元気に自立を目指す 学内環境整備チーム 愛clean
1. 事業所の概要
愛媛大学と愛媛大学附属特別支援学校との連携の下、平成21年4月、愛媛大学人事課環境整備室学内環境整備チーム「愛clean」設立。主に愛媛大学構内の講義室、廊下、階段、トイレなどの清掃とごみの分別を行っている。従業員数は全員で8名、うち障害者が7名、指導者（室長）が1名。個人の能力に応じながら少しずつ清掃範囲を増やし、自分で清掃方法を判断し要領よく清掃できるように取り組んでいる。楽しみや生きがいを持ち、生き生きと過ごせるよう、「元気に自立を目指す」を目標とし、様々な機関と連携を取りながら、障害者の自立を目指している。
2. 障害者雇用の経緯
愛媛大学に障害を持つ人を雇用したい、障害を持つ人の素晴らしさを伝えたいという思いから、愛媛大学と愛媛大学附属特別支援学校との連携の下、仕事内容、位置付け、職業教育などについて数年をかけ計画された。仕事内容が清掃に決定してから、主に愛媛大学附属特別支援学校の卒業生を対象に1年間の研修を行い、清掃の基本を身に付け、「愛clean」が設立。委託業者から徐々に仕事を移行し、現在では多くの場所の清掃を行い、愛媛大学に貢献している。また、愛媛大学附属特別支援学校の高等部では、職業教育の一環として、愛cleanで作業学習を行っている。卒業後、愛cleanに就職する生徒もおり、障害者の就労と自立、事業の拡大を目指している。
3. 取り組み内容
（1）作業工程
主に、愛媛大学構内の講義室、廊下、階段、トイレ等の清掃を行う。基本的に一人で行動するので、見通しを持ち、時間内に清掃することができるように、個人に応じてホワイトボードを活用している。ホワイトボードには清掃場所や時間などの1日のスケジュールが書かれており、終わるたびに磁石をつけ、次に何をすればいいのか目で見て自分で行動することができるよう工夫されている。また、全員が携帯電話を持ち、清掃が終わるごとや、困ったことがある時に指導者に連絡を取ることができるようにしている。お互いにすぐに連絡をとることができることで、円滑に仕事を進めることができている。夏休みなど、講義がない時は、普段では出来ないような場所を中心に、いつもより時間をかけて清掃を行っている。
（2）人的支援・社内体制
愛cleanでは、愛媛大学附属特別支援学校と連携を取り、社会自立に向けた青年期教育を行っている。給料の使い方や社会のルールなどを知り、経済観を育てることを目的とし、従業員は、週に1回仕事が終わった後に講義を受けている。働くことの意義を知る機会にもなり、社会的な自立につながっている。また、清掃の技術を向上させるため、清掃の専門の方から直接指導を受ける機会を設けている。従業員だけでなく、愛媛大学附属特別支援学校の教師も共に指導を受け、職業教育の質の向上を目指している。
家庭とも連携を取るために、毎日連絡帳を書き、やりとりを行っている。従業員のうちの2名はその日あった出来事も書き、1日の振り返りをするとともに、文章力の向上に努めている。
4. 取り組みの効果
日々の生活の中で、要領よく仕事をする力、自分で判断して行動する力、適応力、応用力を身に付けることができた。自分から進んで汚れている場所を見つけ、そこに合った方法で清掃する彼らの姿は、指導者が驚くほどのものである。
障害者Aさんは高等部を卒業して以来、なかなか良い職場に巡り合えず、4回の転職を経て愛cleanに勤めることになった。今ではチームリーダーとして、清掃の仕事以外に他の従業員のサポートなども行い、責任感や使命感を持って仕事に取り組んでいる。昼休みには仲間を誘い、外でキャッチボールをするなど、従業員同士良い関係が築かれており、周りから信頼され、頼りにされる存在である。Aさん自身清掃という仕事を楽しんでおり、働きやすい職場であると話してくれた。
愛cleanが設立されて以来、愛媛大学構内はいつも清潔だ。彼らの仕事は丁寧で、隅々まで行き届いている。暑い日も寒い日も変わらず熱心に仕事に取り組む彼らの姿は、就職や進路に迷う大学生に良い影響を与えている。実際大学生から「自分も頑張ろう」「一生懸命仕事に取り組んでいきたい」という、将来に対し意欲溢れる声を聞いた。今では、彼らと大学生は出会う度にお互いに大きな声であいさつを交わすようになり、学生の意識も変わってきている。障害者に対する偏見が薄れたり、ごみの分別や清掃がしやすいように、ごみの捨て方にも気を配ったりするなど、自分の常識やモラルを見つめ直す学生が増えているのである。障害者が自分から大学生に話しかけ、和やかな雰囲気で会話をする姿も見掛けられる。彼らと大学生は、お互いに良い影響を与え合う存在になっているのである。
5. 今後の展望と課題
より楽しく、より生き生きと仕事に取り組み、全員がどのような場所でも適応し清掃できるようになることを目指しているが、清掃範囲を広げるためには、雇用者も指導者も足りないというのが現状である。現在指導者は1名であり、清掃場所や清掃内容を増やす場合、一人ひとりに応じた清掃方法や、そのための支援方法を模索し、それぞれの従業員に一人で支援・指導を行うことが要求されるため、指導者の負担が大きい。同様に、従業員も一人当たりの仕事量が増えるため、今までのように、丁寧に時間内に作業を終えることが困難となる。職業教育を充実させ、様々な機関との連携や支援体制が整えば、障害者雇用を増やすこともでき、一人ひとりの自立にもつながると考える。
少しでも働きやすい環境にし、楽しみや生きがいを持てるように、障害の有無に関わらず、全ての人が共に協力し合い、お互いを理解し、支え合うことが大切である。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。
