事業所名

株式会社ハツトリー

所在地

宮崎県宮崎市

事業内容

スーパーマーケット

従業員数

539名

うち障害者数

8名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	1	惣菜部（商品加工・陳列）
聴覚障害	0
肢体不自由	3	食品部（品出し・発注）、惣菜部・豆腐部（商品加工・陳列）
内部障害	1	畜産部（商品加工・陳列）
知的障害	3	食品部（品出し・発注）、農産部・水産部（商品加工・陳列）
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 障害者雇用の取り組み
3. 取り組みの効果
4. 障害者雇用の展望

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

株式会社ハツトリーは、宮崎県の県庁所在地宮崎市に本部を置きスーパーマーケットを運営する会社である。現在までの経緯は、昭和58年に宮崎市に「有限会社ハツトリー」として会社を設立、「ハツトリー食品館」霧島店と大塚店をオープンした。その後、平成元年に本部を移転し、平成3年に「株式会社ハツトリー」に組織変更した。現在は宮崎市内に従来のスーパーマーケットである「ハツトリー食品館」1店舗、新しいタイプのスーパーマーケットを目指している「フーデリー」5店舗、及び生鮮ディスカウントの「鮮ど市場」を宮崎市と宮崎県児湯郡にそれぞれ1店舗の計8店舗を運営している。そのうち、「フーデリー」に関しては新しいタイプのスーパーマーケットとして、食の安心・安全・おいしさ・楽しさ等に特にこだわった店舗となっている。

また、株式会社ハツトリーは、その経営理念を、「企業を取り巻く全ての人々に幸せをもたらすことのできる事業活動を創造していきます」としている。

会社が障害者雇用を始めた時、障害者の雇用を推進することとなった要因が、社会的貢献や障害者の法定雇用率の遵守だったが、障害者の雇用に関しては不安の声があった。しかし、実際に雇用したところ、まじめに仕事に取り組む姿勢、単純な作業でも黙々とこなす態度などその特性を業務に生かせることが分かった。そのため、現在では業務にあった特性の障害者を雇用することで必要な人員確保が可能となり、法定雇用率を超えた雇用の確保ができている。

2. 障害者雇用の取り組み

（1）障害者の採用

障害者の雇用経路としては、一般のパートナー（6ヶ月更新のパートタイマー）・アルバイトの募集に際して、本人と支援団体が申し込んで採用する場合（就業経験がある中途採用の場合が多い）と特別支援学校、障害者職業センター、雇用開発協会等からの推薦を受けて職場実習を経て採用する場合（新卒者の採用の場合が多い）がある。

一般の募集に対する障害者の採用は、一般と同じ採用手続きで採用を行っているが、採用するときには本人及び家族と面談を行った上で、必要に応じて研修期間を設けたり、ジョブコーチのサポートを受けたりするなどの方法を取っている。

特別支援学校等からの推薦があった障害者については、研修により障害者の性格、適性、体力等に応じた部門、勤務時間等を選定しスムーズに就業できるように配慮している。その方法は、次の通りである。

最初に、特別支援学校等から推薦をもらった翌年の就職希望者と保護者及び先生と一緒に面談を行い、障害者の希望する店舗・部門と保護者・先生に普段の様子、体調、特性を聞きながら研修先の店舗・部門を決定する。部門の決定に関しては、研修の受け入れ経験のある店舗又は部門とし、研修は通常3回程度行っている。また、勤務時間、出勤時刻については、家庭の事情及び障害者が利用する交通機関（バス・電車等）の時刻、障害者の体力などを考慮して決定している。

第1回目の研修は、1週間程度の期間（繁忙日である土、日、祝祭日は除く）で勤務時間は短めに設定し、障害者に配属される予定の職場にどのような仕事があるかを知ってもらい、それらの仕事の内、どのような仕事をすることができるのかを実際に作業をさせて確認して、できる仕事の実施方法を覚えてもらうことを目的とする。研修中は、保護者・先生と連絡を取りながら、日々の状況について確認が出来るようにしている。

第2回目の研修は、第1回目の研修の結果をみて、通常の勤務が出来そうであれば8時間勤務で10日程度（繁忙日を含む）、3勤1休というような定期的なスケジュールを設定し実施する。仕事は入社後に任す予定の仕事を分担し、習得させる。この段階においては、まだ出来るだけ障害者に負荷をかけないように配慮して研修を行っている。その上で、配属部門での勤務状況を確認して部門変更等の必要性について確認を行い、必要に応じて部門変更等を行う。

第3回目の研修は、ほとんど実際の業務に即した形で2週間程度勤務させる。障害者に2勤1休・3勤1休のような不規則な勤務をする中で本人の勤務状況や仕事にストレスを受けていないか等を確認している。

（2）障害者の雇用条件

基本的には一般の従業員と同等の雇用条件となっている。退職金は3年以上勤務したものに支給され、育児・介護休業の取得もできる。定年は60歳となっているが延長により65歳までの雇用期間が可能となっている。

3. 取り組みの効果

惣菜部で働く視覚障害者のA氏は、白い物の上で作業することが困難なため、色つきのまな板を使って作業をするなどの工夫を行い、本人も大変喜んでいる。水産部で働く知的障害者のB氏は、独り言を言ったり、突発的なスケジュールの変更に不安を感じて変更内容を繰り返し聞くなどの確認行為をしてくるため、指示や注意の仕方に気をつけるなどの配慮をしており、現在のところ、本人も安心して仕事を行っている。食品部で働く知的障害者のC氏は入社後7年になるが、人と会話するのが苦手な反面、決められた仕事をこつこつとこなし、お菓子の担当として発注業務も行っており、責任をもって取り組んでいる様子がうかがえる。

また、基本的にはパートナー（6ヶ月更新のパートタイマー）としての勤務が主だが、豆腐部で働く肢体障害者のD氏は、豆腐部の専門職（準社員）として入社し、入社後7年の現在は豆腐部のチーフ（社員）として働く傍ら、趣味の水泳で全国障害者スポーツ大会に出場し第1位の成績をあげたことがあり、同様に仕事に対しても熱意が感じられる。

B氏の作業場

D氏の作業場

4. 障害者雇用の展望

障害者雇用の際に行う保護者等との面談の中で、まず安心して働ける会社で働かせたいという希望と同時に、将来自立できるようにしたいという希望をよく耳にする。会社は、比較的軽度の障害者を雇用しているが、雇用の機会の確保と同時に、今後の生活設計についてもある程度の配慮が必要となってくると考えている。そのため、雇用条件もほとんど障害のない従業員と同じにしており、賃金についてのみ若干の格差を設けている。

障害のない従業員は、障害のある従業員に対して障害があることを意識しながらも、同じようにコミュニケーションを取ることができている。しかし、知的障害のある従業員と接する際に、障害が軽度であるために、働いている内に障害に配慮した対応を意識せずに接してしまい、ストレスを与えたり、仕事を離れた従業員同士の付き合いの中で、障害のある従業員が人間関係等のトラブルに巻き込まれたりすることがあった。幸い、本人や家族から連絡があり対処することができたので大事には至らなかった。障害のない従業員は、障害のある従業員に対して他の従業員と同様に普段どおりの接し方をしているのだが、普段どおりのことであってもその従業員にとってはストレスとなることを実際に経験してきた。

どこまで会社が障害のある従業員の生活に関わるかという問題はあるものの、障害者の雇用人数が増えるに連れて、障害のある従業員が同僚や会社に何でも話せて相談ができる職場の雰囲気作りと、家族がいつでも会社に相談できるようにすることがさらに必要であり、そのためには障害者生活相談員が中心となり組織的に障害者のサポート体制を整えていきたいと考えている。