障害者が貢献する介護の現場
- 事業所名
- 社会福祉法人以和貴会 特別養護老人ホーム朝日の家
- 所在地
- 沖縄県南城市
- 事業内容
- 社会福祉事業、介護保険事業、南城市委託事業
- 従業員数
- 115名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 介護補助 内部障害 1 看護業務 知的障害 2 用務・介護補助 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要
(1)事業の特徴
当法人は、糸満市の医療法人以和貴会理事長名嘉勝男氏が、昭和61年1月、社会福祉法人の認可を得、今後の高齢社会を見据えて、高齢者の医療、保健福祉の一助を担う者としての使命感から「高齢者の方々が、健やかで豊かな老後を迎えられる施設を整備したい」との熱い思いに、地域をはじめ、関係各位の支援、協力の下、昭和61年9月に特別養護老人ホーム朝日の家(以下「朝日の家」という。)を開所した。
事業内容は次のとおりである。
介護保険事業
・特別養護老人ホーム朝日の家(介護老人福祉施設事業)
・短期入所生活介護事業所朝日の家(短期入所生活介護事業)
・短期入所生活介護事業所朝日の家(介護予防短期入所生活介護事業)
・老人デイサービスセンター朝日(通所介護事業)
・老人デイサービスセンター朝日(介護予防通所介護事業)
・居宅介護支援朝日(居宅介護支援事業)
南城市委託事業
・南城市いきいきデイサービス
(2)経営方針
老人福祉法の基本理念に基づき、高齢者自らの意思によって、自立した質の高い生活を送ることができるよう支援する。
加えて地域及び福祉機関との連携を行い、福祉サービスの向上に努める。
・基本方針
①利用者第一主義
利用者へ心のこもった福祉サービスと、そして満足と安心を提供することを最も大切な使命とする。
②地域への貢献
地域交流及び周囲の福祉機関との連携を行い、地域福祉の推進を支援する。
③志を実現する職場環境
職員1人ひとりの個性と能力を尊重し、持てる才能を育成し、最大限に伸ばすことができる「喜ばれる」職場環境を育むよう努める。
(3)障害者雇用の理念
「あなたの幸せが、私たちの幸せです。」をモットーに、社会福祉・介護保険事業を行っている当施設においては、言わずもがなにノーマライゼーションの精神が息づいている。
障害者雇用を進めるに当り、基本的な理念としては、ノーマライゼーションの精神に則り、利用者と職員が喜びも悲しみも幸せも共に分かちあい、障害のある人もない人も共に支えあって働ける職場環境を整えることである。
2. 障害者雇用の経緯
障害者雇用をすすめる背景には、法定障害者雇用率が未達成という課題があった。
障害者雇用は、これまで何度か試みたが、様々な事情があり長くは続かなかった。求人に取り組んでも、当方が希望する人材の紹介は得られず、断念せざるを得なかった。その結果、障害者雇用には少し消極的になっていた。今回も法定雇用率達成を目指して当方が希望する人材(身体障害者に限定、ケアマネージャー補助ができる人)を求めて求人を申し込んだが、該当者なしであった。かかる状況の中、障害者合同面接会に参加した。ところが、ここでも求職者は知的と精神の障害者のみで当方が希望する身体障害の人はいなかった。そこで、やむを得ず用務ができる人であればということで、知的障害者2人を平成20年10月に雇用することとした。結果は、彼等に合う適切な仕事を検討し、ゆっくり教育訓練など職場適応に努めたところ、職員や利用者ともなじみ、よく働いている。雇用して本当によかった。
平成21年4月には、介護専門学校から紹介を受け、下肢に障害ある人を1人雇用することができた。当施設は要介護高齢者の施設であるため、既にバリアーフリー対応は完備されており、就労には何等支障はなく、ハード面の改修は特に必要はなかった。
3. 取り組みの内容、効果
(1)雇用に向けての取り組み
障害者雇用の取り組みとしては、先ずハローワーク(公共職業安定所)に求人申し込みを行った。しかし、当方の求める人材の紹介は得られず、なかなか障害者雇用がすすまないことから、障害者合同面接会に参加した。身体障害者でパソコン入力業務ができる人を希望したが、当方が求める人材には出会えず、面接できたのは知的と精神の障害者だけだった。その中から知的障害者2人を雇用した。その後、介護専門学校から身体障害者(下肢障害)の紹介があり、介護員として1人雇用した。
また、4年前に雇用した人が、持病(糖尿病)が悪化し休職、復職時には透析を行う重度の内部障害者となった。労働条件、担当部署等を考慮し、調整の上、平成21年8月からは、障害者として、継続雇用となった。
以上により、現在は表記のとおり障害者雇用率(3.48%)を達成することができた。
(2)障害者の従事業務
・内部障害者Tさん(33才)は、准看護師の有資格者で、透析を受ける以前は、入所部門にて看護業務に従事していたが、現在は夜勤業務のない通所介護(デイサービス)で看護業務に従事している。
コメント:看護業務は以前と変らない。健康の面では、透析後は目(左)もよく見えるようになった。体調もよくなり、就業に効果が現れた。

知的障害者Kさん(37才)は、「朝日の家」の入所部門にて介護補助としてベッドメイキング、清掃、利用者の誘導、食事(下膳)の手伝い等に従事している。勤務時間は、当初4時間だったが、少しずつ職場に慣れ担当業務にも積極的に取り組めるようになると、昼食を職員と一緒にしたいとの希望があり、勤務時間を徐々に伸ばして現在は6時間である。本人は8時間勤務を要望しているが、勤怠状況や業務量等を勘案しながら、検討していきたい。通勤は、自宅から1人で徒歩通勤である。
コメント:今まで転職したなかで、この職場が一番合っている。ずっと「朝日の家」で働くことを望んでいる。

・身体障害者Yさん(24才)は、「朝日の家」入所部門にて介護員としてシフトのフルタイム勤務で従事している。仕事はマイペースではあるが、良き先輩たちに支えられながら頑張っている。

・知的障害者Eさん(28才)は、洗濯場にて、洗濯物を利用者ごとに分類しながらたたむ作業や、利用者の食後のエプロンを洗濯する下処理の業務に4時間勤務で従事している。通勤は自宅から母親が送迎している。当初は甘えがあった。甘やかさずに教えたり、叱ったりのメリハリをもって接しているうちにだんだん改善されてきた。自分の言いたいことにこだわる面があり、コミュニケーションが難しい部分があるが、用務(リネン)のリーダー、本人、母親とよく相談しながらすすめている。障害者就業・生活支援センターのジョブコーチは当初だけで現在は入ることはない。

(3)助成金等の活用
・障害者用の合同企業説明会をきかっけに、トライアル雇用した2人については、ハローワークの指導を受けながらトライアル雇用奨励金、特定求職者雇用開発助成金を活用した。また、業務遂行援助者の配置助成金も活用し、障害者雇用推進に役立てることができた。
(4)取り組みの効果
・法定雇用率未達成との指摘を受け、障害者雇用を積極的に取り組み、現在は法定雇用率1.8%を超えて3.47%まで達成できた。
・障害のある職員が各々のポジションで、しっかり頑張っていることから、他の専門職の職員にゆとりができ利用者の処遇対応が十分にできるようになった。
・現場の慌しさがなくなり、業務にゆとりがもてた。
・職員は余裕が出た分、自ら仕事を探して積極的に取り組むようになった。
4. まとめ
法定雇用率達成を目指して取り組んできたことから見えてきた事は、
・障害者に任せられる業務はもっとあると思う。
・各自に合う業務があれば取り入れていきたい。
・彼らが、働ける自分であることに気づき、喜びや生きがいを感じられるように、チームで一体となって働ける職場を提供していきたい。
・これこそが真に「あなたの幸せが私たちの幸せです」の実践だということが分かった。
今後とも職種に合う人がいたらもっと増員していき、利用者の処遇の向上を図ると共に、他の職員の業務負担が軽減されることにより、ゆとりの中からいろいろなアイデアが生まれ、結果的には施設全体の業務が改善され、利用者の処遇の向上に繋がっていけば幸いである。
特定社会保険労務士 安里 恵子
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