障害者一人一人の長所を生かし、みんなで支え合う職場

1. 事業所の概要
当社は、昭和34年名古屋市中央卸売市場枇杷島市場にて青果仲卸として個人営業を開業し、昭和35年に「有限会社高坂商店」を設立、昭和58年に名古屋市中央市場北部市場へ移転、平成2年「高坂商店」より「タカサカ青果」に社名を変更し現在に至る。
当社は生産者、そして卸と小売業をつなぐ仲卸業者として、スムーズな流通の一端を担い、半世紀近い実績を築いてきている。また同時に新しい流通の在り方を提案し、量販店・スーパーをはじめとするお客様と生産者との橋渡し役となって、ガラス張りの商品開発や産地開拓を推進してきており、「よいものを、納得・安心できる価格で」「青果流通と食文化の未来をもっと豊かに」「現場に密着し、次の戦略につなげる」の3点のチャレンジをし、「健康・おいしさ・安全の追求」「豊かな食生活への貢献」「青果ビジネスへの新提案」「生産者・流通業者・消費者の連携をプロデュース」「生産地の活性化」を使命としている企業である。
2. 障害者雇用の経緯
昭和57年に、訓練校卒業の2名の知的障害者を雇用することをきっかけとし、以後、訓練校や養護学校を卒業した障害者を順次雇用するようになり、障害者雇用が増え、現在に至っている。
創業者(現会長)は「この人たちに会社の一部を手伝っていただき、社会に恩返しをする」ということを常日頃からおっしゃり、「本当にこの人ができるのかと思った」と障害のある社員の指導に当たっている佐分センター長が当時のことを振り返られた。「今では仲間同士の助け合いの中で、お互いに協力し合いながら、自分の長所を生かし仕事をしてくれている」と言われた。長い雇用経験の中、様々な取り組みが雇用を進めていく上で自然に行われ、雇用人数が11名を超えたところから、障害のある社員同士がペアになり、手伝ったり、若い社員への指導をしたりと、何も指示をしなくても日頃の仕事の中で学んできたことを生かし、仕事を進めるようになったそうである。とくに佐分センター長の「会社に入れば何かする仕事はあるものである」と言われた言葉がとても印象的であり、長年の障害者雇用の実績からくる自信のようなものを伺うことができた。
3. 取り組み内容
タカサカ青果株式会社では多くの障害者が働いている。作業内容は加工指示書の確認、青果の不良品の検品、加工、袋詰め(ラッピング)、シール貼り、箱詰め等がある。ライン作業の中で進められ、特性を生かし、また本人の希望に合わせた職場配置がされており、どの社員も無理のない仕事をしている。今回は工場内での様々な工夫を紹介していきたい。
(1)長所を生かした職場配置
① 障害者の適性による作業工程選択
産業現場等における実習を通して長所や障害の特性等を把握し、どのような作業工程が適しているのかを見極め、作業工程の選択を行っている。そのことにより過度な負担がない仕事ができ、自然に仕事を覚え、本人にとって無理のない状況の中でスキルアップが図れるようになっている。中には、商品の袋詰めだけでなく、バーコードの作成や、商品のタグをパソコンで作る作業をまかされるようになった人も居て、少しずつ、その人なりのスキルアップが図られるようになっていた。そこには、適切に適性を見極める力が必要であり、ずっと同じ仕事をしている方が良い人もいれば、少しずつスキルアップした仕事の方が良い人もいる。その見極めも障害者雇用をする上で非常に重要な要素であると痛感した。

写真はAさんの作業風景である。Aさんにとって作業工程が適しており、入社してからも少しずつ作業工程を増やし、増えた作業工程を仲間と組み立てながら、協力して仕事をしているそうである。Aさんのことをとても嬉しそうに話されている佐分センター長がとても印象的であった。

② 本人の意思の尊重
職場の中で適材適所を進めていく上で、重要になってくるのが本人の意思である。「働く」ということは自分の生活の中心になってくることであり、本人が職場で嫌な仕事をしていたり、苦手であると感じる仕事をしていたりした場合、とてもつらい日々を送ってしまうことになる。そこで、会社では適性を考慮した作業工程の選択を進めながらも、最終的に本人の意思を尊重し、作業工程を決定していくそうである。
上の写真はBさんの作業風景である。Bさんは作業工程を「加工場と折りたたみコンテナの洗浄場のどちらがいいの?」と聞かれ、「自分のペースでできるから」と折りたたみコンテナの洗浄場を選んだそうである。黙々と自分のペースで仕事をしているBさんの姿が素敵であった。
(2)工場内での職場環境整備
① 作業工程の細分化
複数の作業工程を同時に処理していくような仕事は非常に難しいものであり、一つずつの作業工程に時間をかけて習得し、積み重ねていく中で、複数の作業工程を1人で取り組んでいけるようになる。その際に、作業工程をどれだけ分かるようにするかであり、細分化することができるかである。作業工程を細分化することにより、一つの仕事をする上で、いくつかの工程をしなければならない状況が回避でき、自信が持てる仕事ができ、障害のない人以上の仕事や能力を発揮することができる。
実際にタカサカ青果株式会社では、作業工程の細分化を図り、自信を持って仕事をしている社員の方が多くみえた。


② 決められた場所での作業、分かりやすい職場環境
工場の中では、自分の作業工程のエリアで働いている。いくつもの作業工程がある中で、一人の障害者が働いている場所は必ず一箇所である。場所の移動があまりないので、必然的に混乱が少ないように思われる。会社では適材適所、決められた工程をまかせることにより、大きく職場環境が変わることのない状況を作り、作業が持続できるように工夫しているように思われた。また、分かりやすい職場環境にも力を入れている。職場環境が整理整頓され、決められた場所に机、商品などが置かれており、混乱しないようにすることで自主的な活動が期待でき、必然的に作業効率が上がっているように感じることができた。

(3)会社としての取組
① 作業現場等における実習の受け入れ
タカサカ青果株式会社では、作業現場等における実習の受け入れをする中で、その人の長所や個性を見ながら、適性を見る取組をしている。取組のポイントは以下である。
(1回目の1週目) | 作業場での前や横の人と話ができるか、仕事に興味を持つか |
(1回目の2週目) | 作業(袋詰め、バックシーラー、はかり)ができるか |
(2回目) | 職場の中で話せる人が2・3名いるか、仕事を覚えているか |
(3回目) | 総合的に適しているか |
このような取組を経て、入社をしている。この実習の受け入れ方を見ても当社の障害者の長所・個性の重視の様子が窺える。
② グループで働く際のノウハウ
タカサカ青果株式会社は、障害者を長期にわたって雇用してきた実績がある。その経験の中で、様々な支援のノウハウがあるように強く感じる。「会社に入れば何かする仕事はあるものである」と言われる佐分センター長の言葉も力強いものであり、きっとその恩恵を一番受けているのがここで働く障害者の人であろう。
そのような中、障害者の数が増え11人を超えたところから、障害者同士の協力や、指示などができるようになり、作業現場等における実習では、社員の方ではなく障害者の方がしっかりと仕事の段取りをし、教えるようになったそうである。そして、それを見守りながら、適切な指示を出すことにより、更なる協力が得られ、より良い仕事につながっているようであった。1人では苦手なことも多い障害者であるが、得意なことを生かし、適材適所で協力することにより、作業効率を上げることができる実例を見たような気がする。
4. 今後の展望
障害者を長期にわたり雇用するタカサカ青果株式会社にとって、障害者雇用のノウハウを蓄積される中で、障害者の自立支援を行っているように感じた。
「命令は絶対にしない」「長い時間はかかる」「どれくらいできるのかが分かるようになる」そして「あの人たちにやらせれば、何でもできる」という佐分センター長の言葉からもノウハウの一端が見える。また「働いている社員が楽しくなってくる」という一緒に働いている人にしか分からない障害者雇用のメリットを教えていただいた。
今後の展望については、会社の方針を受けながら、現場で障害者を育てていける人の育成に引き続き力を入れていきたいとのことであった。その中で、さらなる障害者のスキルアップを図っていきたいとのことである。
タカサカ青果株式会社の今後の障害者雇用のモデルケースとして、大きく発展することを願ってやまない。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。