エコキャップ運動から始まる障害者雇用

2010年度作成
事業所名
石塚化学産業株式会社新潟工場
所在地
新潟県見附市
事業内容
プラスチック材料の仕入販売、使用済プラスチック等の収集運搬・中間処理、それら再生材料の製造販売
従業員数
8名
うち障害者数
3名
 
障害人数従事業務
視覚障害  
聴覚障害  
肢体不自由  
内部障害  
知的障害3ペットボトルキャップの分別作業、廃プラスチックの異物除去作業
精神障害  
目次
  1. 事業所の概要
  2. 障害者雇用の経緯・背景
  3. 障害者の従事業務
  4. 取り組みの内容
  5. 障害者雇用における今後の改善点・感じていること
  6. まとめ

2. 障害者雇用の経緯・背景

当初は本社を含め障害者雇用の経験はなかった。

2年前よりエコキャップ運動を開始した際、回収されるキャップは1ヶ月で15トンにもなり、工場内でパート社員2名が中心となり、リサイクルに利用できるように、異物を取り除いたりシールをはがしたりする分別作業を行っていたが、対応が仕切れないということになり、近隣の福祉施設等へ依頼するようになった。

ある時、施設より障害者雇用についてのアンケートをお願いされ、これをきっかけに雇用について具体的に考えるようになった。

その後、施設より実習を受け入れ、福祉施設職員や地元ハローワークと連携し採用した。

3. 障害者の従事業務

リサイクル工程の一部を任せている。採用当初から、回収されたキャップに混入している異物や、シールをはがしたり、リサイクルできないプラスチック等を除去したりする作業を担当している。作業の進み具合を見ながら、ホームセンター等で花苗を入れているカゴトレーのシールはがしも行う等業務の幅を広げている。

キャップの分別作業
キャップの分別作業

4. 取り組みの内容

(1)取り組みの具体的内容

福祉施設より6名の実習を受け入れることから始めた。3名ずつ2グループに分け、1週間ずつ実習を開始した。

分別作業では、ペットボトルのキャップ以外のプラスチックや金属類も含まれており、目視のみの分別では時間がかかることから、

①水の中に浮かべる

②浮いた物のみザルカゴですくう

③更に分別

といった作業工程に工夫をし、リサイクルできるものとできないものの区別をしやすくした。

その後、6名のうち3名については障害者試行雇用(トライアル雇用)制度を利用し、障害者就業・生活支援センターや地元ハローワークの支援を受け雇用に至った。

分別作業の1工程
分別作業の①工程

(2)活用した助成金等

初めての障害者雇用であったため、職場実習実施後に障害者試行雇用(トライアル雇用)制度を利用した。また採用後には、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の第1種作業施設設置等助成金を活用して、雇い入れた3名(男性)の障害者が使いやすいようにトイレの改修を進めているところである。

●その他利用した助成金

・障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)

・特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)

5. 障害者雇用における今後の改善点・感じていること

(1)改善が必要な点

分別作業については、リサイクルへの第1工程であり正確さが求められるが、「丁寧に」と声をかけると慎重になりすぎて作業効率が下がってしまい、「もう少し頑張って」と言うと作業量は増えるが、異物の混入が目立つ等、指示の出し方が難しい。

今後は、1日ごとの作業目標を立てるなど目に見える形で指示が出せるよう、支援機関と相談しながら取り組んでいきたいと考えている。

(2)感じていること

初めての雇用であり、検討段階から様々な不安があったが、制度の利用や支援機関のサポートにより雇用に進めることができた。

実習期間中は3名の所属施設の支援員が週1回様子を見に来所し、トライアル雇用時からは就業・生活支援センターの支援ワーカーが定期的に訪問する等、企業と本人達両方にその時その時に必要な助言を行ったことで、こちらも障害特性を十分に把握することもでき、コミュニケーションも自然ととれるようになった。共に働く中で、不安も解消され安心感も生まれてきている。単純作業ではあるが、真剣に取り組み、状況によっては別な作業も手伝う気遣いもあり、感心している。また、笑い声が絶えず会社全体が明るくなった。

効率面ではまだまだ厳しい部分はあるが、「働きたい」という気持ちを大事にしていきたいと思っている。

6. まとめ

取材した日は、霰(あられ)や雹(ひょう)が降る大荒れの天気で、気温も低い1日だったが、作業場に足を運ぶと「こんにちは」「ご苦労様です」と元気な3 人の声が迎えてくれた。冷たい水を使った作業で、同じ工程の繰り返しではあるが、抜群の集中力で黙々と任された仕事を一生懸命頑張っている姿と、仕事の合間にみせる笑顔が印象的だった。

作業場には専用ハロゲンヒーターを設置、専用男子トイレも完成。長谷川工場長の「働きたいという気持ちを大切にしたいんです」という想いが、彼らの働きやすい環境整備に力を入れる。

障害者雇用1年生事業所。この先色々なことがあるかもしれないが、3人の明るさと頑張る姿勢と一緒に、前に進んでもらいたいと願っている。

執筆者:社団法人新潟県雇用開発協会  障害者雇用アドバイザー  高木  江麻