事業所名

富士ソフト企画株式会社

所在地

神奈川県鎌倉市（大船本社）
東京都千代田区（秋葉原営業所）

事業内容

ホームページ作成、名刺作成、データコーディネート、サーバー管理、
印刷物デザイン・製作、生命保険・損害保険代理店業務、
親会社庶務業務、障害者委託訓練事業

従業員数

168名

うち障害者数

148名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	2	従事業務は障害区分でなく、特性により業務を分けている。
聴覚障害	12
肢体不自由	28
内部障害	7
知的障害	21
精神障害	78

目次

1. 障害者の雇用実態
2. 秋葉原営業所の現状（精神障害者中心の営業所における実践）
3. 秋葉原営業所の特色
4. まとめ

事業所外観
（秋葉原営業所）

1．障害者の雇用実態

創業： 1970年5月15日

資本金： 4,000万円

売上高： 1,590百万円

勤務形態： 9：00～17：30  休日：土・日・祝祭日

企業理念： 1.自立と貢献

私たちは  仕事を通じて学び成長し  仕事を通じて  世の中に貢献する

2.生涯働ける会社

会社が私たちに  何をしてくれるかでなく

私たちが  会社に何が出来るか考えよう！

雇用の特徴：精神障害者の雇用者数が、民間企業で全国一多い。

2．秋葉原営業所の現状（精神障害者中心の営業所における実践）

①業務内訳

②業務内容

秋葉原メール室（業務推進部サポート業務兼任）

社内研修の様子

秋葉原メール室

・社内メール便の配達・集荷

・ビル館内郵便物・メール便　配送

・ビル会議室用　飲料在庫管理

・料金後納　郵便集荷代行

・うがい薬　在庫管理

・総務管理部サポート業務

業務推進部サポート業務

・お客様名刺データ入力

・製品カタログ・ノベルティ在庫管理

・セミナー参加者　アンケート入力作業

・親会社主催イベントダイレクトメール発送補助

・親会社の回線を利用した顧客情報マスターデータ更新・入力作業

人材開発室サポート業務

・入社書類の電子データ化

・新入社員用資材（名刺等）準備

・採用業務管理ツールによるデータ入力

・交通費関連　データ入力

・採用者書類　ファイリング

・会社案内の封入・在庫管理

業務管理室サポート業務

・親会社の東京地区勤務パートナー社員書類ファイリング・書類クローク業務

・パートナー社員データベース更新作業

・社内向け申請書類の作成

・社外向け郵送物発送補助

・電話の代理応答、空封筒の確認作業

業務管理室営業管理チームサポート業務

・請求書書類の発送・印刷・データ照合・封入

・請求書台帳の入力作業

平成21年度　障害者雇用職場改善好事例（精神障害者）最優秀賞受賞 左から槻田さん、木村さん、城田前社長、渡辺取締役、遠田所長

3．秋葉原営業所の特色

特色・内容

①コアタイムなしのフレックスタイム制導入

必ず勤務すべき時間帯（コアタイム）をなくし、出社・退社の時間を労働者の決定に委ねている。通院や体調不良で出勤が遅れる場合にも、休みをとらずに勤務できる環境を設定している。その反面、勤務中は成果を出すことでメリハリをつけている。

また、精神障害者の疲れやすさや体調管理に配慮し、勤務時間は短時間労働（1日5～6時間）からスタートしている。時間の延長や短縮は、職場の上司やカウンセラーと相談した後、1ヶ月単位で調整することが可能。

②業務責任者（障害者）の配置

遠田所長（中央）、堀越さん（右）

秋葉原営業所では、業務責任者となる障害者を育成・配置し、職場のコーディネートを担当している。

具体的な動きは、職域開拓・納期管理・ミスの防止・親会社との打ち合わせ・交渉・他従業員が休んだ場合の業務カバーなどがある。

責任者の堀越さんは、「障害を持っていないつもりで働いています」と語り、障害の有無に関わらず、時には親会社に提案できる責任のある立場で働いている。

また業務ミーティングも仕切り、チームワークの形成にも務め、コミュニケーションの重要性を意識していた。さらに誰が休んでも、カバーできる体制を築いていた。

③カウンセラーの巡回

従業員の安定した就労生活を支援するため、大船本社・秋葉原営業所・横浜営業所を、遠田所長含めた3名のカウンセラーが巡回している。

従業員はカウンセリングを受けることで、職場における人間関係・通勤・就労時間など、悩みや困りごとを相談できる権利が保障されている。

入社して3ヶ月までは手厚く月2回、カウンセリングを実施し、継続して勤務できるよう、サポートする。

しかし年に2～3名、体調を崩し、精神科へ入院する従業員もいる。その際は、職場復職できるよう、カウンセラーがコーディネートする。

④採用面接時のポイント

精神障害者の採用時に確認するポイントは、以下の10点である。

(1)病気や障害の理解

発症時の状況や原因を、時系列に話せる力

(2)入院歴

入院時に学んだことや、その後どうなったかを分析できる力

(3)自己理解

自分の現況を説明できる力

(4)障害受容・安定

ハンディキャップを受け入れ、障害とともに生きていく力

(5)自己管理（通院・服薬）

医療サービスを定期的に利用し、体調管理に気を配って働ける力

(6)何でも話せる存在の有無

会社などで、孤立した状態を防げる力

(7)周囲の障害に対する理解

家族や周囲が、障害や病気を理解する力

(8)ストレスコントロール

「いつ、どこでストレスを抱くか」など、自分の傾向を知り、察知する力

(9)就労意欲・労働習慣

働きたい思い・生活のリズムを整える力

(10)苦手な仕事

苦手な仕事を強制しない環境づくりによる再発防止。

もしくは、過去で経験した苦手な業務を少しずつ克服する環境づくり。

⑤障害者委託訓練事業

委託訓練事業の様子（百合ヶ丘就労援助センター）

平成16年～精神障害者対象の職業訓練開始

「職業リハビリテーションプログラムカリキュラム」を開発。

このカリキュラムを用いて、自社だけてはなく、他社においても障害者雇用の促進が現実となることを目

指し、国の事業を受託している。

講師は精神障害者の従業員が担当し、就職率は7割に達している。

4．まとめ

障害者の可能性を引き出す力

今回取材した「富士ソフト企画」は、全国No1の精神障害者雇用数を達成し、当事者従業員をひとりの同僚として捉え、働く権利を保障している。その背景には、「障害を持つ人が働きやすい会社というのは障害のない人にとっても働きやすい会社であるはず」という長嶋隆平社長の信念がある。働く権利を得た当事者従業員は、自立し、現場に貢献できる力強い人材に成長する。そして、カウンセラーや障害のない従業員が直接業務に入らなくても、納期までに仕上げられる事業所として機能している。

その好循環は「ピア・サポートの相乗効果」として、わかりやすく以下の図表にまとめられていた。

「ピア・サポートの相乗効果」富士ソフト企画株式会社  遠田所長

今回取材した当事者従業員の堀越さんは、持っている力を最大限に発揮されている、優秀なリーダーである。そして私が観てきた企業の中では、障害者も主軸として事業展開する富士ソフト企画の体制は稀であり、その姿は正にノーマライゼーション実践型事業所である。

今後もその動向に注目し、精神障害者雇用事業所のモデルケースとして、その要素を吸収していきたい。