事業所名

東郷メディキット株式会社

所在地

宮崎県日向市

事業内容

医療機器の開発及び製造

従業員数

744名

うち障害者数

15名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	2	カテーテル課（製造）、シース課（オペレーター）
肢体不自由	3	部品課（製造）、シース課（製造）、押出課（製造）
内部障害	1	シース課（製造）
知的障害	9	倉庫課7名（出荷・検品・梱包）、成形課（検品）、総務課（配送補助）
精神障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果
4. 最後に

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所概要

1973（昭和48）年6月に日向市に人工透析用留置針の製造を目的としてメディキット株式会社が設立された。その後、昭和59年9月に製造と販売を分離し、製造会社として東郷メディキット株式会社と社名変更し、平成14年10月にメディキット株式会社の100％子会社化となった。平成17年6月に親会社であるメディキット株式会社の株式上場と同時期にベトナム・ハイフォン市に子会社を設立し、平成20年1月に日向市に日向第二工場を落成。設立以来、カテーテルの専門メーカーとして独創的な製品を次々と開発しており、全国の医療現場から高い評価と信頼を受けている。継ぎ目のない人工透析用一体成形カテーテル製品を核に、海外市場にも視線を向けており、アメリカ、フランス、ドイツ、東南アジア、中南米にも幅広く輸出され、納入実績はすでに世界20カ国以上となっている。その独創技術は国内にとどまらず世界的な評価を獲得するまでになっている。

会社の行動指針は、次の通りである。

①  創造  ：ものまねであれば、誰でもできる

②  迅速  ：時間をかければ、誰でもできる

③  確実  ：間違いであれば、誰でもできる

この基本理念の下、全社員一丸となって邁進している。

現在の組織の構成は、常用雇用者744名、そのうち障害者15名が雇用され、雇用率は2．82％となっている。

（2）障害者雇用の経緯

企業としての法定雇用率に対する意識が第一義であった。社会的責任を考えると同時に、障害者にどの程度の能力があるのか、またどのように教育しどのような配慮が必要なのか分からなかったということも事実である。

障害者雇用を積極的に取り組み始めた経緯であるが、平成15年1月の話になる。宮崎県の事業で日向市に配置されていた障害者雇用コーディネーターより障害者の職場開拓依頼を受けたことがきっかけとなり、聴覚障害者を雇用したのが障害者雇用の始まりであった。以来、障害者雇用コーディネーターとの信頼関係を築き、多くの障害者の雇用を行ってきた。平成21年4月からは就業・生活支援センターが開設され、連携を取りながら新規雇用や定着指導を行っている。

2. 取り組みの内容

障害者に対する取り組みについては、トライアル雇用、必要に応じてジョブコーチ支援を行い、その後の常用雇用に移行している。肢体不自由の障害者を雇用した際に、洋式トイレの設置が無かったため、宮崎県雇用開発協会から助成金の案内を受け改修を行った。他にも、重度の知的障害者を雇用した際には、障害者介助等助成金（業務遂行援助者の配置助成金）を活用している。また、作業内容や工程の検討等について随時意見を聴きながら対応する体制をとっている。聴覚障害者に対しては、筆談や読話しやすいようにゆっくり話をするという対応を行っている。その他のことについては、他の従業員と区別することなく、1人の従業員として捉えている。

当社では、すべての従業員に対して人事考課制度が採られており、障害のある従業員も例外ではない。出勤率や業務に取り組む姿勢がその対象となっている。多くの信頼を寄せられている障害のある従業員は高い評価を受け、賃金の増加に繋がっている。また、コスト削減に対する取り組みとして、不良品をより少なくする取り組みを行っており、実績を残した部署については、報奨金として還元している。職員一人一人の意識改革、能力向上、また組織の活性化に繋がると考える取り組みである。

日頃からジョブコーチとそれぞれの所属長は密に連絡を取り、どのような問題に対しても早めのフォローができるようにしている。指導期間後も定期的な定着訪問を受けている。

3. 取り組みの効果

実際に倉庫課で働いているAさん（知的障害者）に話を訊いてみた。

大阪から転居してきて、就職活動を行っていた。生活相談事業所を通じて障害者雇用コーディネーターに相談し、ハローワーク(公共職業安定所)からの紹介を受け当社に入社することができた。

これまでも製造工場で就労してきたので、製造関係の仕事ができるようになって少し安心できた。トライアル雇用とジョブコーチ支援を利用した。当初、友達もいなかったのでジョブコーチや生活相談事業所の相談員には仕事のこと、生活のこと、いろいろなことを相談した。気軽に相談できて大変有難い存在だった。お陰ですぐに、職場の方々とコミュニケーションを深めることができた。当初は慣れない地での生活だったが、プライベートでも仲良くしてもらい、楽しい毎日を過ごすことができた。

入社当初は、段ボールの組み立て作業から取り組んだ。その後は、できる仕事から少しずつ教えてもらい、現在は完成品の検査・伝票と製品のチェック・梱包を担当している。他の係が忙しい時には応援に行くこともある。

当社は、福利厚生も充実しており、安心して業務に取り組むことができている。これからも健康を維持して、この会社で継続して働いていきたいと、話している。

伝票と製品のチェック

所属の係長からは、「彼は、他の従業員より早く出勤し、作業の準備を行うなど仕事に対する前向きな姿勢が見受けられる。挨拶や身だしなみも身に付いており、欠勤なく勤務態度も良好で、同僚からも高い評価を得ている。まじめで、指示に対して正確な対応が取れ、丁寧な作業をしてくれるので安心して業務を任せることができ、大変感謝している。今後も長期間、継続して働いてくれることを期待している。」との高い評価である。

知的障害者の雇用にあたっては、本人との信頼関係を築くことに留意し、作業状況に合わせて本人ができる範囲を見定めることが必要である。そして、少しずつ仕事を教えながら、自信がもてるよう励まし、仕事の幅を広げていけるよう配慮している。今後もジョブコーチや就業・生活支援センターとの連絡を密にし、問題の早期発見、早期解決を心がけたいと話している。

作業風景

4. 最後に

東郷メディキット株式会社では、今後もできる範囲で、障害者雇用を促進していきたいと考えている。平成20年度には、障害者雇用優良企業として宮崎県雇用開発協会長の表彰も受けていることから、会社組織全体が障害者に対する理解が深く、障害者にとって働きやすい職場を作っているという印象である。障害のある従業員が社内で自然に受け入れられており、皆が明るい表情で意欲的に仕事に取り組んでいる姿が印象的であった。

障害者雇用の管理責任者が熱心であることや、障害者の日々の前向きな努力、会社全体の職場環境の改善に対する取り組みが、障害者雇用の高い定着率に繋がっていると感じた。