事業所名

社会医療法人輝城会　沼田脳神経外科循環器科病院

所在地

群馬県沼田市

事業内容

病院　診療所　介護

従業員数

479名

うち障害者数

3名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	2	事務、医療材料の管理
内部障害	1	車両整備、事務
知的障害
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経過、背景
3. 障害者の従事業務、職場配置
4. 取り組みの内容
5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

事業所外観

1．事業所の概要

地域の急性期医療の拠点

1982年に群馬県北部地域で唯一の脳神経外科の救急専門施設として開業した。その後循環器科を追加するなど病院機能が拡大を続けて、現在この地域の急性期（病気 のなりはじめ、比較的症状の激しい時期）医療の拠点になっている。「分かりやすい説明に よる理解を基にした患者さん自身による治療方針の選択と同意」を充実させて、治療成績 等の実力の維持・向上をめざしている。

遅れていた雇用

平成16年2月、現新井事務長が就任した時には、法人全体の職員数が少なかったこともあり、それまでハローワークの働きがけは多くなかった。平成19年10月、ハローワーク が初めて来所したとき、障害者は一人も雇用していない状態であった。

初めて障害者を雇用したのは平成21年10月1日。それから2年が経過して3人になった。

現在、身体障害者　3人

1級　腎臓障害　　　1人

2級　体幹機能障害　1人

2級　右上肢欠損　　1人

所属　沼田脳神経外科循環器科病院　2人

ぬまたとね総合在宅ケアーセンター 1人

2．障害者雇用の経過、背景

雇用へ向けてカジを切る

平成21年、職員数が300人に近づき、障害者雇用を検討していく中で、救急医療と介護保険法の介護業務には身体障害者の従事は無理ではないかとの考えが、障害者雇用の思考を妨げていることに気づくことになる。直ちに行動開始となり、事務長が障害者に関して県内で実施される雇用研修会、見学会に出席することとなった。

平成22年に職員数が300人を超える。この頃、研修・見学キャラバンを行っていた事務長が、障害者が就労している救急医療施設を見学し、この見学から得た情報を参考に、急速に障害者雇用へとカジを切った。

経営会議で法令順守を明確にする

社会医療法人は一般の医療法人と異なり、事業税が免除されるなど特に公益性が高い。 したがって、事務長は障害者雇用に向けて大きな「変身」を始め、障害者職業生活相談員資格認定講習、事業所見学会、優良事業所表彰式など、すべての研修、講習会、見学会などに皆勤出席した。そして「救急病院だから」は理由にならないとして、障害者雇用に向かう意思を明確に打ち出した。

その後、法人所属施設の月例会議である医療・介護各事業経営会議において、他の行政法令同様障害者雇用を必ずクリアーすることを申し合わせる。今、事務長は悔やむ。「救急医療の先入観で対応が1年遅れた」と。

新井事務長

初めての雇用

平成21年10月、初めて障害者を雇用したのは、当法人に勤務している介護ヘルパーの同居の子で、市内にあり、通勤至便な当病院勤務の希望がよせられた。手探りで障害雇用を考えていたときであり、面接後すぐ採用した。

採用した障害者は、それまで就労経験が乏しく、さらに医療関係は初めてであり、心配していたが、その後の仕事ぶりから、自身の希望に沿う職場を得られたようで、現在何の心配もない。

障害者を雇用してからハローワークの働きがけが強まり、平成22年2月には障害者合同就職面接会に参加し、同年4月にこの面接会に応募してきた2人の身体障害者を雇用して合計3人になった。

3．障害者の従事業務、職場配置

1　右上肢欠損（2級） 病院勤務

45歳の女性職員。主にパソコンを活用した地域医療連携に係る事務作業と、車を運転して地元の医療機関を訪問するなどの広域活動を行っている。車で通勤している。

2　体幹機能障害（2級） 病院勤務

1年前に採用した体幹機能障害の35歳の男性職員は、注射器・綿などの医療材料の管理業務に従事している。取り扱う物品をわずか3カ月で全て覚えてしまい、現在職場になくてはならない存在となっている。看護師などとのコミュニケーションにも気を使っている。特に救急病院という性格から患者第一であり、緊急時には職員同士の挨拶、コミュニケーション・マナーが省略されがちな職場であるが、それも自然に受け入れている。車で通勤している。

3　腎臓障害（1級） ぬまたとね在宅ケアーセンター勤務

ハローワークに求人申し込みをしたところ、腎臓疾患の男性障害者から面接希望があり、就職面接会にも来たので採用となった。40歳まで健康であったがその後発症した。人工透析日にはフレックス時間制をとり、始業時刻は30分早く、終業も30分早い16：30としている。法人本部からの横断的な指示は控え、業務の指示・調整は配属先の施設長が行っている。

事務作業

医療材料の管理業務

現在の課題

病院施設の清掃は3人のパート職員が従事している。欠員が出た場合は、障害者採用を考えている。清掃作業は、その作業の段取り・方法を作業者に一任することから、チームワークが崩れると大きな影響を受ける。しかし、見学会の経験から今後、障害者を充てることを予定している。なお、清掃作業には知的障害者が多く従事しているケースが見受けられるので、参考にしたい。

4．取り組みの内容

労働条件と経営会議

毎月行われている医療・介護各事業経営会議の場を利用し、会議終了後、年に数回身体障害者雇用についての分科会を開いて、雇用の在り方、改善方法などを協議する。なお、賃金も障害の無い従業員と同一の取扱いをしている。また障害者の勤務状況は良好である。

形式ではない心のある雇用促進

前述の事務長の研修・見学会の皆勤出席について、その理由は次のとおりである。

（1）一般職員は、常に事務長の後姿を見ながら障害者雇用について考え、そして後を追う。

（2）事務長が手を抜くことは、法人全体が手を抜くことになりかねない。

（3）他の医療施設において率先して障害者雇用に取り組んでいる現場を見たことがある。

したがって他社の現場から好事例を見つけ、職員にも伝えることは重要な仕事である。

法律の定めがあるから雇用するというのでは、両者の関係は平面的になる。人にとって仕事は生きる尊厳の基本部分と捉え、そこに配慮の心を入れていきたい。このことなくして長期の雇用につながらない。

5．取り組みの効果、障害者雇用のメリット

自問を続けて道を探る

身体障害者が介護施設に勤務して身体介護業務を行うことは難しいが、施設利用の高齢者の話し相手となることなどは貴重な仕事である。しかし、それを専門に行う職種の創設もまた難しい。介護現場での身体介護の活用は未解決であるが、多くの事業所見学の経験から、やり方次第ではないかとの自問を続けている。

終わりに

障害者雇用によって社会に労働の機会を増やすことは、人として、自尊心を持つことのできる尊厳のある職業生活を提供できる素晴らしい仕事である。初めて障害者雇用を開始してから2年が経過した。見学会の参加で障害者雇用の方法と人間愛を学ぶことができた。現在、法人代表の指示をもらい、この地域でやさしい医療・介護グループと言われるように歩んでいきたい。