支援機関と職員のチームワークで障害者をサポート
~障害に応じて能力を発揮できる職場作りへの取り組み~
- 事業所名
- 医療法人社団三草会 クラーク病院
- 所在地
- 北海道札幌市
- 事業内容
- 整形外科、リハビリテーション科等8科を持つ病院
- 従業員数
- 277名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 手術器具等の洗浄、滅菌等の作業及びメッセンジャー 肢体不自由 3 総務課管財業務1名、ナースステーション看護助手2名 内部障害 知的障害 1 ナースステーション看護助手1名 精神障害 2 総務課事務1名、札幌市東区第二地区包括支援センター事務1名 - 目次

- ホームページアドレス
- http://www.sansoukai.or.jp/
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯等
(1)沿革
当病院は、地域に密着した整形外科の専門病院として昭和61年2月に開院した。その後平成5年3月、医療法人社団三草会の設立認可を得て、同年5月医療法人社団三草会クラーク病院となり、三草会の中心的存在として現在に至っている。
当法人は、生活の基本となる『医療・保健・福祉』を三位一体で提供し、社会貢献を目指すことを設立理念としている。平成15年10月にクラーク病院リハビリテーションセンターが竣工した。
現在は、診療棟135床、回復期リハビリテーション病棟90床の一般病床225床を持つ。
(2)経営方針
「あることの尊さへのアプローチ『いっしょに治る喜びを分かちあおう』」を基本理念に、地域の方々の病気の治療はもとより、健康管理や退院した後の在宅療養のお世話までを包括して行うことを目標とし、地域の皆さまと手を携えて作り上げていく医療をめざしている。
(3)組織構成
当病院は整形外科、リハビリテーション科、内科、循環器科、消化器科、泌尿器科、リウマチ科、麻酔科の計8科で従業員277名。医療法人社団三草会全事業所では526名が従事している。
(4)障害者雇用の理念
人はそれぞれ得意・不得意があり、それは障害をある者でも障害のない者でも同じである、という考えに基づき、障害に応じてできることをしていただく、仕事に関しては特別扱いをせず厳しく指導もする、ということを基本としている。その結果、院内には障害者を特別扱いしたり特に意識することもなく、お互いに仕事をする仲間という意識が醸成されている。
(5)障害者雇用の経緯・背景
雇用のきっかけとなったのは、平成20年10月のハローワーク(公共職業安定所)所長からの指導であった。それ以前から理事長、院長ともに障害者雇用を考えていたこともあり、ハローワーク所長からの指導を受け、翌年4月の採用を目指し、本格的に検討を開始した。平成21年2月に実施されたハローワーク主催の障害者就職相談会に参加する一方で、病院の職員の紹介で平成21年3月に2名採用した。これに加え、平成21年2月の就職相談会を通じ、4名を4月に採用、さらに平成22年4月には、障害者枠でハローワークに求人を出し1名を採用し、現在合計7名が就業している。
2. 取り組みの内容と効果
(1)障害者の従事している作業内容
a.聴覚障害 1名
Aさん(男性)。中央材料手術室で看護助手として勤務している。
業務内容は、最初は手術器具の洗浄、滅菌、乾燥のみであったが、その後メッセンジャーとして各病棟で使用する包帯、薬品類、日用事務用品等を届ける業務も担当している。
b.肢体不自由 3名
Bさん(男性)。以前の経験を活かし、総務の管財業務、企画業務を担当している。また、15時以降は知的障害者の管財業務(庭の清掃や車いすの洗浄等)の指導も担当している。
Cさん(男性)及びDさん(女性)。ナースステーションで看護助手として勤務している。ナースステーションや病室の清掃、ベッドメイキング、汚物の処理等の業務を担当している。
c.知的障害 1名
Eさん(男性)。ナースステーションで看護助手として勤務している。
仕事に慣れるまでの最初の3カ月間は、石狩の「就労援助室あるば」と北海道障害者職業センターの2ヵ所からジョブコーチを派遣してもらい業務の指導を受けた。現在は上記看護助手と同様の仕事に従事しているが、15時からは上記Bさんの指導の下、管財業務(庭の清掃や車いすの洗浄等)も行っている。
d.精神障害 2名
Fさん(男性)。総務課で事務員として勤務している。
業務内容は、郵便物の仕分け作業、医局の整理・清掃、総務課の電話応対等を担当している他、健康相談会でのティッシュ配布や決まったコースであれば自動車の運転もしている。
Gさん(男性)。札幌市からの委託事業である東区第二地域包括支援センターで事務員として勤務している。電話応対やパソコン入力、毎日の市役所との連絡を担当している。
(2)就業時間・休日等
a. クラーク病院:4週8休(土・日・祝休み)。
就業時間 08:30~17:15(休憩1時間)
b. 東区第二地域包括支援センター:4週8休(土・日・祝休み)。
就業時間 08:45~17:15



(3)障害者の雇用、就労で留意していること
障害者を雇用した平成21年の12月に、「障害者職業生活相談員」の資格認定講習会に事務方と現場の責任者計2名が参加した。障害者の就労に当たっては、特に障害者ということで差別をせず仲間として一緒に働くということを基本にしていることは前述の通りであるが、各障害者を受け入れるに当たっては、その障害に応じて細かな配慮・対応をしている。
a.聴覚障害者(Aさん)
・最初は筆談であったが、(社)北海道高齢・障害者雇用促進協会から「わかりやすい職場で役立つ新しい手話DVD~労働に関する手話~」(手話監修(財)全日本ろうあ連盟作成)の提供を受け、更に指導担当者が手話を学び、手話で会話が出来るようになった。手話の方が筆談より作業効率が良いため、その後、就業部門である看護部の4名および事務方責任者も手話教室に通い、手話で意思疎通ができるようになった。現在も職場の全員が手話を学んでいる。
・仕事の幅が広がり、メッセンジャーとして病院内を歩き始めたが、Aさんはほとんど耳が聞こえないため患者さんからの問いかけに返事ができず、患者さんに不快感を与えることもあった。このため、採用後1年間は聴覚障害の職員を雇ったこと、そして本人のネームプレートには「耳が不自由です」と記されていること、右肩に音が聞こえないことを示すマークの入ったワッペンを着けていることを伝えるポスター(後掲)を院内のあちこちに貼り、患者さんへの周知を図り、理解していただいた。
b.肢体不自由
・Dさんは、清掃やベッドメイキング等を担当しているが、股関節障害によりしゃがむことが出来ない。このため、しゃがまなくても低いところが清掃できる道具や膝をついて作業ができるような用具を同僚が製作し、本人に利用してもらっている。
c.;知的障害
・看護助手として働いているEさんについては、本人も周りの同僚もEさんの仕事の進捗状況を見て分かるようにパネル(後掲)を製作し、掲示・活用している。
d.精神障害
・総務課事務のFさんに電話応対業務をしていただいた最初の段階では、周りの同僚がFさんの応対を聞いていていつでもフォローできる態勢を取っていた。Fさんは電話応対にも慣れ、1年経った現在では全く問題なく電話応対業務もこなしている。


(4)取り組みの効果
障害者を雇用した最初の頃は、初めてということもあり色々と気遣いしなければと身構えていたところもあったが、現在では、余分な力が抜け、自然な形で障害者と仕事ができるようになり、障害のある職員も障害のない職員も何の違和感もなく一緒になって業務に励んでいる。また、障害の内容により、やってもらえる業務、困難な業務、業務の指示の仕方等々を体験的に学ぶことができ、今後の障害者雇用に自信を得ることができた。
(5)今後の展望と課題
障害者の雇用、定着を図ることは無論だが、今後、更に障害者の雇用の場の創出を考えていくことと、勤務している障害のある職員も、ない職員も長期にわたり勤務できる環境を作ることを重点課題として取り組んでいる。
3. 最後に
(1)取材をして感じたことは、障害者を雇用しようと決断した後の行動が非常に早く、かつ積極的ということである。
(2)取材させていただいた担当者の方も、また、お会いした職員の方も皆さん非常に優しい方達という印象を受けた。インタビューさせていただいた障害者の方も楽しく仕事をしている、とおっしゃっていた。
(3)現在、院内には、当院で働く職員の未就学児童保育と小学校3年生までの学童保育ができる施設を設けている。学童保育対象の小学生に対しては、学校までバスで迎えに行っている。この結果、職員は毎日お子さんと一緒に退社できるようになった。
これも上述した長期にわたり勤務できる環境作りの一環である。
当院の障害者への対応や院内保育園の創設などは、ともに障害のある、ないに拘らず従業員、ひいては人の「生の尊重」が元になっているのではないかと感じた。
これらは当院の基本理念の「あることの尊さへのアプローチ『いっしょに治る喜びをわかちあおう』」の具現化なのであろう。当院の人に対する温かさのせいであろうか、筆者の心も温かくなり、「理念に向かい着実に歩み続ける病院」を感じた取材であった。
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