障害者の特性を見つけ、その人のよいところを伸ばす

1. 事業所の概要
当法人は大正10年12月11日京都仏教護国団の当時団長であった大西良慶氏によって創設された高齢者福祉施設である。
沿革
大正10年12月11日
京都仏教護国団(団長大西良慶大和上)によって「京都養老院」が京都市で発足し、京都府に届け出る。
京都府下で最初の施設となる。
大正11年6月1日
京都府からの養老事業を始める。
昭和9年8月19日
現在地(京都市伏見区)に移転。
昭和16年2月12日
仏教護国団理事会で「京都養老院」を「財団法人同和園」へと改称する。
昭和27年5月7日
財団法人同和園から社会福祉法人同和園へ組織変更される。
昭和39年3月20日
老人福祉法により養老施設は「養護老人ホーム」に移行する。
昭和47年2月1日
特別養護老人ホーム開設
平成3年8月1日
老人短期入所(ショートステイ)事業を開始する。
平成3年8月8日
デイサービス(通所介護)事業を開始する。
平成12年4月1日
配食サービス事業を開始する。
平成17年7月14日
西野の家「はなさんち」を開所
平成18年4月1日
京都市醍醐北部・包括支援センター開設
平成18年6月19日
北寮に於いて社会福祉法人京都市身体障害者福祉センターを受託者とする喫茶・売店「リップル」を開設。障害者の職業訓練の場所を提供する。
特別養護老人ホーム同和園 | 定員288名 |
養護老人ホーム同和園 | 定員90名 |
同和園短期入所事業 | 定員40名 |
同和園デイサービスセンター | 定員70名 |
同和園ホームヘルブステーション | |
同和園居宅介護支援事業所 | |
西野の家「はなさんち」通所介護事業所 | 定員12名 |
西野の家「はなさんち」居宅介護事業所 | |
京都市醍醐・北部包括支援センター |
2. 障害者雇用の経緯
当園の周辺には近隣のスーパー等が少なく不便であり、空き部屋を利用して喫茶・売店を行う計画が持ち上がり、以前からお付き合いのあった障害者授産施設に施設内での喫茶売店の運営の話を持ちかけた。授産施設の職員からは、就労を意識した仕事の場が必要である事を聞き、平成18年6月から業務委託をお願いして、就労の場所を提供したことがきっかけである。
今まで身体障害者は雇用していたが、知的障害者、精神障害者を雇用したことがなかったので、どのようなことができるかがまったく未知数であった。喫茶・売店で働く姿を見て、仕事をしてもらうとしたらどのような仕事が出来るだろうと考え、職員が増加したことや、障害者雇用率未達成になる寸前に雇用の促進を図った。現在は16名の障害者を雇用している。
3. 取り組み内容と効果
(1)家族との連携
障害者の就労支援は、家族支援がキーになると感じた。就職してから暫くして、家族に声掛けして、職場を見学してもらっている。家族にもどんな仕事をしているかを理解してもらうためである。採用担当者にとっても、一度会ってご家族の状況を把握し、どなたが就労者のキーマンになるかを見極めることができれば、何か問題事項が発生した場合、直接電話をする際にもスムーズに連携が取れるからである。
日常のやりとりについては、連絡ノートを活用して体調面での注意事項や仕事での出来事などの報告が必要な事項についてやりとりを行う。
(2)手順書の活用
館内清掃は、利用者が生活している中での作業である。掃除機のコードを利用者にひっかけたり、トイレの床を濡らした場合、転倒し重大事故につながるおそれがあることから、写真入り手順書を活用して事故防止に繋げている。

(3)体調管理
内部障害者の中に透析患者がいる。透析患者は水分の補給の管理が重要である。知的障害もあるため、水分補給の自己管理が十分行えていないことから、定期的な声掛けが必要である。特に夏場の炎天下での外周りの作業を避け、主治医との連携も欠かせない。
(4)障害者の業務・職場配置
事例Aさん
Aさんは平成19年3月1日トライアル雇用を終了し、常用雇用となった。作業内容は館内清掃である。
Aさんは知的障害者(知的障害を伴う自閉症)であるが、前職場で異性からの指示に対してトラブルを起こすことが多かった。Aさんに対しては、指示系統を統一して組織図を用いて、Aさんはどこの位置にいて誰の指示を受けて仕事をするのかを明確にした。またジョブコーチについても同性とした。
Aさんに対しては的確な指示が必要である。例えば、外周清掃でも単に「外周清掃をしておいて」と指示を出すと、落ち葉が多い場所、少ない場所を考えずに、少ないところを清掃してしまう事がよくあるので、指示についても具体的に詳細な指示をしないと無駄な時間を過ごすことがよくあった。

事例Bさん
2人目のBさんは発達障害(精神障害者保健福祉手帳取得)で京都障害者職業センターの職業準備支援にて実習を受けたことがきっかけであった。実習中は限られた内容・短期間だったので、大きな課題もなく終了した。しかし、介護職として採用してから改善に向けて取り組むべきいろいろな課題が出てきた。
Bさんに対しては、発達障害の特性に応じた対応を行った。最初にまず本人との間に色々な決めごとをした。例えば指示は決まった人から出す、あいまいな表現はしない、といったことである。
勤務についても他の職員と同じようにしたいとの希望であったが、トライアル雇用中については勤務を固定し、短時間勤務からスタートして、正式採用の時点ではフルタイムの勤務にした。
ジョブコーチ支援も利用し、主に精神面のフォローが中心の支援となった。Bさんは、職場には直接言いにくいことや悩みごとについては、こちらにはあまり言ってくれない。結局それを溜め込んでしまうために本人がしんどくなってしまう。それを事業所側が早めに気付いて、無理をさせないよう配慮した。
またカンファレンスを定期的に行い、困っていることがないかを確認していくことが大切だと感じた。

事例Cさん
Cさんは聴覚障害・知的重度の重複障害
Cさんはもともと授産施設から当施設に来た人で、当園で職員募集に応募された。複数の応募があったため、京都障害者職業センターの職務試行法という実習制度を利用して1週間実習した。配膳業務は障害のない者との2名での作業チームで取り組んだが、実習中は他の方を寄せ付けないほど非常にモチベーションが高く、てきぱきとした作業で実習を終了し、トライアル雇用後、採用となった。
最初の頃、作業の部分はてきぱきしていたが、時間が経つにつれて作業効率とペアの職員とのコミュニケーションが悪くなってきた。
職員とBさんとは筆談となるが、重要な事柄を伝える時にはハローワーク(公共職業安定所)の手話通訳者をお願いし伝えるようにした。知的の障害があるので、多くの内容を一度に伝えると全てが抜け落ちてしまうため、必要最少限のことだけを伝えるようにした。
Cさんはこのあたりに特性があり、手話通訳で完全に伝わっている訳ではない。何度も繰り返し伝えることが大切である。一度定着すれば抜けることはあまりない。
あとCさんは職場で友人を作ろうとするのがうまくいかず、仕事に身が入らなくなってしまったことがあった。Cさんに何度も、何のために仕事をしているかを伝えた。ある程度は理解してうまくいったが、その職員と職場内で遭うとまた同じ状態になってしまう。そこで思い切って配置転換をした。また余暇活動や友人づくりをしてもらうためにも地域の生活支援センターに繋いで仕事に集中できる環境づくりを構築した。

(5)取り組みの効果
障害者の仕事については、雇用後の支援でいろんな可能性が広がった。障害者雇用には障害者介助等助成金など財政的な支援も多数あり、非常に助かっている。財政的な支援が、期間中に適正な仕事の流れを作り出し、障害者の特性を理解することで仕事の幅も広がる。
当園では授産施設からの就職が多いので、働きたいという思いが非常に強い。賃金を得る喜びを促すことで本人のやる気にもつながっている。また利用者に「ありがとう」と声を掛けて貰えることが仕事の励みとなり、結果として仕事の成果に繋がっている。
4. 今後の課題と展望
障害者雇用は、事業所の担当者が頑張ればなんとかなると思っていた。しかし実際はそうではなく、事業所全体で支えていかなければ継続は難しいと分かってきた。事業所で解決が難しい問題については、家族と連携を取っての支援、社会資源(ハローワーク、障害者職業センター、生活支援センター等)を活用し協力を図っていくことが重要である。
今後の展望としてはキャリアアップである。同じ仕事の中でも、もう一歩踏み込んだ仕事ができるとか、また職種変更で違う領域の仕事ができるように取り組んでいきたい。そのためには、まずはこの職場に定着して、障害者自身の最大限の力が発揮できる環境づくりが必要であると感じている。
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