事業所名

西村青果株式会社

所在地

高知県吾川郡

事業内容

生鮮生姜の販売、香辛料の製造加工

従業員数

50名

うち障害者数

3名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	3	生姜加工の前処理、処理の補助
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 障害者の従事業務、職場配置等
4. 取り組みの内容
5. 取り組みの効果と課題

事業所外観

1. 事業所の概要

（1）事業の特徴

創業者である先代は、昭和26年（1951）仲買人としてスタート。

昭和59年（1984）、「西村青果株式会社」と法人化し販路拡張に取り組む。

当初は、依頼があれば一般青果も扱っていたが、近隣農家で栽培される生姜を事業の主力商品として特化する。

関連商品として、おろし生姜・キザミ生姜の他に、おろしにんにく・ゆず皮の加工をはじめとする香辛料の製造、ふきとタケノコの缶詰等の関連商品も拡充する。

平成11年には食品加工場・倉庫・事務所等の新工場も新設、各種機械設備を充実する。

現在、高知県産の生鮮生姜取扱い高は、年間約2,700トンで、出荷は県外が大半である。

（2）経営方針

経営の基本は、「安全安心な生姜」づくりへの取り組みである。そのために長年、農家との信頼関係を大事にしてきた。平成14年度からは、生姜の自社栽培にも取り組み、時代のニーズに合わせて減農薬、減化学肥料栽培をめざしている。現在、会社周辺の栽培をはじめ総計9.3ヘクタールに及んでいる。栽培から製品づくりまでの一貫により、より安全安心な生姜づくりの態勢が整いつつある。

平成21年からは、生姜生産農家（15軒）と「まるひら会」を結成し、農林水産省及び高知県認証を受けた特別栽培の5割減農薬栽培生姜を栽培し「土佐そだち」として販売している。

2. 障害者雇用の経緯

障害者雇用を検討するきっかけは、各養護学校の先生方の熱心な実習生の受入れ依頼であった。

平成10年から、光の村学園、日高養護学校、高知市立養護学校の「実習だけでもさせて欲しい」の依頼があり、受け入れてきた。足を運ぶ先生方の依頼とその後のフォローには頭が下がる思いがする。

実習生の研修では、日常の挨拶や作業の体得までだけでなく、通勤時のことからお金のことまで、親以上に親身となっている先生方のサポートがあってこそ、障害者の受け入れが可能となるといえる。

作業全景

3. 障害者の従事業務、職場配置等

全員が生鮮生姜部門に所属している。生鮮生姜のラインは、大きく分けて、生鮮生姜の洗い、選別、計量、箱詰の段階がある。主な業務は、生鮮生姜の洗浄と各段階でそれぞれ指定された場所に運んだりそれを補佐したりする役がある。

洗浄段階では、生姜洗浄機で生姜をきれいに洗う「素洗い」と「仕上げ洗い」、1日の作業が終われば水を流して生姜洗浄機をきれいにするという洗いがある。

例えば、洗浄は簡単なようであるが、単に生姜を水槽タンクに入れるだけでなく、どうすればきれいに洗えるか。夏場は傷つきやすいのでどんな配慮が大切か。また、水槽タンクを洗うには、単に水をかけるだけでなくどの程度まで洗うのか等、一定のレベルに達するにはいろんな作業と工夫を習得する必要がある。

10年選手の彼らの現在は、一定のレベルに達し、なぜそうするのかという理由を述べるまでになり、仕事に責任感を持つようになってきた。

コミュニケーションは発達したが、安定性においてまだ不安が残ることもあるが、周囲の従業員みんなもそのことを知っていて、うまくやっている。

4. 取り組みの内容

（1）障害者雇用の具体的な内容

従業員との関係は、特に問題となるようなことはなかったが、受け入れ時には事前に障害の特性等を説明し、周囲の理解を図っておいた。責任ある行動ができるのか、事故があった場合はどうするか等心配すれば限りがないが、障害者が職場に本当に慣れるまでは、身近に出身施設の支援者がいることによって相談もでき、働く者全てに不安を与えなかった。

単純作業に限られているが、仕事を覚えるまで繰り返し繰り返し行う。「つらい」とか「きつい」等との不平不満はまったくない。

作業に危険はないが、作業班長が時々声を掛け、集中して取り組めるようにしている。仕事を覚え慣れるまでには「もう帰る」と騒ぎ、支援者がなだめる場面もあったが、今や残業もしっかりこなしている。

作業／洗浄

作業／分別

どちらかといえば3K職場といわれる現場であるが、一生懸命に働いてくれている。

平成13年度に設置された「障害者職場定着推進チーム」は、事業主・工場長・現場指導員を含めた5名が構成員となり、障害者と従業員の間に立ち、作業の不安を払拭させる役割を果たした。

実習を通じて採用された障害者の一人は10年以上となり、平成20年度に開催された「障害者雇用優良事業所等表彰式」において、優秀勤労障害者表彰を受けた。さらに平成22年も一人、勤続10年に達し、先輩のように優秀勤労障害者表彰を受けることを楽しみにしている。共に職場に定着し、頑張ってくれていると会社としても喜んでいる。

（2）雇用管理

雇用形態は、障害者3名のうち2名は正社員、1名は準社員（ボーナス・退職金不対象）である。

勤務時間は、午前8時から午後5時まで、昼休みは正午から午後1時、休憩は午後3時から3時20分までで、実働時間は7時間40分である。

始業時間前に全員でラジオ体操をする。当然、障害者も一緒に体操をし、1日が始まる。

休日は、日曜・祭日および市場休業日（月2回で水曜日が多い）である。

賃金は時給計算で最低賃金を適用している。

昼食は、食堂でみんなと一緒にとり、従業員との交流もあり、社内行事である社員旅行にも参加している。例年、決算前の9月に実施し、みんな楽しみにしているが、昨年は農家の方も一緒に伊勢神宮への一泊旅行であった。

（3）活用した制度や助成金等

・ 業務遂行援助者の配置助成金

・ トライアル雇用奨励金

作業の様子

5. 取り組みの効果と課題

（1）コメント（男性 32才）

「もう12年になる。仕事は楽しい」「今は生姜の良し悪しがわかる。夏場は傷みやすい。臭いでわかる。油っぽい臭いがつくがよ・・・」「社長が出張しても、売れん時は心配やねえ」

「新居のホームで暮らして7年になるが友だちもいるし、何より先生が色々教えてくれる。給料は病気になった時のことも考えて貯金をしている。随分貯まったよ」と得意げに金額を披露してくれた。

日曜日には、県民プールで泳ぐのが楽しみだとか。

「仕事は何でもできるようになりたい。今度は集荷や配達をしてみたい。」が、車の運転免許は「まだ、先になる」とのこと。仕事に自信を持ち、生活設計も立てている。自転車で毎日元気に通勤している。遅刻は一度もない。

（2）今後の課題

主力商品は生鮮生姜である。毎日形が違えば、品質の良し悪しもある。現場での判断力がどこまで発揮できるかである、現状以上の雇入れの要望は一足飛びには無理だろう。現状では、3名が限度ではないかということであるが、彼ら自身は立派な戦力として貢献している。同一場所ではひとつだけの作業となり応用は期待しにくい。しかし、生活面は学校でよく準備されてきているし、何よりも真面目である。

今後の方向としては、単純反復作業は限定されているが、10年選手になった彼らに次のステップは何かを考える必要があるかもしれない。障害者といえども個性があるし、得意も異なる。そうした点を一様に捉えるのではなく、各人をそれぞれ評価していく視点も必要であろう。それには、障害者自身が適材適所を生かした実績づくりと、周りからの支援によってさらなる作業意欲を高めていくことが必要といえる。

同時に、経営者側のさらなる障害者への理解と職域の拡大をお願いしていきたいものである。

ゆずの加工