「地域性」を重視して地元出身者を積極雇用し、20年勤続者を2名輩出した事例
- 事業所名
- 株式会社琉球ホテルリゾートオクマ JALプライベートリゾートオクマ
- 所在地
- 沖縄県国頭村
- 事業内容
- ホテル業
- 従業員数
- 250名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 1 総務 知的障害 3 清掃、スチュワード 精神障害 1 造園 - 目次
- ホームページアドレス
- http://www.jalokuma.co.jp
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)概要
昭和53年に「ヴィラオクマリゾート(現JALプライベートリゾートオクマ)」は設立された。開発にあたっては「自然との触れ合い」を基本テーマとしている。沖縄本島随一の景観、手つかずの自然のままのサンゴ礁群、紺碧の海と約1キロメートルにおよぶ白砂のビーチを生かしながら、他方では米軍が過去に使用していた宿泊コテージを改装して、他のホテルとは一味違うリゾートホテルづくりを指向している。自然の素材をそのまま生かし、ヤシとコテージタイプの建物を中心に10万平方メートルの空間をフルに活かしたトロピカルな雰囲気を醸し出すことを最大のポイントとしている。
沖縄では、本島リゾートエリアである西海岸の恩納村に多数のリゾートホテルが集中しているが、JALプライベートリゾートオクマはそのエリアからも車で1時間ほど北に走らなければならないほどの離れたところにある。そのため、周囲は大自然に恵まれており、従来のリゾートホテルとは一線を画した新たなリゾートスティを満喫できるよう工夫されている。
開発の方針としては、①滞在型リゾートホテルとしての位置づけ、②コテージ雰囲気を失わない建物の建設、③緑と花を絶やさない空間の充実、④トロピカルムード溢れる雰囲気の創造、⑤アイボリーを基調にした落ち着いたカラーコーディネーション、⑥滞在のお客様を退屈させない雰囲気及び遊びの創造、⑦地域社会に対する経済的、社会的還元という7項目を挙げている。この方針の7つ目にある「地域社会に対する経済的、社会的還元」という理念から、障害の有無に関わらず、地元国頭出身者の雇用を積極的に行っている。地元に強く根付いたホテル運営が特徴的である。
(2)経緯
企業の理念として、「地域性」をもっとも重視しており、障害の有無に関わらず、地元国頭で生まれ育った人を雇用することが企業の義務と考えている。そこで、平成2年に公共職業安定所(ハローワーク)の紹介で、地元国頭村出身の障害者を雇い入れたのが、障害者雇用のきっかけとなった。その後も障害者を継続的に雇用してきており、勤続20年間という障害者2名を含め、現在国頭村出身の障害者を合計5名雇用している。
2. 取り組み内容
(1)Aさん(女性)の場合
知的障害者であるAさんは客室や共用部分の清掃などの業務を行っており、勤続年数は約8年である。
採用当初は、障害のないベテラン社員が付きっきりで指導にあたった。仕事内容については1、2カ月でほぼ覚えることができて独り立ちし、ところどころで必要に応じて指導員が業務をチェックするようにしていた。また、入職後の約1年間はジョブコーチによる支援を利用してきたが、現在では完全に独り立ちしている。就業時間に関しては3パターンで固定されており、本人が混乱しないように十分配慮されている。仕事内容に関しては、一度に多くの仕事に従事させると混乱するため、本人の理解度を確かめながら何度かに分けて仕事内容を具体的に伝えるなどの工夫をしている。
・ Aさん(女性)の声
Q:実際に働いてみてどうですか?
A:楽しいが、昔より掃除場所が増えたので疲れることがある。
Q:困ったことはありますか?
A:場所の把握が苦手なため、お客さんに場所を尋ねられると困る。自分ではわからないので、ロビーで聞いていただくように促している。
また、働き始めたばかりの頃、清掃中にロビーにいたお客さんに「どいてください」と言ってしまい、激怒して帰ってしまったことがあり、今でも大いに反省している。
Q:何か困った時に相談する人はいますか?
A:課長さんがいる。また、周りには優しい方がたくさん居て助けてくれる。
Q:働いて良かったことはありますか?
A:一緒に働いている仲間が良い人たちばかりで良かった。自分が困っている時には早く気づいて助けてくれる。
(2)Bさん(男性)の場合
知的障害者であるBさんは、造園の植栽管理を担当している。障害者雇用の開始当初からの採用であり、現在、勤続年数20年である。主にホテル内に数ヶ所ある池の植栽管理などが主な仕事である。作業中に声をかけられたり、レストランの場所を尋ねられたりするなど、お客様との関わりを持つ機会がしばしばみられる。そのため、ホテル内のことなどを質問された場合などは、素直にわからないことは「わかりません」と対応するよう指導している。
また、就業時間はきちんと固定されている。万一予定に変更があった場合などは、混乱しないようなるべく事前に伝え、本人が納得するまで具体的に説明を行っている。また、説明する際は、分かり易い言葉でゆっくりと伝えるように心掛けている。
Bさんはとても真面目な性格であり、決められた作業をきちんと終わるまで続けるため、就業時間を過ぎても作業に熱中してしまうことがある。そこで他の従業員が頻繁に声掛けを行い、無理をさせすぎないなどの工夫をしっかりと行っている。
(3)Cさん(女性)の場合
知的障害者であるCさんはスチュワードの業務を行っている。Bさんと同様に障害者雇用の開始当初からの採用であり、現在、勤続年数20年である。障害のない社員と同等の仕事を特に支障なく行うことができるため、勤務上で特別な支援は現在行っていない。以前はシフト制を取っていたことがあるが、その際に通勤がしづらいということで、朝出勤に固定するという配慮がされた経緯がある。仕事の面ではすでにベテランの立場になり、今では後輩社員らの指導まで行っている。
(4)Dさん(男性)の場合
精神障害のあるDさんはトライアル雇用からの採用であり、現在1年目である。業種はスチュワードである。薬を服用しているため、朝早くの起床が厳しい。そのため、就業時間は遅い時間に固定されている。初めのうちは、病院などと連携を取るなど配慮していた。また、雇用1年目であるため、1日4時間という短時間での勤務となっている。
(5)Eさん(男性)の場合
内部障害のあるEさんは、ホテルレストランの調理場に配置されていた頃に手術を受けた。一時期休職していたが、職場復帰後、怪我などで出血した際に止血しにくくなるという副作用のある薬を服用しているため、業務上怪我などのリスクが少ない総務部に配置転換されている。また、就業上あまり負担がかかりすぎないように仕事内容等を配慮されている。働きぶりは、社内での信頼も非常に高いと思われる。
3. 取り組みの効果
仕事内容の配慮、就業時間の固定やその他の細かい配慮によって、仕事が定着し、障害者雇用の開始当初から在職していた2名が20年間働き続けている。また、長期就業している者は、新しく入ってきた後輩社員の指導も受け持つなど、ベテランとなって指導的立場にもなっており、社内キャリアアップが図られていると言える。その他にも、障害者が加わることで、場が和み職場の雰囲気がよくなっている。周囲の障害のない社員に思いやりの心が芽生えている。さらに、仕事に対する真剣な態度を毎日間近で目にすることで、他の社員の仕事への意欲が上がるなどの相乗効果がみられている。
4. 今後の展望と課題
知的障害者への支援においては、20年勤続者が2名在職しており、ノウハウが蓄積されて、その後の障害者への配慮においても効果的に機能していることがうかがえた。また、勤務上での配慮のみならず普段の従業員同士のコミュニケーションの充実がうかがえ、障害のある社員が困った時に、誰にでも相談できるような雰囲気が醸し出された職場環境であった。
一方、言語聴覚障害者を雇用した際に、コミュニケーションがうまくとれずに離職したという苦い経緯があった。そのため、様々な障害種別に応じての支援体制を今後充実させていくことが、強いて言えば課題であると考えられた。
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