2010年度作成

事業所名

盛岡医療生活協同組合

所在地

岩手県盛岡市

事業内容

医療業、在宅介護事業、病後児保育事業

従業員数

380名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	4	鍼灸・マッサージ業務
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害
精神障害

目次

1. 事業所の概要等
2. 障害者雇用の経緯、背景等
3. 取り組みの内容等（取り組みの具体的な内容、活用した制度や助成金など）
4. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット等（取り組みを実施したことによる効果、障害者雇用の波及効果やメリット、障害者自身のコメントなど）
5. 今後の課題・展望等

1. 事業所の概要等

①事業の概要

医療業、在宅介護事業、病後児保育事業

②経営方針

誰でも必要な時に充分な医療が安心して受けられ、みんなの健康と暮らしを守るための活動を行なう。

③組織構成

理事  小野寺けい子

④障害者雇用の理念

・「障害者」と意識せず、専門技術・知識を持った一人のプロとして雇用する

・障害者雇用が社会貢献、社会の義務であることを心がける

⑤その他

昭和43年に開業。5年後の昭和48年に川久保病院が、53年に仁王診療所（現・仁王鍼灸治療院）が開設された。川久保病院は平成16年11月、敷地内に新しく建てられ、旧病院はそれに併設する「在宅総合センターひだまり」となっている。新しい病院では一般病床のほかに療養病床も用意し、リハビリにも力を入れている。

現在運営しているのは、上記の3施設のほか、「さわやかクリニック」（岩手町）、同クリニックに併設されている高齢者向け共同住宅「さわやかハウス」、仁王鍼灸治療院が併設されている「仁王ケアセンターすみれ」、「グループホームさくらの家」（盛岡市）、「メディカルフィットネスLa・La」（盛岡市）。

川久保病院内では、往診センター、通所リハビリテーション、乳幼児等健康支援デイサービスなども行なっている。

2. 障害者雇用の経緯、背景等

①経緯

仁王診療所が開設された当時、「頸骨腕症候群」や「振動病」という職業病が流行っており、これに鍼灸が効くと言われた。そうした患者（組合員）から鍼灸やマッサージの治療をしてほしいという要望があったこと、障害者雇用に取り組もうという当時の吉田所長の考え方から、視覚障害者を雇用したのが始まりだ。ほとんどが盛岡の盲学校の卒業生で、現在勤務している視覚障害者4名のうち3名（男性2名、女性1名）は、この時期に採用された人たち。ちなみに現在はそのうち2名が鍼灸治療師として仁王鍼灸治療院に、残り2名がマッサージ師として川久保病院内の物療室と岩手町の「さわやかクリニック」に勤務している。

最初の採用以降も患者からのニーズが多かったことから、1980年代には10名前後の視覚障害者を雇用していた。しかしこの時期をピークに、治療方針の転換や患者の減少などから採用は減り、現在の4名にとどまっている。またこの間、身体障害者を雇用したこともあったが、本人の希望で退職したという。

②背景

鍼灸・マッサージ業務は、これまでにも視覚障害者が従事している業種の1つであったことから、盲学校などで専門的な訓練が行われてきた。そこで専門的な技術を身に付けた視覚障害者が、医療関係の施設で鍼灸・マッサージ業務に就くことは、雇用もいろいろな面でスムーズだったと言える。

ただし、もちろん日々の勤務の中にはそれ以外の付随業務もあるため、一緒に働くスタッフのサポートは必要だ。ただそれについても、佐藤正勝専務は「資料を読んだり、休憩時間に食べ物を取り分けたり、社員旅行の時に肩を貸したり、といったことくらいなので、負担などを感じることはまったくありません」とのこと。こうした現場での様子もあり、視覚障害者をどんどん雇用したようだ。

一方で、障害者自身の性格や勤務態度も、継続雇用・新規雇用に結びついていると思われる。

その背景にはまず、障害者にとって働きやすい職場であることが大きい。

今年勤続38年目という長尾せい子さんは、盲学校の先輩の紹介で就職したという。ほかにも学校の先輩がいたので、「最初から働きやすかった」と話す。また、「他の病院に勤務している友人は、自分の言いたいことがなかなか言えずに悩むことがある、と話していたが、私の場合は先輩がいたおかげで思ったことを口に出して言えた。その点で本当に良い環境だと思う」と話していた。

このようにどちらが先かは断言できないが、働きやすい職場であることが前向きな勤務態度につながり、それを見た雇用側も「また雇用してみよう」という考えになったのではないだろうか。

さらに、障害者自身の性格も大切だ。同組合に勤務する障害のある社員たちは前向きで、積極的に外に出たり障害のない社員とコミュニケーションをとるという。例えばスキーに一緒に行くこともある。その場合、障害のない社員が手助けし、楽しく交流しているとか。

逆に障害のある社員同士のグループで活動する人もいるが、それもまた前向きな生き方であることには変わりなく、そうした明るい性格も、「職場で必要とされる人材」の大きなポイントになっているだろう。

③その他

医療・福祉施設の運営をしている同組合では、障害者に対する偏見などが一般企業よりも少なく、また職場である施設にもバリアフリーが取り入れられている施設だと思われる。さらに、サポートのやり方もうまく心得ているのではないだろうか。こうしたことも、障害者雇用にとってプラスであるにちがいない。

3. 取り組みの内容等（取り組みの具体的な内容、活用した制度や助成金など）

①具体的な内容

診療録を点字で記入できるものにしている。

作業の指示書に、さわってわかるような記号を取り入れている。

上記の長尾さんは、まったく見えないのではなく極度の弱視なので、明るい場所でゆっくり時間をかければ文字を読むことができるという。そこで同組合では、資料を拡大文字にして、長尾さんが読みやすいように工夫している。また、長尾さんが勤務する部屋では明るい窓際にデスクを置くことができないため、デスクにスタンドライトを置いてサポートしている。

②活用した制度や助成金

特定求職者雇用開発助成金制度を利用

③その他

障害のある社員自身が、「こうしてほしい」と要望を言ってくれるので、雇用する側も具体的なサポートや取り組みがしやすいようだ。逆にいうと、障害のある社員からそうした要望が言える環境づくりが大切だろう。

4. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット等（取り組みを実施したことによる効果、障害者雇用の波及効果やメリット、障害者自身のコメントなど）

①取り組みを実施したことによる効果

どの視覚障害者も、本業に支障なく勤務することが可能になった。その「働きやすさ」が、長年の勤務につながっている。

②障害者雇用の波及効果やメリット

佐藤専務が何度も話すように、職場では「障害者」として意識することはほとんどない。どちらかというと、専門技術を身に付けたプロとして雇用しているという。雇用のメリットとして感じている点は、むしろそうした点のようだ。

視覚障害者の人たちが外で壁づたいに歩いている時に、突然出っ張っている棒にぶつかって怪我をしたことがあるという。そうした話は、医療・福祉施設を運営する同組合にとって役立つ情報のひとつでもある。

③障害者自身のコメント

「他の職場は知らないので比べられませんが、働きやすい職場です」と長尾さん。上記のようなサポートのおかげで、本来の業務に支障なく勤務することができているという。

長尾さんに治療してもらう患者の多くは年配者なので、「いろいろ教わることが多い」と喜ぶ。話しながらやるのが楽しい、とも。

5. 今後の課題・展望等

視覚障害者を雇用した当時と今とでは、社会情勢などの変化によって状況がかなり異なる。そのため今後しばらくは、視覚障害者を新規に雇用する予定はないという。

また、鍼灸・マッサージ業務については「最近、障害のない人が技術を身に付けているので、障害者にとっては大変だと思う」と佐藤専務。しかしそんな中でも障害者へのメッセージとして、「障害者自身が社会的にアピールし、認知してもらうことが大切。具体的には、高い技術を身に着け、あきらめず、周囲と支え支えられる関係をつくっていくことが必要だと思う」とアドバイスしてくれた。

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