障害特性に配慮し心身ともに障害者が安心して働ける職場改善と雇用継続
- 事業所名
- 株式会社ヨシケイ福井
- 所在地
- 福井県鯖江市
- 事業内容
- 副食材料セットの宅配
- 従業員数
- 161名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 2 清掃、加工補助、配送トラック運転手 内部障害 2 営業部:企画、データ管理、商品部:発注、伝票事務 知的障害 2 加工、加工補助 精神障害 2 保冷剤洗浄、セットBOX清掃 - 目次

1. 事業所の概要
株式会社ヨシケイ福井は昭和54年に創業、全国フランチャイズチェーンに加盟、現在加盟会社が67社となり、開発・研究・社員研修・情報交換・行政対応・市場調査等、多岐にわたり交流しながら全国展開している。
福井県においては、鯖江市に本社を置き、坂井・福井北・福井南・丹南・大野・敦賀・若狭・小浜の県内一円及び舞鶴の8営業所での営業を展開している。
「人」の一字をモットーに、「人」を大切に、「人」の為に、「人」を優先に、障害者とともに働く人間尊重の会社を目指している。①お客様に対しても、②社員同士でも、③取引業者の方々でも、常に思いやり・優しさ・礼節の必要性を重んじている。「命」を預かる、大事な仕事をさせていただいていることを、私たちグループ会社社員は、心に持ちながら日々緊張感を持って、業務に携わっている。


2. 障害者雇用の経緯
障害者雇用について、現在ほどの整備がなされていない平成2年頃、我が社では腎臓機能障害により重度中途障害者となったAさんが、透析が週1回から3回(月・水・金)となり、勤務時間等の配慮をしながら障害者の雇用継続に努めていた折に、養護学校の先生から職業自立と社会自立をめざし実際に企業で働く体験実習として職場実習をお願いできないかとの相談があった。
当初は「障害者」に対する知識もなく生徒と一緒に仕事をすることが初めてであり、どのように接すればよいのかなど、お願いされるままでの職場実習の受け入れをしてよいのか不安でいっぱいだった。しかし、百聞は一見にしかず、出来ることをやってもらおうと社長自らの指示により、初めて実習生を受け入れることになった。
その後も幾度となく実習生を受け入れているうちに、実習を通して一人一人が持っている能力を生かしながら、コツコツと真面目に仕事をしている姿を社員が見ることで、障害者とともに働くことへの理解が深まっていくと同時に、接し方についても自然体でコミュニケーションが図られるようになっていった。職場実習受け入れを積み重ねていく中で、平成14年4月、職場実習経験のある知的障害者を雇用。その後、その社員が社内において真面目に、一生懸命「生き生きと働く」姿を見ることで、新たな新規雇用を考える事に繋がっていった。
営業所販売部門において営業・販売を担当し、お客さまの自宅に副食材の配達業務を担当していたBさんが平成16年頃、股関節に痛みを覚え病院で受診したところ右足首を長年庇ってきたことによって股関節が変形したことから右変形性股関節症と診断され、人工骨を入れる手術をすることとなった。1ヶ月後の職場復帰にあたり、足に負担のかからない労務管理等の業務及びこれまでの経験を活かした社員教育担当として、本社デスクワークへの配置転換を行った。

重度中途障害者等職場適応助成金を活用するとともに、ハード面では第一種中途障害者作業施設設置等助成金を活用のうえ、トイレを和式から洋式に、トイレ壁面に手摺りを取り付けるなど職場復帰にあたり障害部位に配慮した改修工事を実施した。
また、平成20年頃には営業職として月に4~5回県外へ出張を行うなど精力的に働いていた勤続20年のCさんが、重度の心臓機能障害となったことから、重度中途障害者の職場復帰にあたり、身体的負担の軽減等を含めた職場環境の改善、就労業務の見直しなどにより、障害者継続雇用への取り組みを行って来たことが「障害者とともに働く企業」として大きなきっかけとなっていった。


3. 最初の取り組み
養護学校からの職場実習生を、春と秋の2回(3週間)受け入れてきた。学校より実習生が卒業と同時に当社への就職を強く希望しているとの話しを聞き、新たに知的障害者を受け入れるにあたって具体的な取り組み体制の検討を行った。その結果、学校には、職場実習を学校生活から社会生活への巣立ちの準備としてとらえ、社会生活に必要な知識・技能・マナーなどの習熟期間とし、卒業までの実習の強化、また、支援体制についてもハローワーク、障害者職業センター及び所属施設との連携体制を構築するとともに、社内においては相談窓口を明確にするため全体の把握・相談等を一元的に人事担当者が行うこととし支援機関、本人、家族との連携がスムースにとれる体制を構築した。
4. 職場実習より雇用へ
障害者施設職員から精神障害者の職場実習受け入れについて相談があった。精神障害者雇用について国としての取組み内容の説明を聞き、現状の大変さを感じる中で、当社の業務内容で障害部位に配慮しながら無理せずに働ける作業を検討した結果、食材用保冷袋の洗浄、空箱の清掃であれば心身にかかる負担も少なく出来るのではと考え、施設職員と実習の作業内容について数回打合せを行い、数名の職場実習が開始された。
施設で行っている仕事と異なり、一般企業での就労は制約のある作業内容により精神面でのストレスも大きくなるため、きめ細かな支援(就労時間、作業内容、休憩等)によりストレスの軽減に努めた。体力面・集中力低下等、精神障害者の特性等を多少なりとも理解する中において、継続雇用に向け厳しさも考慮しながら就労環境の構築を図った結果、実習を経た精神障害者2名を雇用した。



また、平成22年度には、職場実習に来ていた養護学校高等部(3年生)の生徒1名が卒業したら勤めたいとの希望があったこともふまえ、雇用の見極めも兼ねて4回の職場実習を実施した結果、卒業と同時に求人・求職がマッチングし、知的障害者1名を雇用した。
5. 障害者雇用が進んで
養護学校からの職場実習受け入れを進めていく中で、最初は障害者と共に働く事に対し「どう接したらよいか」、「障害のある社員とうまくやっていけるだろうか」、「仕事ができないのではないか」、「自分の負担が大きくなるのではないか」など、現場の社員の不安な声が多く聞かれた。しかし、実習が進む中、実習生の朝・夕の挨拶の良さが周囲の人にも波及し、特に年長者においては、もしこの子達が我が子・孫だったらとの思いが芽生え、家族同様な思いのある接し方を少しずつ学んでいくことにより障害者への理解が深まって来た。それらが事業所の社員全体に広がることによりさまざまなマイナスイメージが払拭され、不安感も解消されたところである。
養護学校からの職場実習を経て、卒業と同時に初めて採用したDさんは、入社当時は徒歩による通勤をしていたが、今では自動車運転免許を取得し自家用車通勤をしている。
また、業務内容も補助的な作業から責任ある業務を任せられるようになり、養護学校からの職場実習生に対しても先輩として教えてあげられるまでに成長してきている。



6. 重度中途障害者の継続雇用への取り組み
(1)取り組み
営業部管理職として勤務していた社員が平成20年8月心疾患による重度中途障害者となり従前の営業職は継続不可能となった。本人の職場復帰の意思も固いことから営業事務部門の出来る限り身体的負担の少ない作業に従事できるよう配慮し、資料等印刷業務への再配置を行った。印刷用紙や印刷物を2階事務所から3 階作業場への移動は台車を含む重量物専用エレベーターを使用し荷物のみを搬送している。2階から3階への人の移動は階段を使用しており、日常生活についても制限されている障害のある社員にとって階段の昇降は特に心臓への極度の負荷となっている。心臓機能に障害を持っている場合、障害のない社員と比較すると重量物の運搬、階段の昇降等、心臓への負担に配慮することが必要であることから、職場復帰における職場環境の整備等、改善策等について関係機関と相談を行い、雇用の継続を容易にするため印刷物が運搬できる台車とともに、人も同時に昇降できるエレベーターに改造した。職場環境を整備したことにより、日常の営業事務作業の中で割合の高い印刷物の事務所から作業場への移動が、エレベーター搬送で容易になり、心臓への負担が軽減され継続雇用が可能となった。





(2)助成金の活用
□第1種作業施設設置等助成金
□障害者介助等助成金(業務遂行援助者の配置助成金)を活用。
7. 新たな取り組みと課題
現在、発泡スチロール製セットボックス用の保冷シート清掃および、夏場の保冷袋洗浄作業については、地域障害者施設への委託作業としている。今後、地域障害者施設への外注で行っている作業を社内実施に切り替える方法等を検討するなど、職域の拡大を図り、新たな雇用創出に向けて検討していきたいと考えている。
障害者雇用に関する情報は、全国に展開するフランチャイズチェーン67社が常に共有化するとともに、今回、ヨシケイ福井での取組みを本部が情報発信し、他のフランチャイズチェーンでも取り組みを行っている。
障害者雇用については、現場任せの考えではなく障害者と現場の調整をコーディネイトできる専門担当者の配置、障害者職場定着推進チームの活動を通じて「障害者が将来とも働く喜びと生きがいを見出し、本人が自己の持っている能力を十分に発揮出来、安心して働ける職場環境作り」等の諸活動を行いながら、職場定着に向けた支援を実施していくとともに、人事担当者だけでなく、社員全体で仕事の悩み・健康管理や家庭等コミュニケーション作りなど創意工夫を凝らし、障害者にも一般の従業員にとっても「快適で働きやすい職場環境つくり」を目指し、企業全体が共通の意識を持って取り組むことが重要であり今後の課題でもある。
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