気ままに、自分らしい暮らし ~共に楽しく笑顔で暮らそう~
- 事業所名
- 社会福祉法人紫雲会 紫雲荘
- 所在地
- 大分県豊後大野市
- 事業内容
- ユニット型特別養護老人ホーム
- 従業員数
- 139名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 3 クリーニング作業、高齢者介護、 介護補助業務 内部障害 知的障害 1 介護補助業務 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要
(1)事業所の業種 ユニット型特別養護老人ホーム
(共同生活室、浴室、医務室、調理室、洗濯室、汚物処理室、介護材料室、事務室などを有する入居定員10人以下のユニットが16ユニット)
(2)事業の内容
高齢者の介護全般:介護を必要とする介護度4以上の高齢者が自立的な生活を実践する際に必要な支援等暮らしのお手伝い。
(3)障害者雇用の状況
従業員数 | 139名 | |
内訳: | 正規(介護福祉士の資格保持者)職員 83名 長期(臨時;介護職員の資格を持たない者)職員 7名 短期(臨時・夜勤がない;ヘルパー資格取得者)職員 24名 パート(臨時)職員 25名 内、身体障害者3名(A,B,C)、知的障害者1名(D) (正規職員1名;B、短期職員3名;A,C,D) |
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仕事内容 | A:用務員(洗濯業務) B:高齢者介護・・・雇用後、介護福祉士資格及び自動車免許取得 C:介護補助 D:介護補助・・・ヘルパー3級取得 *(今回の取材対象者) |
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勤務態様 | 早番(7:30~17:00)日勤(8:00~17:30) 遅番①(8:30~18:00)遅番②(9:30~19:00) 半休①(午前4時間)半休②(午後4時間) 夜勤①(17:00~7:30)夜勤②(17:30~8:00) 夜勤③(18:00~8:30) |


2. 取り組みの経緯、背景(取り組みを実施するようになった経緯や背景)
施設長は、「平成16年、身体と知的に障害を持つ青年(B)をハローワークなどから紹介されたことに始まる。職歴経験もないB氏は、世間で働く機会もなく挨拶も苦手のようで、得意なことも聞けなかったが、素直な性格が見て取れたのでまずは用務員として洗濯業務のお手伝いをお願いした」ことが最初の障害者雇用の契機であると話された。「B氏のその後の勤務状況は、感心の一言で通勤には徒歩で1時間をかけて、四季折々の厳しい環境にもたじろぐことなく遅刻することなく勤務、黙々と先輩の指導に従う姿は障害のない従業員でもまねが出来ない程の勤労意欲を感じさせられました」「ある時、先輩職員の他の職種との争いに、彼は、冷静に『いつものことです』と応えたことに成長の証を感じ、洗濯業務を新規採用者に当て、試行的に【介護補助業務】をお願いした。自らもこの仕事を希望していたらしく種々の仕事を覚えるのに多くの時間を必要としなかった。苦手としていた人間関係の克服もクリアした」「その後、自動車学校に通い運転免許証を取得したり、介護福祉士の資格を取得したりするなど努力の日々を重ね、3年後晴れて正規職員として採用され現在に至っている」と話された。
このように最初の障害者雇用は順調に進み、10年以上安定・継続ができている。しかし、重度の知的障害をもつD氏の場合はいささか勝手が違った。今では欠かせない人材として健闘しているD氏、採用当時は多くの課題を抱えていた。どのような取り組みがあって今日の戦力に育成できたのか、指導・教育の経過を担当主任が語ってくれた。
3. 雇用の促進と安定のための取り組み
施設は特別な人が暮らす場所ではなく、ふつうの人が普通に暮らす場所、特にユニット型は一人ひとりの意思と人格を尊重するため、ユニット毎に食事・入浴・排泄が出来、少人数の家庭的な雰囲気の中で生活する場所、その際に利用者相互が社会的関係を築き、自立的な日常生活を営むことができるよう支援することが目的である。この目的を達成するためには個々のニーズに応じた支援が必要であるが、ヘルパーの資格を有しているとはいえ知的障害を持つD氏にとって解決しなければならないハードル(課題)がいくつもあった。
以下は彼女の具体的な課題の一例と解決の方法である。
(1)採用当時のD氏の課題
○「はい!」、「分かりました」と、返事や挨拶はとても元気よくて感じがいい。しかし、「分かりました」は、「布団を敷くことが、今しなければならない仕事である」ことが分かったのであって、「敷き布団と掛け布団の方向が、敷きは縦、掛けは横になっていたり・裏表がいい加減であったり、しわが入らないように敷くことに困難があったり等々」、また、シーツの四角にひもが縫いつけられていて布団の角をそれに通せばシーツが掛かるようになっているが、前後・方向感が曖昧なため何度もやり直す等、布団を敷いたりシーツを掛けたりする際に当然留意しなければならない「きちんと布団を敷く」と言うことが理解できているわけでない。結局は他の職員が「点検」し「敷き直す・やり直す」など二重、三重の仕事になってしまう。
○掃除等も同様で、白いところが残っていたり、物を動かしてそこを掃く・拭くとか、動かした物をきちんと元の通りに戻したりする等の応用力に欠ける。見えている部分だけを掃除機で吸い取ることが掃除だと思っているところがある。
○危険回避の優先順位が理解できにくく、とっさの出来事に間に合わない。
○一度に連携する仕事をお願いすると、必ずし忘れている仕事がある。
○介護の際にマニュアル通りにするために、とても時間がかかり最終的にわからなくなってしまう。
○他のユニットと協同・共有使用するスペースでの仕事(例えば、洗濯物を取りに行く、オムツを出す、移動介助等)は必ずクレームがついた。
○米を研ぐ際には、水を捨てるときにお米を一緒に流してしまったり、その他の洗い物では洗剤等の適量がわからずに使いすぎたりすることなどが目立った。
○届けもなく勤務場所を離れることがあり、探すことがあった。
・・・・・・等々多くの課題があった。
(2)課題解決への取り組みの実際
○障害者の配置、定着、職場適応・能力開発のために
*身体障害者と違い、知的障害者がどのような方かの理解不足のために指導のあり方に戸惑うことが多かった。セミナーや講習会に積極的に参加させてもらい、学んだ内容を職場の職員に伝え、ケース会議で時間を掛けて話し合いを通して理解啓発に努めた。例えば、季節が変わると布団の種類が異なるため、新たな戸惑いが出てくるが、丁寧に「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、うまくいったら誉めて教える」ことを指導の方針として根気よく指導すれば、多少は時間がかかるが、絶対にできるようになることなど、確信を持って職員に徹底することで、お互いの信頼関係もでき、定着の一助になった。
*本人が自信を持っている「出来る仕事」をお願いする。あるいは、例えばシーツの角と布団の角がマッチするような印をつけるなどの工夫や、お米を研ぐときはザルとボールを重ね合わせて研ぎ、ザルを持ち上げることで水が落とせるなどの工夫による「できる状況作り」に努め、できた時はみんなで賞賛し、仕事への意欲と自覚を高めていった。
*一度できたからもう安心ではなくて、条件反射的に体得(身体で理解)できるようになるまで繰り返し学習することで定着することを確信している。根気強さが決め手である。
○組織の再編で働きやすい職場作りで家族的な雰囲気を構成
*10人の利用者に対し、6人の職員でみる単位のユニットが16軒ある。D氏の担当(所属)する『初凪』ユニットには、若い層ばかりではなくシルバーの契約社員など幅広い年齢層の職員を配置した。人間関係で何かトラブルがあっても母親的な存在のシルバーの契約社員が居ることで、一緒にする仕事を楽しみにしたり、気軽に相談したりすることができる。
また、毎日見慣れている人ばかりなので、場合によっては利用者が教えてくれることもある。あるいは、人生の先輩ばかりなので、見本があちこちに居ることになり、まねて学ぶことができる。布団の敷き方が間違っていても丁寧に教えてくれたりする等、10人に6人の編成が家族的な空気を創っている。
*楽しく仕事をやってほしいと願っている。『できる状況作り』は当たり前のことだが、利用者さんとのコミュニケーションがとれることが重要になってくる。あまり、話題をもたないD氏には、D氏から話し掛けるよりもお話好きな利用者さん、利用者さんから話し掛けてくれるような方とコンビを組み(担当者を固定)、聞き上手になることや言葉だけでなく物を媒介にしてコミュニケーションが図れる工夫を指導するなどの配慮をしている。
○報告・連絡・相談の徹底で安全・危機管理を
*分からないときは訊きなさい、質問をしなさい。利用者さんから離れるとき、部屋から出るときは報告・連絡の徹底を指導している。
*更衣の担当を特定している。繰り返し接することで介護技術の向上につながり、親しみの度合いが違う。トラブルが起きたときは一時担当を変えることも配慮の一つである。
4. 障害者雇用による経営効果
○当初は職員の側に遠慮があって、職員が我慢することで物事を解決しようとしていたが、結局はフラストレーションがたまる結果となっていた。知的障害への理解が深まったことで、「叱るところは叱ってよいのだ、できたらほめよう」が徹底し、職場に和・輪・話が生まれた。
○施設には、高齢者で障害を持たれた方も多く入所しており、障害のある労働者が働いていることにより、入所者が遠慮なく話をしてくれるなど、コミュニケーションもうまく行われるようになってきている。
○入所者が遠慮なく障害のある労働者に悩みなどを話してくれることにより、入所者に対するサービスを見直すきっかけとなっている。
○知的障害者が基本に忠実に働き、がんばっていることにより、職員が普段見過ごしているような仕事を改めて確認することができている。
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