事業主側の想いと関係機関の関わりによって雇用が進んだ事例
- 事業所名
- 株式会社エイム
- 所在地
- 栃木県小山市
- 事業内容
- 自動車内外装部品の開発・製造・販売
工業・電気/電子部品の部品製造・販売等 - 従業員数
- 147名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 2 ライン業務 精神障害 1 部品梱包業務 - 目次


1.事業所の概要
大正14年、東京都内にラジオ部品製造を目的とするプレス工場を創設。その後、昭和31年に株式会社となり、昭和44年に栃木県小山市に小山工場が設立された。昭和62年に東京都品川区より栃木県小山市の東部工業団地内に本社工場が移設され、現在は小山市に本社工場と第2工場が設置されている。
現在は、自動車の内外装部品を中心に製造・販売等を行っており、内装部品ではセンタークラスターやアームレスト等、外装部品ではフロントグリル、バンパーグリル、プラスチックバイザー等が主に取り扱われている。平成14年にISO14001認証、平成17年にISO9001認証を取得。現在、従業員数147名(うち正社員40名)、うち障害者数が3名である。
2.障害者雇用の経緯と背景
現在、雇用している3名の障害者は、全員小山工場で働いている。
障害者雇用に至った大きな理由のひとつは、事業主側の強い想いであった。平成20年6月に代表取締役に就任した生方氏は、株式会社エイム入社以前に、仕事の関係で海外駐在をしており、様々な国を渡り歩いていた。ベトナムに駐在している際、枯葉剤に因って、身体に障害を持つ子どもたちが多くいた環境に刺激を受け、障害者に対し関心を抱くようになったと語っている。ベトナムに駐在中は、そういった子どもたちをなんとかしたいと考えていたが、具体的に何か行う機会は得られぬまま帰国した。しかし、帰国してからも街中や電車の中で、障害があると思われる人を見かけるたびに、どのように仕事ができる環境がつくられているのか、親亡きあとはどうやって生活していくのか等、障害者に対する関心は膨らんでいった。また、企業というものは、何らかのかたちで世の中の役に立たなければいけないという信念もあった。そういった想いがあった中、平成22年1月、栃木県壬生町にある社会福祉法人の職員から「何か障害者にできる仕事はないか」という問い合わせがあり、それまでは漠然とした想いはあっても、障害者雇用に踏み切る術を掴むことができていなかった生方氏であるが、その問い合わせをきっかけに、平成22年2月より、障害者雇用に向けて各機関との連携をとっていく運びとなった。
3.具体的な取り組みの内容
(1)初めて雇用したAさん、Bさんについて
栃木県で実施している、とちぎジョブサポーター支援事業(栃木県労働政策課委託業務で行っている事業であり、主な事業内容は、雇用・実習先の職場開拓、実習等の就労準備段階からの支援等。栃木県内の6つの福祉圏域に配置され、各圏域で担当のジョブサポーターが活動を行っている。)の一環で、県南圏域のジョブサポーターが職場開拓に訪れたことが障害者雇用に至る最初のきっかけである。企業としては、ジョブサポーターの話を聞き、障害者を雇用してみたいという気持ちは高まったが、障害者とはどのような特徴をもっているのか、どんな仕事ができるのか、まったく想像がつかない状態であった。そこで、ジョブサポーターと障害者就業・生活支援センターの就業支援ワーカーによって、知的障害、身体障害、発達障害等の様々な障害についての説明や、ジョブサポーターや障害者就業・生活支援センターの事業内容の説明、障害者の職務開発のための助言等が伝えられた。事業主側はそれをもとに、業務内容と雇用人数を検討し、まずは内職的な業務で2名の障害者雇用を目指して実習を行う方針が決まり、その旨がジョブサポーターと障害者就業・生活支援センターに伝えられた。その時点で、支援センターにて就職に向けての相談を行っていたAさん(知的障害・20代男性)とBさん(発達障害・20代男性)の2名が対象者として挙げられ、本人も交えた企業見学と打ち合わせを経て実習開始となった。
実習では2名とも、これまで内職として外部委託していた業務の一部である取扱説明書入りキットの作成(袋に取扱説明書と決められた個数の部品を入れる作業)や、自動車内外装部品(マットガード等)の細かいパーツの組み立て等を行うことになった。企業として初めての障害者の受け入れであり、短期間では2名の特性や対応の仕方等を十分に把握することが難しいかもしれないということで、平成22年2月から約1ヶ月間にわたり、じっくりと実習を行った。実習期間中は、ジョブサポーターと障害者就業・生活支援センターが連携の上、こまめに訪問し本人の様子を見たり、一緒に働く従業員に対して、本人との関わり方についての助言等も行った。事業主側からも、本人と一緒に働く従業員双方の様子を常に見守り、本人たちには頻繁に声をかけるようにし、昼休みも決まった従業員が一緒に過ごす等、業務内容だけでなく、全体的な配慮を得ることができた。従業員には、生方社長から「(障害者に対し)難しく考え過ぎず、普通に接するように」という説明があり、職場全体が自然な雰囲気になるような環境づくりが心掛けられていた。また、企業として挨拶が徹底されており、従業員が明るく挨拶をしていることも、本人たちにとって職場に馴染みやすかった要因のひとつであると考えられる。
Aさんについては、髪型や服装の乱れから悪い印象を受けやすいという点をフォローし、本来もっている素直で真面目な性格が業務態度にも現れることを目指し、支援を行った。また、計算が苦手で個数を正確に数えられないことがあるという不安も、わかりやすいカウントの仕方を一緒に考える等の支援を通し、カバーすることができたと思われる。
Bさんについては、物静かで緊張しやすい性格であったため、支援機関がこまめに様子を見に行くことで、不安が軽減されていったと思われる。作業中、手つきがぎこちない場面もあったが、どのような作業でもコツコツと進めることができ、慣れることにより、大きな成長が期待できる能力を持っている、という評価を得た。
2名の順調な様子から、雇用可能と判断され、実習期間終了に伴い、雇用に関するケース会を開催し、今後の雇用に向けての打ち合わせを行った。ケース会にはこれまで支援を行ってきたジョブサポーターと障害者就業・生活支援センターに加えて、管轄地域のハローワークの職員も出席し、障害者雇用の手続きや制度等についての説明があった。その後、平成22年3月からトライアル雇用を開始し、同年6月にトライアル期間終了。現在も常用雇用を継続している。2名とも、雇用後はそれぞれの能力に応じて業務内容の変更があり、実習時とは異なる業務にもあたっている。
トライアル雇用以降も障害者就業・生活支援センターを中心に、支援機関が定期的に企業訪問を行っていることが、本人と企業双方にとって、何かあったらいつでも相談できるという安心感につながっていると考えられる。また、ともに働く従業員にとっても、障害者を受け入れるにあたって、不安感や戸惑いがあったと思われる。しかし、支援機関がこまめな訪問を重ねることで、従業員から本人の様子や、気になることを気軽に話せるようになっていき、障害者への理解や職場定着がよりスムーズに進んだと考えられる。
(2)Cさんについて
平成22年5月、自動車外装部品のライン作業にて求人を出すことになった際に、障害者に作業可能であるとの判断があり、障害者就業・生活支援センターへ連絡があった。そこで、相談中であったCさん(知的障害・30代男性)を紹介した。2週間の実習で作業の適性等を判断し、以前の2名と同様の流れで平成22年6月よりトライアル雇用、同年9月より常用雇用となった。最初の雇用の際に関係機関の丁寧な関わりがあり、障害者雇用の基本的な流れをつかむことができていたため、Cさんの場合は特にスムーズに雇用までつながったと考えられる。
Cさんは、職務能力上に関しては、ほとんど問題がない一方で、慣れない作業を行い、心身の疲れを感じやすくなったためか、身体の痛みを訴えることが多くあった。企業と支援機関ともに、仕事ができていることを評価するとともに、本人の話をよく聞き、不安や疲れを溜め込まないような関わりを心掛けた。Cさんの場合も、雇用後に多少の業務内容の変更があったが、時間が経ち、職場に慣れるに従って、表情が明るくなり、体調不良の訴えも少なくなっていった。現在もイキイキと働いている。


4.今後の展望
現在、雇用している3名の働く姿を見て、非常に感動したと生方氏は語っている。雇用した当初は、毎日決められた時間に通勤できるのか、という点から心配していたが、実際は雨の日でも雪の日でも、どんな悪天候でも全員きちんと通勤し、与えられた仕事をしっかりと行っている。そういった姿を見て、他の従業員が何かを感じとり、企業の文化や理念が少しずつでも変化していくことも願って雇用しているとのことであった。
株式会社エイムは現在、障害者ファーストステップ奨励金(障害者初回雇用奨励金)の受給を申請中である。企業として、そういった様々な制度を利用できるということも含め、障害者雇用について知識がある企業はまだまだ少ないと感じるため、今後も企業として、障害者が働く環境をいかに整えていくかということを意識していきたいと考えている。しかし、企業の収支を考えないといけないものであるため、想いだけでは進めることができない点をどのように解決していくかが、他の企業も含めて大きな課題になっていると実感した。他にも様々な課題はあると感じているが、今後も障害者雇用を経験している企業として、何らかの方法で、社会貢献をしていきたいと考えていると生方社長は語った。支援者の立場として、事業主の方々にそのような考えが広まっていくことを目指し、日々の支援に取り組んでいきたい。
就業支援ワーカー 佐藤 菊栄
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