の指導を徹底するようにしている。採用初期段階からジョブ・コーチ支援は利用しなかったものの、先輩及び同僚によるマン・ツー・マン方式で徹底指導したこともあって、比較的短期間で全ての業務を修得することが出来た。なお、そのために作業手順を細かく記述した「作業マニュアル」を作成し、本人が携行することで作業手順を確認する、また「チェック・カード」を作成し、「作業手順に漏れた項目は無いか」など、自ら進んで自発的にチェックをするなど、障害者自身の自助努力を促したことが、結果として障害者の働く意欲を高め、ひいては職場定着率を高めることに繋がったものと考えている。

(2)効果
雇用する障害者が多くなるに従い、従業員間で業務遂行援助者以外のチームを形成するなど、社員・パートのみんなが注意を払うようになり、営業所全体の雰囲気が良くなった。これら全てを含め、各支社で、各営業所で雇用を考える効果的なモデル材料となった。
4. 今後の課題、展望等
(1)担当業務の質を高め、仕事の幅を広げる
現在、最も長く勤務している障害者は営業所設立間近からの雇用で10年近くを経過する。一般的には熟練者・ベテランの領域に入るが、仕事の性格上、担当業務は入社以来、殆ど変わらない。一般的には、昇進等、もっと高度な作業に就かせるとかが、社会通念的な考え方であり、人事処遇のあり方である。その様な観点から、ある程度現在担当している業務に自信が付いた段階から少しづつ、仕事の幅を広げる、あるいは質を高めて、所謂「多能工化」に向けた取り組みを試行的に進めている。
ただし、この問題は本人の持つ能力の限界もあり、専門家の意見や助言を得ながら、無理強いすることなく進めたいと考えているところである。あくまでも本人の意向、希望に添いたいと思っている。
(2)職務再設計の導入を考えたい
当営業所の従業員の労務構成をみると、平成10年以降早い時期に平均年齢が51歳と比較的高い年齢を示しており、仕事の性質上とはいえ、今後、体力的な低下や成人病の心配も高くなり、労働生産性が低下して来ることが懸念されるところである。このため、若干早めの対応として、作業能率の低下を出来るだけ少ない投資でカバー出来る「職務再設計」による職場改善を導入する事を検討しているところである。
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