限りある資源のリサイクルと福祉の共存を求めて
- 事業所名
- 株式会社グロウ・イーグル
- 所在地
- 長崎県佐世保市
- 事業内容
- 再生資源卸売業及び古着販売業
- 従業員数
- 43名
- うち障害者数
- 13名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 2 缶・ペットボトル選別・資源運搬 内部障害 知的障害 9 缶・ペットボトル選別・ウエス製造 精神障害 2 ウエス製造 - 目次


1. 事業所の概要(事業内容)
平成10年6月に「リサイクルを通じて限りある資源を大切に子供たちの未来に美しい環境を残したい」との経営理念から資源物(古紙・アルミ缶・古布等)の選別作業を通し、障害者が自立できる雇用施設として設立した。
☆社名グロウ・イーグルの由来
天空に舞う鳥の王者ワシのように力強く巣立ち、
障害者が社会復帰出来ることを願い命名した。

平成11年6月より操業を開始し、操業時は長崎県北部で唯一の雇用従業員が障害者のみの事業所として注目された。
事業内容はリサイクル品を回収して以下の3事業を行っている。
・古紙分類(新聞・雑誌・ダンボール)・・・・・・・・・・・・・製紙原料工程作業
・リサイクル分類(アルミ缶・スチール缶・空きびん)・・再利用工程作業
・古布分類(古着・ボロ着)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・古着・ウエス裁量工程作業
また、事業を継続展開していくため許可・認可等の取得が不可欠であり以下を取得した。
・ISO14001認証取得
・廃棄物再生事業者登録
・一般廃棄物収集運搬業許可
・計量証明事業登録
・特別廃棄物取扱
上記登録、許可事業者として経営理念に恥じない姿勢をモットーとして事業展開している。
2. 障害者雇用の経緯と現状
ある日突然、当社へ熱心な就職活動の指導者が障害者とともに訪れ、「三日間だけ仕事をさせてください」と大きな声をあげて幾度となく頼まれた。当時の強烈な印象が残っておりこれが障害者雇用のスタートであった事がよみがえってくる。
後々、支援者の本音によれば、どこの会社を訪問してもことごとく断られて最後の会社と腹をくくり、「この会社に頼むしかない、最後の会社だ」と繰り返し教え、「私が大きい声をあげるから、あなたも大きな声をあげて、頼み込もう」とのことであった。二人の情熱が伝わり、感激して「何とか採用してみましょう」と言うことになり、その後、職場実習を経て平成11年4月1日採用に至ったことが初めての障害者雇用で、懐かしく忘れられない雇用の経緯である。
その後、面接と職場実習等を繰り返し従業員が6名(身体2名、知的4名)となり事業がスタートした。このうち3名は職場適応訓練を経て雇用に至った。その後も能力に応じた職場配置を行い、重機運転資格取得(フォークリフト運転資格)を勧めるなど、幅広い仕事指導と本人の可能性を伸ばす努力を行っている。
また、障害者就業・生活支援センター、生徒、家族、就労支援施設指導員の出席のもと、会社説明会の開催及び工場見学を実施し、その後、就職希望者に対して職場実習、トライアル雇用を経て雇用に結びついたことが取組みの経緯である。
3. 障害者の取り組み内容
・操業当初、従業員は障害者だけでスタートしたが、業務遂行に際して対応の方法等が皆目検討がつかず、手探りの状況がしばらく続いた。ハローワーク(公共職業安定所)・社会福祉法人・支援学校・障害者職業センターの支援を活用し、雇用管理(出勤、出退社時の挨拶等)業務管理(作業手順等)を行う障害のない社員を配置し基本的行動を行った。雇用に当たっては職場見学、職場実習などを経て障害者自身が勤めたいと結論が出た場合に受け入れる配慮がなされている。このような取組みの中で障害者の雇用については、各手順を親切に行いながら採用に結び付けるという事業所のイメージが確立されてきた。
・雇用後、各工程に就労した本人はもちろん、家族や支援者等からも雇用条件、職場環境、人間関係などに不満がなく大変喜ばれている。また、就労の場を確保でき、社会人・組織人として自身の生活にハリができ、給料日のあとは貯蓄、買物の楽しみができ仕事に行く事の楽しさが皆から聞かれた。
(1)募集、採用及び労働条件
・ハローワークに登録している求職希望者を数多く面接してトライアル雇用・ステップアップ雇用を活用して雇用に結びつけていく。
・社会福祉法人及び長崎障害者職業センターのジョブコーチ支援を積極的に活用していく。
・職場実習を取り入れ職場環境及び実際に作業を行っている現状を実際に見ていただくなどの体験する機会を多く持ち就職の自己判断を行って行く。
・特別支援学校よりの職場実習を積極的に取り入れ本人、家族、支援者を交えて説明会を定期的に開催する。
・雇用条件として、勤務時間は午前9時から午後4時まで、休憩は体調等の配慮のために1日70分の休憩時間を取っている。休日は日・土・祝として完全週休二日制となっている。賃金は時給賃金制を取り入れており、社会保険は雇用・労災に加入している。
(2)障害者の特性に応じた職場配置
・まず、本人の希望により各部門への職場実習へ入り、トライアル雇用期間の中で本人の特性を把握し、別部門へ配置転換できるような職場環境にしている。
特に機械類を扱う部門への配置は慎重に行われている。
・機械類の扱いは安全管理のため注意表示を行い、事故防止に配慮している。
・工場内の整理整頓はもとより、広い通路の確保(フォークリフト移動等を考慮して)を行い、歩行に際しての配慮もされている。
なお、障害者が働いている部門は次のとおりである。
イ、製紙原料工程(古紙分類)
古紙のリサイクルは、繊維の再生利用が原点であり繊維以外の異物混入は再生上の障害になる。又重大な障害となる異物・・・金属類・布類・ゴム・ビニール・フィルム・プラスチック類・焦げた紙等は排出者の段階での注意が不可欠である。
古紙使用を行う製紙工場は異物除去装置を備えているが、事業所責任として分別の段階で混入等に十分注意して作業を行っている。
・施設、設備として
古紙選別機(雑誌・新聞)
古紙梱包機(オートマチックベーラー)を利用して自動梱包される。


ロ、再利用工程(リサイクル分類)
搬入されたリサイクル品の開封作業は、第1段階として異物混入の有無チェックから始まる。現場責任者は危険物混入には十分な注意喚起を常に行い、事故防止に配慮して作業に当たらせている。
・施設、設備として
缶自動選別機(アルミ、スチール缶)を利用して選別して行い自動プレス機を利用して自動圧縮作業へと移っていく。
リサイクル処理品の移動はフォークリフト(障害者に資格取得者がいる)を利用してストック工場へ移動する。


ハ、古着・ウエス作業工程
この工程はかなり細分化されており以下の手順となる。
1.古着・ボロ布等の収集。
2.選別作業工程はベルトコンベアーにて古着・ウエス・不良品に選別する。
3.洗濯・乾燥作業工程・古着へ再利用はウエスへ加工の選別をして洗濯機・乾燥機を利用する。
4.仕分け作業工程は品目ごとに(白メリ・色メリ・タオル)仕分けする。
5.裁断作業工程はウエス加工物を金具・ボタン等を除去後裁断となる。
6.計量作業工程は裁断後ウエスを規定重量(1kg)に計量を行う。
7.袋詰作業工程は計量後に規定木型にて型を整えビニール袋詰めを行う。
8.検針作業工程は検針器にて金属等の混入の有無検査を行う。
9.;結束作業工程は同一種類ウエスごと5kg単位にて結束作業を行う。
10.完了・在庫置場に格納作業を行う。


(3)教育訓練
・事業主は能力に応じた職場配置を行い、重機運転取得を勧めるなど幅広い仕事指導と本人の可能性を伸ばす努力を行っている。
・能力開発として希望者にはフォークリフト資格受験の機会を与えている。
・リサイクル品の回収等社外への集配業務に同行させるなど、ほかの業務等の見聞を広めることを一部取り入れている。
・分別後の再生資源とならない廃棄物のクリーンセンターへのゴミの搬出同行業務を取入れ最終処理場の確認業務に当たらせている。
(4)職場適応を図る雇用管理
・長崎県雇用開発協会主催で開催された、障害者職業生活相談員資格認定講習を受講して、2名が資格を取得して私生活、業務上の問題解決のために対応している。
・障害者の生活の場である通勤寮へ出向き、各人が抱えている問題点や各要望等を聞き働きやすい環境構築に勤めており、さらにこの定期的訪問が事業主と従業員との信頼関係や職場定着へ繋がり又チームワーク構築にも寄与している。
・家族を含む就労希望者の定期的な事業所見学を実施して、就労現場を直接見ていただき、さらに家族との意見交換を行って採用した場合の会社と家族との密接な連携・協力についてもお願いする機会を設けている。
(5)職場環境・福利厚生・健康管理・休憩室
・休憩時間の配慮として昼休み以外に、夏場・冬場は特に体調管理を兼ねて午前、午後に休憩時間を取っている。
・精神障害者用として通勤用駐車場を確保した。
・トイレタイムは集中しやすいためトイレの増設、また歩行移動のために施設の一部バリアフリー対応を行った。
・休憩室は昼休み、短時間休憩に対応するために横になれる配慮から畳み敷き等の環境整備を行った。
・精神障害者及び知的障害者への通院・服薬等への時間取得及び通院日を事前に申告させ、取得の配慮を行っている。
(6)活用した制度、助成金等
・公共職業安定所の各種給付金を活用した給付金としては
*新規雇用・特定求職者雇用開発助成金
*障害者試行雇用(トライアル雇用)・試行雇用奨励金
・独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(当時)・都道府県雇用開発協会の各種助成金を活用した助成金として、障害を克服し作業を容易に行えるように作業施設の改造、作業設備の整備のために活用した助成金
*障害者作業施設設置等助成金(第一種)
・選別用コンベア・検針器・裁断機・洗濯機・乾燥機
障害者の雇用管理のために介助等の措置を実施する費用として活用した助成金
*障害者介助等助成金
・業務遂行援助者の配置助成金
また、関係機関の各種支援を活用し、働く環境整備等ができた。
4. 障害者の今後の取り組み
経営理念と社名由来の二本柱を常に遵守し、今後の雇用に向けて邁進したい。
業務内容は工場現場にての作業であり、デスクワークのようなきれいな仕事ではないが、仕事の成果としての商品は社会に貢献しているとの思いで取り組んでいる。
会社の方針としては、受入れた以上は、
①個人の個性を重視し、能力を引き出す。
②組織人として甘えは許さず、厳しく教育する。
③働く以上は共に苦楽を乗り越え楽しい雰囲気、職場作りを目指す。
また、以上を目標に支援者、家族、就職希望者へ対して会社説明会を行い、また職場実習等の経験を踏まえて、ハローワークのトライアル、ステップアップ各雇用を経て雇用へ結び付けていきたい。場合によっては障害者職業センター、社会福祉法人のジョブコーチ支援も積極的に取り入れていきたい。
社会経済不安の中に、障害者を雇用するのは大きな壁があり、又限界もあるが、このような時代であればこそ、厳しい環境を乗り越えて、更に一人でも多く雇用しようと頑張っていきたい。
雇用後能力に応じた職場配置を行い、会社の戦力として明るく元気に自信を持って仕事に従事できる事業所として、障害者雇用に積極的に取り組んでいく。
地方の一企業から全国の障害者の方々又福祉関連機関に少しでもこの取り組みが今後の参考になればと常々思い経営に当たっている。
・工場は住宅地より離れて位置しており騒音等に配慮して建設された。
・リサイクル品の地域住民への還元を念頭において経営を行っている。
・事業所内に古着事業部(激安古着屋)を併設しており地元住民はもとより近県からもお越しいただいている。
・定期的に大売出しののぼりを立てPRを行っている。
・古布の再生を生かした事業より生まれ変わった商品は洋服・和服・輸入品ブランド品と多岐にわたっている。取扱商品は幼児からご高齢者まで男女問わず各層ごと取り揃えている。価格は激安(100円~)であり地域への還元がなされている。
・表彰事業所として以下の優良事業所表彰を受賞している。
平成12年11月 | 佐世保国際ロータリークラブ |
平成13年 6月 | 佐世保公共職業安定所 |
平成13年 6月 | 佐世保雇用対策協会 |
平成13年11月 | 社団法人長崎県障害者雇用促進協会 |
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