事業所名

株式会社日東

所在地

宮崎県都城市

事業内容

木製品製造（フローリング集成材）

従業員数

114名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	1	加工全般
肢体不自由	3	帯鋸の目立、製材、原板の横切
内部障害
知的障害
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯、背景
3. 障害者の従事業務、職場配置
4. 取り組みの内容、効果
5. 今後の展望と課題

事業所外観

1. 事業所の概要

株式会社日東は、宮崎市から南西約50kmの都城市に位置する。昭和26年に日東林業株式会社として設立し、平成3年に株式会社日東に社名変更した。平成20年には販売部門を分離独立させ日東フローリング株式会社を設立した。

当初は、建築用材の製材業として設立されたが、桧の高付加価値製品の開発に取り組み、桧端尺材を活用した桧フローリング、集成床板・壁板の生産が現在では主となっている。平成12年からは中国に進出し、サクラ、ナラ材を用いたフローリング並びに壁材の生産も行っている。

社是には「創意工夫」を挙げ、「日々新たな挑戦を怠らず、お客様のニーズに合った高品質、高性能で安全かつ健康的な付加価値の高い商品づくり」を進めている。そのため、間伐材を生かした環境にやさしい製品開発など意欲的に取り組んでいる。

組織構成は、販売部門を日東フローリング株式会社とし、生産部門の株式会社日東は、事務所、製材部、第1工場～第7工場からなる。従業員数は、生産部門の株式会社日東が96名、販売部門の日東フローリング株式会社が18名である（平成22年7月21日現在で、役職・パートを含む）。

障害者雇用に関する特別な理念は挙げられてないが、社長、専務も自ら現場で作業するなど、直接従業員と接して現場を知ることに重点が置かれ、障害の有無に拘らない同等な対応と対等な立場でコミュニケーションのできる環境が作られている。

マスコット「やるゾウ」

2. 障害者雇用の経緯、背景

障害者雇用については、特別に設けているわけではなく、工場内での作業が可能であれば平等に採用している。そのため、障害者全員が障害のない者と同様の雇用条件であり、区別することなく正規社員として雇用されている。なお、障害者の4名中2名は、雇用後に病気等で障害者となったもので、雇用条件はそのままである。

工場内の作業が可能な条件には、そのほとんどが製材機械を取り扱う作業となるため、軽微な作業もあるが「立ち作業」をできることが必要である。そして、最も重要な条件として、高品質、高性能で、廃材を無くすといったコストパフォーマンスに優れた製品作りを追求していることもあり、木材を見分ける高度な判断をする能力が要求される。

3. 障害者の従事業務、職場配置

従事業務は、障害のない者と同様に個々の能力や特性に応じた業務に従事している。現在、製材部、第1工場、第2工場、第3工場にそれぞれ1名が配属されている。

それぞれの業務内容は、工場ごとに製造ラインが組まれているので異なっている。たとえば、第1工場の障害者は、板を切断する横切りと選別、第3工場の障害者は原板の死節、抜節に穴を開け、埋め節を行う作業である。

両者に共通する点には、木材を見分ける判断力がある。無垢材の作業は、木本来の質感、風合いの魅力を加工後も失わないように、木の節の位置や大きさ、腐れ、カビによってどの部分を横切りするか、どの節を穴埋めするかなど一瞬に判断しなければならない。

現在雇用されている障害者4名は15年以上の勤務年数で、経験を積んだ熟練した判断力を備えており、各部署に必要な人材となっている。その一人の方からは「難しい作業が多く初めはできなかった。しかし、いろいろ教えてもらいながら、自分でも努力して勉強して、できるようなった。」と聞いている。今では皆に頼られる存在となっており、本人にとって非常にやりがいのある仕事になっている。

職場配置については、本人の希望に沿った配置を心がけている。雇用後に病気のために受障した社員については、それまでの立ち仕事に不安があったため、復帰後は軽作業への配置が検討された。しかしながら、これまでに身に付けた技術を生かしたいという本人の意思を尊重し、当初の配置で作業場をやりやすい環境にすることで可能にした。

「横切り」作業の様子

「穴あけ」作業の様子

4. 取り組みの内容、効果

全体的な取り組みとしては、2年前から工場内の状況を把握するために、リーダー制を導入した。現場主任をおき、月に1度の作業会議を開いている。従業員の配置状況、人間関係を含め、様々な報告をしてもらっている。トラブルがあった際には、本人から事情を聞くようにし、より細かな対応ができるようにしている。この取り組みは、作業効率の向上、コストダウンにも繋がっている。

安全教育は、毎日朝礼等で行い、危険な塗料を使うこともあるので、定期的な健康診断を行っている。また、使用する製材機械には安全装置を付けており、危険を回避できるようになっている。

従業員間のコミュニケーションについては、工場ごとに休憩室が設けられ、憩いの場となっている。また、社長や専務など従業員への声かけがよく行われており、障害者の一人は「元気が出て、ありがたい。」と述べていた。行事はミニバレー大会、忘年会があり、工場ごとの集まりもある。特に、忘年会については、工場ごとに様々な出し物をすることが恒例となっており、秘密練習をするなど皆が楽しめる一大イベントとなっている。

個々の障害者への対応として、股関節に障害のある方に対しては、段差のある所やトイレなどに手摺を設置し、また作業台を作業しやすい高さに調節してある。かがんだ作業など困難な作業の場合には従業員の仲間の方が自然に手伝ってくれる環境になっている。聴覚障害者の方への対応については、グループ内で、手話に興味を持ち勉強している従業員に支援してもらっている。身振り、手振りでコミュニケーションをとることもできるが、手話のできる従業員の存在は大きい。製材機械の電源の切り忘れや昼の時間のベルの音など、従業員の仲間が教えてくれる。

取り組み内容が予め決めてあるわけでなく、その時々によって対応を従業員と一緒に考える体制になっている。そのため、日頃の従業員とのコミュニケーションが最も重要なポイントになる。

5. 今後の展望と課題

株式会社日東は、30年程前まで「家具団地」として有名であった地域にある。現在は「木工団地」と呼ばれているが、毎月15日の団地内の一斉清掃は続けられている。空き地もいくつかあり、以前の活気が見られなくなった地域で、新しい製品開発に取り組む株式会社日東には活気があり、企業としての力強さを感じる。その力強さは、社長が言う徹底した現場主義が全員のやる気を育て、従業員同士の仲間意識から生まれてくるのだろう。障害者への対応を組織的に行う特別な感覚はなかったが、全従業員が普段から誰にでも様々なことを相談できるといった環境は、従業員自ら障害者をサポートできる体制になっている。

今後の課題を強いて挙げると、新しい世代の障害者雇用を考えた場合、その育成に相当の時間を要することである。現在雇用されている4名とも15年以上勤務し、ある意味職人ともいえる技術を身につけている。現在の良好な障害者雇用を今後も継続していくためには、これまでの経験を生かして、組織的な取り組みを徐々に進めていくことが必要と思われる。