障害者の社会参加を応援
~サービス業として、お客様を迎え入れる施設づくり~
- 事業所名
- 財団法人鳥取県観光事業団
- 所在地
- 鳥取県鳥取市
- 事業内容
- 観光施設等の運営管理
- 従業員数
- 209名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 園芸スタッフ、花の植栽、花・庭園の管理 肢体不自由 内部障害 知的障害 1 施設管理スタッフ、公園内の清掃管理、公園内の園芸管理 精神障害 1 クリーンスタッフ、公園内の清掃管理、公園内の園芸管理 - 目次
1. 事業所の概要
本事業所は、鳥取県内に設置されている観光・公園等の7施設を鳥取県から指定管理業務を受託し、管理運営している。
従業員は、7施設で正従業員が54名、パート・臨時職員が152名、合計209名、年間130万人強の入場者を受け入れている。
障害のある従業員は、7施設の中で、とっとり花回廊2名、東郷湖羽合臨海公園1名を雇用、園内の清掃、植栽などに従事している。
各施設は、お客様を迎えるプロのサービスマンとしての自覚を養い、施設の清掃管理、充実したイベント開催など、お客様の満足を第一にスタッフ一同取り組んでいる。
とっとり花回廊は、全天候型、車いすでも園内を回れるバリアフリー施設の「花の公園」である。園内には、レストラン、園芸ショップ、土産品店も備えられ、回遊園内は50ヘクタールと日本最大級を誇り、大山を借景として四季折々の花が咲き乱れている。メインフラワーはユリで、ササユリ、ウケユリ、タモトユリなど学術的にも全国的にも貴重な日本のユリの原種15種全てを保有している公園である。年間40万人強の観光客を集めている。
もうひとつの東郷湖羽合臨海公園は、あやめ池スポーツセンター、ハワイ夢広場、ローラースケート場、テニスコート、ゲートボールコート、きりん公園などを管理運営している。当施設も広大な面積を管理、「心とカラダのリフレッシュ」をテーマとした運営がなされ、「春の東郷池健康散策ウォーキング」「花と緑のフェア」「地球にやさしい緑のリサイクル」「風の音コンサート」「あやめ池健康スポーツ大会」など多くのイベントにも取り組んでいる。
[雇用状況]
事業所名 | 正従業員 | パート臨時 | 障害の種類 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
知的 | 精神 | 身体 | ||||
本部 | 5 | 2 | 7 | |||
鳥取砂丘こどもの国 | 6 | 11 | 17 | |||
氷ノ山自然ふれあい館 | 4 | 1 | 5 | |||
東郷湖羽合臨海公園 | 3 | 12 | 1 | 16 | ||
中国庭園燕趙園 | 7 | 20 | 27 | |||
鳥取二十世紀梨記念館 | 5 | 12 | 17 | |||
夢みなとタワー | 3 | 10 | 13 | |||
とっとり花回廊 | 21 | 84 | 1 | 1 | 107 | |
合計 | 54 | 152 | 1 | 1 | 1 | 209 |




2. はじめての障害者雇用の取り組み
(1)障害者雇用の経緯と背景
当事業団は、障害者雇用の研修会・セミナーに積極的に参加、福祉の現状を把握するとともに、障害者雇用の必要性を実感してきた。そのため、福祉作業所の活動に協力するため、「花回廊」「こどもの国」で園内の除草作業・清掃作業の業務を委託している。
こうした下地のもとで、障害者の受け入れは、ハローワーク(公共職業安定所)や県立倉吉高等技術専門校からの紹介がきっかけとなり、職場実習を経て平成 20年4月、同年6月、21年4月それぞれ1名の障害者を雇用、現在2施設で3名の障害者が働いている。雇用施設では、サービス業としての心得を持って業務に当たるよう各担当者にそのサポートを伝えている。
(2)作業所との交流・業務委託が下地となり雇用へ
3名の障害者は実習を終えて採用。
「花回廊」で園芸業務を行っている聴覚障害者のAさんは、自家用車で通勤、花の植え替え、水やり、剪定、草刈りなどの業務を問題なくこなしている。日常の業務連絡や相談事は、これまでは口話とか筆談で行っていたが、現在は「携帯メール」がコミュニケーションツールとなって、ほとんどの業務に支障はない。ただ、担当者以外の職員との意思疎通が少なくなりがちな点が課題となっている。
広い園内、駐車場はゴミひとつなく、トイレも清掃が行き届いている。施設の運営方針として、おもてなしの精神を持ってお客様を迎え入れる姿勢が良く現れている。
もう1人の精神障害者のBさんは、そうした任務を担うクリーンスタッフの一員である。Bさんは、シャトルバスで通勤、チーム編成のもとでトイレ掃除を日に3~4回、ペアで業務にあたっている。
東郷湖羽合臨海公園の知的障害者のCさんは、2班に分けられたスタッフの一員としてトイレ清掃、キャンプ場の空きカン整理、生ごみの処理、遊具・設備の点検などの安全管理、落ち葉拾い、除草など、広大な公園の清掃・管理業務を行っている。単独行動は難しい面もあり、マンツーマンでサポートして働いてもらっている。欠勤などなく、真面目な好青年である。
(3)障害者雇用の課題と対策
事業団の運営方針の一つとしては、多くの県内外の観光客をお迎えする施設として、職員はおもてなしを最重点とした接客を基本としている。そのための研修も回数を重ねている。
3名の障害者の課題は、差があるものの、どうしてもコミュニケーションが取りづらい点があり、そのためお客様へのおもてなしができない点が挙げられる。職場でも職員間でのコミュニケーションが少なくなりがちで、人間関係がネックとなる。
そのため、障害者の支援対策として
・ 各施設ともバックヤードの仕事を中心として、ペアを組んでの業務
・ 野外での業務が多いため、天候を考慮したきめ細かい指示を行う
・ 職員全員が声かけや気配りを常に心掛ける
こうした支援に加え同じような障害者をもう1人雇用し、障害者同士で励ましあい競いあうことで、能力開発、職場へのなじみが容易になるのではとの提案もあったが、予算の関係で難しい。
いずれにしても日々の仕事を通じて仕事に対するやりがいを見つけ出し、責任を持って仕事が出来るよう支援していきたい。




(4) 障害者の働きぶりについて各担当者からのコメント
以下、担当者から障害者を雇い入れる際に伺った主なポイントは以下の通りである。
○花回廊
Aさん、Bさんともに一生懸命頑張っている。Aさんは、自家用車で通勤、聴覚障害のため農機具等の動力機械は距離感等の問題もあり、万が一のことがあればと考え携わっていないが、一般の人の仕事ぶりと変わらない。
Bさんは、クリーンスタッフの一員。シャトルバスで通勤、チーム編成のもとで、トイレ掃除を日に3~4回、ペアで業務にあたっている。
一般的に広い園での勤務ということもあって、全員が一堂に会することが少なく、職場になじめない事も挙げられる。
当初Aさんは筆談で仕事のやりとりをしていたが、現在は日常の仕事は携帯メールがコミュニケーションツールとなっている。支障は全くないが直接の語りかけが少ないのではと感じている。
Bさんはコミュニケーションが取りづらい点が挙げられる。どうしても人間関係がネックになりがちとなる。職員間の意思疎通が少なくなりがちである。ツーペアでの仕事、声かけ、目配りなどを心掛けている。
立て込んだ仕事、大勢の中での仕事も難しくなりがちとなる。
雇用する際、注意する事について
(1) 立て込んだ仕事は控え、チームで、ペアで業務にあたらせ、仕事を一つ一つ覚えてもらう。
(2) 本人にストレスがたまらないよう、なるべく同じ作業を繰り返し担当させている。
(3) 声かけ、目配りする。何か困っていることがないか、早く察知して解決にあたる。
(4) 現場を預かるスタッフは、本人の能力を図り、仕事を具体的に指示する。
チェックし、わかりやすく改善点を教えていく。
○東郷湖羽合臨海公園
仕事に取り組む姿勢はとてもまじめで、指示された事はしっかりこなしている。しかし、業務などが早く終わって時間が余ったりした時、次にどうしたらいいか、人に聞いて行動が出来ないので、早めに指示をすることが必要である。
仕事を教えたり、指示をだす時は、丁寧にやさしい口調で指示を出すようにしている。
(1) 雇用する前にどの程度の障害レベルで、どのような作業が出来そうか事前に打ち合わせをする事が重要である。
(2) 本人の性格、普段の生活振り等も把握しておくと、職業生活面での課題に対処するときの参考情報となる。
(3) コミュニケーションを多く取ることが大切である。
(4) 指導者に適切な人をつけ、やさしく接してあげる。
(5) 毎日同じ仕事を続けることで、本人の満足度・達成感の充実を図る。キチンと褒める事が大切。
(6) 注意する時は怒るのでなく、キチンと説明をする。
以上が各施設で実際に指導している担当者のコメントである。目配り、コミュニケーションなど、存在を認め仕事に自信を持ってもらうことが大切である。
3. 障害者の支援体制と業務ステップアップ
○採用
・ 職場実習を経て平成20年4月、同年6月、21年4月それぞれ1名の障害者を雇用
・ 各園長が責任者、担当者を決定する
・ 一般事項を説明
・ 各担当者は障害者に職務の内容を明示
・ 各担当者はきちんとした作業のやり方を指導
○現状
・ 相談事・仕事内容など、Aさんとは随時筆談であるが、業務配置後は携帯メールでやりとり
・ 現在は、機械・動力を使わない園芸スタッフとクリ—ンスタッフでバックヤードの仕事が主体
○今後
全体に関して
・ サービス業の一員として、お客様とのコミュニケーションができる(お客様への「あいさつ」、お尋ねごとなど)よう訓練する。
・ 職員に対して、障害者の仕事に対する理解と配慮。仕事の進め方、具体的な仕事の取り組みについての指導を強化する。
Aさん
・ 機械・動力が扱える工夫を考え、園芸スタッフとしてすべての仕事ができるよう育成する。
Bさん
・ 仕事の種類を増やすとともに、クリーン業務が確実にできるよう育成する。
Cさん
・ 仕事の種類を増やすとともに、クリーン業務が確実にできるよう育成する。
4. 障害者雇用に関する今後の展望と課題
指定管理業務を行う当事業団にとって、5年が1つのサイクルで対応しなければならない。と同時に、お客様を迎え入れるサービス業である。限られた予算の中で運営していかねばならない。これらをクリアするためには、一人ひとりの職員の生産性や職業姿勢が大きなポイントとなる。
現在、7施設のうち2施設で障害者を採用。仕事はバックヤード的な仕事であるが、お客様との接触の機会はあり、充分なコミュニケーションがとれないが、この点について、どこまで可能かを考え実行していかなければならない。
又、障害者自身も仕事を通じて、一人の人間として成長してもらうためにも園内スタッフは、障害者への理解と仕事能力の向上を目標とする。
障害者の自己実現をよく理解し、ライフスタイル向上の支援、その前提の一つになる仕事の充実のため、ステップアップ支援の責務が雇用者側に課せられている。
障害のない人もある人も同じという視点、こちらから積極的に声かけなどアプローチし、スタッフの一員であるという存在と役割を認め、それを発信し続けることにより、自信を持ってもらう。そうした地道な実践を通じて仕事がステップアップできるような仕事内容を考えていく。
ともに学び合い、従業員全員が一緒になって、お客様に喜んで頂く施設づくりに励んでいきたいと考えている。
また、職業生活相談員を配置して、障害者の方の橋渡しをする事が大切と考え、実践に移していきたい。
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