事業所名

川村さんご有限会社

所在地

高知県高知市

事業内容

珊瑚製品の製造・加工、福祉用具の販売・修理

従業員数

25名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	5	珊瑚の加工、福祉用具の販売
内部障害
知的障害
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 障害者の従事業務、職場配置等
4. 取り組み内容
5. 取り組みの効果と課題

事業所外観

1. 事業所の概要

（1）事業の特徴

昭和43年（1968）、珊瑚製品の製造・加工業として高知市福井町に「川村さんご」設立。

昭和56年（1981）、「川村さんご有限会社」の販売会社として“TOSA”ブランドを中心に展開する「株式会社高知県珊瑚」設立。

平成19年（2007）「川村さんご有限会社」通販事業部としてインターネットによる「モンコライユ」発足。

平成21年（2009）、「川村さんご有限会社」福祉事業部として車いすの販売・修理等を行う「遊輪」発足。

珊瑚と福祉をテーマに多角的に事業を展開し着実に業績が伸びている。

（2）障害者雇用の理念等

珊瑚の加工業界で社会人としてスタートした川村社長。実は、中学3年生の時不慮の事故にあい車いす歴47年のキャリアを持つ。しかし、障害というテーマから逃げることなく、車いすの実業家として障害のない者よりももっと前向きに事業を進めている。

自分が働きやすい環境は誰にも働きやすいはずとの考えから、職場のスロープ、エレベーター、トイレ、バリアフリー等の環境づくりを早くから職場に取り入れている。

また、障害のない者以上に身体を守り鍛えなければならないとの考えから、スポーツを積極的に取り入れている。

社員もスポーツ好きの障害者が多い。スポーツは、健康な身体づくりと同時に、スポーツでの成長を仕事の自信にもつなげているようで、オンとオフをうまく循環させている。

“常に新しいことに挑戦、そこに未来が開ける”

・仕事は、障害の有無は関係ない。同じ職場の人間として向上して欲しい。

・好きなことをしながら、働けるうちは誰もが働く。

・社屋はみんなが使いやすい施設にする。

これが創業からの理念であり方針である。

作業（珊瑚加工）

2. 障害者雇用の経緯

創業社長が車いすではじめた会社であるから、障害者雇用は創業時からといえる。いわゆる障害者雇用は昭和60年からで、障害のない従業員と同じように、ごく自然に馴染んでいったといえる。以来、珊瑚加工職人として20年以上の勤務年数者もいる。

珊瑚製品は、障害者だからは通用しない。職場では、弱者だから障害者だからの権利をかざす者はなく、障害のあるなしにかかわらず社会に通用する良質の製品を、安定してつくれる技術力やデザイン力が求められている。障害があるから、ないからではなく、珊瑚加工職人としてどのような能力を持っているかである。

例えば、昨年から始まった福祉事業部の3人は、それぞれ別々の職場で働いていたが、車いすスポーツ（バスケット）を通じて集まってきた仲間である。車いすにめっぽう強い達人たちの集団である。

職場定着推進チーム（事業主・現場指導員・障害者代表の3名で構成）は、平成2年4月1日に設置され、社長の応援と社員一体の取り組みにより、専門性が高くしかもフレンドリーな職場となっている。

3. 障害者の従事業務、職場配置等

（1）珊瑚加工

珊瑚職人として一人前になるには約10年はかかると言われる。当社では入社後3年間（週2〜3回）一流の指導者から彫刻の基礎をしっかり学ぶ。普段からデッサン力を高める努力は必要。自分の腕で勝負するにはとにかく勉強が欠かせない。技術は障害と関係なく、売れる商品を作れば評価は高まる。

ここから15人の障害者が巣立ち、珊瑚職人として自立した者も多い。

作業（珊瑚加工）

（2）福祉事業部

営業事務の車いすの女性と、車いすを使いこなす男性2名が車いすの営業・修理を担当している。障害者としての経験を生かし、生きたアドバイスができる。「車いすは、足であり靴である。足に合った靴が歩きやすいように身体に合った車いすを！」専門性の高い発想が事業の根底にあり、さまざまな場面でのより具体的な提案が喜ばれている。

また、福祉事業部の仕事は、行政の補助金との関連もあり書類手続きもある。業務ごとに資格が必要であり順次取り組んでいる。ノルマはないが、独立採算制を取っており営業成績は順調に伸び、今後期待が持てる。

4. 取り組み内容

（1）雇用管理

勤務時間は、月曜から金曜日、午前9時〜午後5時30分で、土曜日は月2日週休2日制を実施している。障害者も全員正社員であるが、長く続けられるように健康管理には十分過ぎるほど用心している。身体的に無理がいかないよう勤務時間は弾力的に配慮される。

珊瑚加工部には、入社25年目を迎える職人もいるように定着率は高い。

福祉事業部の業務は、営業や納品もあり、各自が携帯電話を持ち、自動車で移動するのが基本スタイルである。また、各種資格等への研修や能力開発には積極的に支援している。

（2）活用した制度や助成金等

・ 障害者作業施設設置等助成金（営業車両）

・ 重度障害者等通勤対策助成金（駐車場の賃借）

作業

作業（受付中）

5. 取り組みの効果と課題

（1）障害者自身のコメント

・ 珊瑚加工担当

車いすスポーツのバスケットのつながりで入社、以来25年。社長に負けてたまるかと頑張ってきたようなもの。サンゴに穴を開けるだけでも、その玉が1つしかないものなら穴あけといえども経験と技術が必要。常に練習してるけどね」

・ 受付業務担当

車いす歴50年の女性。いつも笑顔で、とにかく明るい。携帯電話でてきぱきと応対している。自身の体験から「身体にあった車いすを使って欲しい。疲れが違うし、もっと機能的に動ける。何よりも生活の質が違ってくる。」と、この事業に燃えている。

（2）今後の課題と展望

当社には、そもそも障害者雇用という概念がない。車いすこそ使っているが、日常業務は障害のない者との区別があるわけではないし、待遇的に差があるわけでもない。障害のあるなしに関係なく同じ従業員として働いている。

働く意欲が大事であり、技術の習得には支援するが、あくまでも自己管理が基本である。能力開発や向上心は与えられるものではなく、自分を磨く気持がなければ成長は望めないはず。職場が仕事だけでなく、人生をよりよく生きる仲間たちの場となっていることが高い定着率につながっているようだ。

今後の課題とすれば、個々の職務の向上は当然であるが、これまでに磨いてきたそれぞれの専門性と職場のチームワークを生かして、高知の珊瑚業界にある考え方“珊瑚の美しさを世界の人に知っていただき、高知を世界の珊瑚の中心にしよう”の実現に向かって、トップ企業の自覚を持ち業務を通じて、率先して具現化に向かって貢献していくことではないだろうか。

施設（トイレ）

施設（エレベーター）