事業所名

株式会社斎藤板金工業所

所在地

山形県鶴岡市

事業内容

精密板金・建築板金

従業員数

57名

うち障害者数

1名（身体障害下肢4級）

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	1	事務（コンピューター入力等）
内部障害
知的障害
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 障害者の従事業務・職場配置
4. 取り組みの内容
5. 今後の展望

事業所外観

1．事業所の概要

株式会社斎藤板金工業所は1937年、山形県鶴岡市に斎藤板金加工所として誕生した。1950年に商号を現在の斎藤板金工業所に改名、1967年に株式会社に改組した。最初は建築板金を主な事業としていたが、建築板金は冬季に仕事量が少なくなることから、農機具の部品製造を扱うようになり、さらに精密板金へと事業を拡大していった。現在では精密板金が事業の8割を占めているが、建築板金についても神社・仏閣の屋根葺工事などの特殊工事も扱っているため、引き続き施行を行っている。

斎藤板金工業所の企業理念は「金属のフロンティア」である。これはフロンティアスピリッツ（開拓者気質）で精密板金、建築板金の可能性に積極的に取り組む、という意味である。

斎藤板金工業所では企業の社会的責任は、板金を通してこれからの時代に何ができるのかを考え、企業と社員が一丸となってそれらに取り組むことであると考えている。

2．障害者雇用の経緯・背景

斎藤板金工業所では以前から、条件さえあえば障害者雇用を考えていたが、なかなかその機会がなかった。2009年、労働基準監督署主催の説明会に出席した際、障害者雇用についての話を聞いた。その後、同年9月にハローワーク（公共職業安定所）が雇用率達成指導のため直接事業所を訪ね、障害者の雇用について説明をされており、またその時に高齢・障害者雇用支援機構（当時）の助成金の説明も受けた。11月にハローワークに求人票を出し、それに応募されたのがAさんであった。12月1日から3ヶ月間のトライアル雇用を実施、2010年3月1日から本採用に至った。Aさんは下肢障害があり、歩行に多少困難があるため、事業所内のトイレの改修及び、手すりの取り付けを行った。改修工事にあたってはハローワークから山形県高齢・障害者雇用支援協会を紹介され、障害者作業施設設置等助成金の活用に至った。現在（2011年1月）、斎藤板金工業所の従業員は57名と、法定雇用率が適用される従業員数の最小限である56名をわずかに超えている状態にあり、Aさんの採用によって雇用率は1.75％となった。

Aさんが現在行っている仕事は、もともと女性従業員が1人で担当していた作業である。その女性が、今後、出産などにより一時的に仕事から離れる場合も考慮して、会社としては同じような業務を行える人を養成していく必要があると認識していた。そうした会社のニーズもあり、今回障害のあるAさんの採用に至った。

Aさんは、斎藤板金工業所に勤める前は調理師として学校給食の仕事に就いていたが、一日中、立ち作業が多いため不自由を感じ、体力的なこともあり身体に負担の掛からない仕事を求め、転職しようと考えてその仕事を辞めた。ハローワークに相談するとパソコンの職業訓練を受講するようアドバイスを受け、それが終了したところで斎藤板金工業所の求人の話があったとのことである。それまでの仕事とは全く異なるものであるため、就職には不安もあったが、トライアル雇用を経て少しずつ今の仕事に慣れていったとのことである。Aさんの着実な仕事ぶりに会社の評価も高い。

3．障害者の従事業務・職場配置

Aさんの業務は、取引先から依頼された図面をデータ化したものを、会社のフォーマットに従って入力するというものである（斎藤板金工業所ではこれを「生産管理システム」と呼んでいる）。材料の種類、サイズ、個数などを一つ一つ指示書に従って入力するのだが、扱うものが少量多品種のため、入力内容もかなり細かくならざるを得ない。Aさんが入力したものをもとに実際の板金作業が行われている。

Aさんは事務所1階にある総務課の一画で、他の従業員と机を並べて作業している。そこはもともと、現在Aさんが行っている業務を担っていた女性職員が作業していたところである。Aさんは本来の仕事以外に、総務の仕事（来客対応、電話対応など）も行っている。

Aさんの作業風景

4．取り組みの内容

斎藤板金工業所の取り組みを一言で表せば障害に配慮した「環境整備」である。

Aさんは下肢に障害があり、車いすは使用していないが、移動が多少困難である。そこで、Aさんに配慮した環境整備が行われた。具体的にはトイレ、手すり、駐車場である。

Aさんは洋式トイレのほうが使用しやすいのだが、洋式トイレは事業所内の工場（板金作業部門）にしかなかった。そのトイレを使用するには板金作業が行われている工場内を通り抜けていかなければならなかったのが、移動はAさんには不便であり、また危険（工場内の安全性はもちろん確保されている）かもしれないということで、Aさんの作業しているところに近い事務所内のトイレを和式から洋式に改修した。トイレの改修工事には高齢・障害者雇用支援機構（当時）の助成金（第1種作業施設設置等助成金）が活用された。

また、事業所は2階建てなのだが、階段に手すりが新たに取り付けられた。手すりについては、事業内容が板金であるため自前で設置した。Aさんは自家用車で通勤しているため、Aさんが使用できる駐車場を事務所の入り口に近い位置に設置した。

このようにAさんが会社で過ごし易いような物理的な環境整備が行われたのだが、斎藤板金工業所の取り組みはこうした物理的な面のみではない。Aさんが気兼ねなく働けるような配慮がなされている。例えば、斎藤板金工業所では毎朝、事務所内を従業員が掃除しているのだが、Aさんは1階を担当している。2階に上がるためには階段しかないので、移動が少し困難なAさんが困らないためである。それはほんのわずかな配慮かもしれないが、それだけでAさんは他の従業員と同様の仕事を負担なく行えるのである。

斎藤板金工業所ではAさんに限らず、従業員を大事にすることをモットーにしている。こうした細かい配慮の積み重ねの中で、Aさんはその力を十分に発揮することができている。

Aさんは、会社側の全面的な支援や山形県高齢・障害者雇用支援協会の勧めもあって、2010年度のアビリンピックやまがたのワードプロセッサ競技に参加した実績があり、更なるレベルアップを目指して次回の大会に意欲的である。

改修されたトイレ（和式→洋式）

階段部分に取り付けられた手すり

5．今後の展望

前述したように、斎藤板金工業所では障害者雇用について、「いずれは」と考えていた。それが今回、労働基準監督署の説明会に参加したり、ハローワークからの働きかけがあり、きちんと制度の説明も受けたことで、募集、採用がスムーズに進んだと考えられる。

斎藤板金工業所では、実際に機械を操作する部署での障害者の雇用は難しいと考えているため、それ以外の部署や作業であれば、指導する者を確保した上で、障害者の雇用を検討したいと考えている。