事業所名

社会福祉法人美里会

所在地

埼玉県児玉郡

事業内容

①知的障害者支援施設/授産/グループホーム運営
②精神障害者障害福祉サービス事業所/グループホーム運営

従業員数

260名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	1
内部障害	2
知的障害	2
精神障害	2	清掃

目次

1. 取り組みの経緯と背景
2. 就労場所・作業内容
3. 関係機関・家族との連携
4. 雇用管理面の取り組み
5. 今後の課題・展望
6. 障害のある社員からのコメント

事業所外観

1. 取り組みの経緯と背景

・当法人は、昭和48年1月に「社会福祉法人美里会」として認可を受け、同5月から知的障害者入所更生施設を開所し、順次知的障害者通勤寮・授産施設・通所作業所を開所。平成元年から精神障害者施設を開所し各施設間が連携して、障害者の就労を意識した取り組みを実施してきた。

当法人の障害者の就労への取り組みは、法人開設以前より美里会開設者である故倉上岱三(くらかみたいぞう)氏が障害者を自宅に寝泊りさせ寝食を共にしながら、前理事長である故塚越森蔵氏の経営していた職場に通わせていたという歴史がある。この活動が現在の理念に反映されているといえる。

・障害者の雇用は法人設立前に遡り、代々受け継がれた歴史の中に原点がある。主に知的障害者の就労は、通勤寮開所以来必然的に始まり、働く事の大切さ「働く＝生活の安定」等の意識は、日常の暮らしの中に自然に組み込まれていった。最近の法人雇用では、平成17年4月、通勤寮に入所していた知的障害者を採用し、平成20年10月には法人外の作業所より精神障害者（ジョブコーチ支援の利用）を採用、平成21年には法人内において就労訓練を受けていた精神・知的障害者各1名を法人採用し現在に至っており、それぞれが安定した生活を送っている。もう1名の精神障害者の雇用に関しても、本人の働きたいという意欲と能力に応じ、訓練を受けた成果を踏まえて職業人としての意識改革等を促しながら就労に励んでいる。周りの職員や利用者等の温かい見守りもあり、休むこともなく一所懸命業務（清掃）に取り組んでいる。

2. 就労場所・作業内容

・就労場所は、美里会の特別養護老人ホーム「美里敬愛ホーム」内（3名配属）

・作業内容は、高齢者が日々笑顔の絶えない家庭的な暮らしを清潔な環境の中で送っていただけるよう、清掃作業を主に行っている。
①  共有部分であるフロアー、棚、食堂スペース等の清掃
②  居室内のトイレ、洗面所等の清掃とベッドメイキング
③  リネン交換

・1日の作業内容は3人で業務分担しながら、かつ、ローテーションを組んで実施している。

清掃作業

3. 関係機関・家族との連携

・美里会の各センター間の連絡会議（定期開催）

・職業安定所（熊谷/本庄）との連絡会議（不定期開催）

・所属元（他センター・施設利用者）等の連絡会議（不定期開催）

・福祉事務所との連絡会議（不定期開催）

・医療機関との連絡会議（不定期開催）

・埼玉労働局をはじめ、埼玉県就業支援課等関係機関および埼玉県内の「障害者就業・生活支援センター」7箇所との連絡会等、幅広いネットワークで各機関と連携し、密度の濃い就業支援を継続実施している。

・家族との連絡会議も随時開催している。

4. 雇用管理面の取り組み

・雇用管理面（定着への配慮）は、現場管理者が担当しており、人間関係、特にコミュニケーションに重点を置いた配慮がなされている。法人本体の主要業務が「高齢者介護」ということもあって、職員全員の応接の和やかさ、穏やかさの雰囲気そのままで対応している。

・経営理念は「社会福祉法人美里会はヒューマンケアサービスの向上に貢献し、地域社会文化の創造に寄与することにより、福祉を必要とされる方のその人らしい幸せな人生を実現することを目指します」とあり、この理念が浸透、定着している形ともいえる。

・健康管理面においては、年1回希望者に健康診断を実施している。また、労働時間の管理、賃金等の処遇に関しては「パートタイム職員規程」に基づいて対応している。

5. 今後の課題・展望

・障害者同士のコミュニケーションは、良く取れていると思えるが、自立した職業人として育てて行くために、またサブテーマとした「一般就労に向けたステップアップのための法人内就労」の主旨を遂行するための課題として、
①仕事への取り組み姿勢の指導
②日常生活面に必要とされる指導（時間管理、主治医を通じた服薬の継続、金銭管理等）
③対入居者、対職員とのコミュニケーション能力の向上等が挙げられる。

・定期的な採用計画に依らず、関係機関からの要請もあるが、「育成→理解」の進展を判断しながら「臨時の採用」を変えない方針である。

6. 障害のある社員からのコメント

精神障害者のSさんから話しを聞くことができた。

・在籍1年4ヶ月。自宅から車で通勤している(15分程度)。美里敬愛ホーム施設内の①共用部分フロアー、棚の清掃業務②居室のトイレ、洗面所の清掃業務③リネン交換等の作業を他の障害者とローテーションを組んで当番している。

・一番の楽しみは「給料をもらった時」で、「何に使うのか？」との問いには「趣味の写真撮影に使う」と明快。さらに質問を重ねてみたところ、Sさんが対象にしている被写体は「上越線の蒸気機関車」で、跨線橋と組み合わせた四季折々のショットとのこと。また、カメラ歴は20年にもなる。その力作は上司にも認められ、施設内の壁面に飾られていたが「黒煙を吐き出しながら雪の中を走る」迫力満点の作品だった。

・夢中になれる趣味がエネルギーとなり、仕事にも仲間との日常にも活かされていると感じさせられた。またSさんは大変に照れ屋だったようだが、この頃では、高齢者と会話することが「楽しい」ようで、管理者も所長もSさんのことを認めていることが窺えた。

Sさんの作品