自分の一番大切な家族・兄弟と同じ
あきらめない障害者への指導

2010年度作成
事業所名
株式会社環境システムズ
所在地
群馬県高崎市
事業内容
廃棄物処理業
従業員数
76名
うち障害者数
9名
 
障害人数従事業務
視覚障害  
聴覚障害  
肢体不自由2事務、缶・ペットボトルの選別
内部障害    
知的障害 7 缶・ペットボトルの選別、古紙選別・圧縮、発泡スチロールの処理
精神障害  
目次
  1. 事業所の概要
  2. 障害者雇用の経緯、背景
  3. 障害者の従事業務・職場配置
  4. 取り組みの内容
  5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

4.取り組みの内容

3年間見守る

実習初日、不安だったのか会社の入口で泣き出した障害者がいた。作業を見ると、搬入されてくる紙類を固定しているビニールひもを切ることや、缶類・ペットボトルの選別ができない。選別ラインでは缶をペットボトルのブースに入れてしまう等、作業を見守っていた特別支援学校の先生と支援センター職員が「この業務はそもそも無理ではないか」とつぶやいた。その後、採用に踏み切ったところ、支援センター職員から「信じられない」との言葉が返ってきた。

実習の最後の日、少し成果が見えてきた。作業が早くなったのを確認できたのである。そして、3年目で選別作業を落ちついてできるようになり、作業速度も早くなった。まもなく選別能力がそのラインで一番高くなった。人間は不思議な力を持っている。

箒を持てない者がいた。持ち方がわからないのである。当然、掃除ができない。これをマンツーマンで教えた。習得しても、すぐ忘れて元に戻るが再度教える。このような場合、指導する者が時間を惜しまず長い時間をかけることが大切である。当初、掃除が終わると箒を置き場に投げていたので、マナーも覚えるまで教えている。


5.取り組みの効果、障害者雇用のメリット

合理的な解決

職場の長が、その部門で一番熟達している障害者に新たな仕事を指示したところ、怒り出したことがある。工場長の指示だけにしか従わないのである。他の人の指示にも従うように指導することも考えられたが、困難であった。会社トップが、その者が工場長の指示・命令する仕事しかしないことは、職場で皆が承知していることである。これを受け入れてやることが自然ではないかと言い、新しい仕事をたのむときは工場長を通じて行うことにした。合理的な解決になった。

ペットボトルの選別ラインで縄張り意識があり、手の空いた隣の高齢作業者が障害者の受け持ち範囲のペットボトルに手を触れたところ受け入れず、それを阻止するために高齢者の手をつかむことがあった。作業協力が十分理解できなかったのだ。しかし、問題がなければ、そのような縄張り意識も認めてやることも必要である。

大きな問題にしない

選別ラインの従事者が工場内で行方不明となり、工場内を2時間さがしたが確認できなかった。作業プラントの停止まで考えたが、そのうちトイレの中にいることがわかった。その後、様子がわかるにつれて、このようなこともあることを認識した。大きな問題にしないことも重要である。

早急な判断は戦力を見落とす

最初、これは無理だと判断しないほうが戦力になる。無理だと思う人が逆に伸びる。選別ライン従事者の1名は、その典型的な例で、現在3年目である。短期間の判断は人材育成に反する結果になりやすい。

上司自身があきらめない

注意するときは、はっきりと注意をする。愛情を含んだ節度ある指導は自分のために言ってくれていることを理解する。障害者に自立性をつけるには、上司自身が指導をあきらめないことである。

終わりに

現実の障害者雇用の現場で、ただちに有効となるマニュアルは存在しない。今まで解決すべき多くの場面に立たされてきたが、ようやく、不文律のマニュアルを見つけることができた。それは「障害者へ声をかけてやること」、二番目は「長い目で指導を続けること」。 これが当社の貴重なマニュアルである。

執筆者:金子労務管理事務所  社会保険労務士・行政書士  金子 進