障害はひとつの個性、社員の個性は会社の力
その力を活かして、社会に貢献する企業であり続ける
- 事業所名
- アフラック・ハートフル・サービス株式会社(AHS)
アメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)の特例子会社
平成22年11月:関係会社を含め4社によるグループ認定 - 所在地
- 東京都調布市
- 事業内容
- オフィスサービスに関する事業
- 従業員数
- 46名(親会社からの出向者:3名を含む)
- うち障害者数
- 35名(呼称:チャレンジド社員)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 33 事務補助作業(発送関連業務、書類開封・書類チェック業務、PC関連業務、シュレッダー業務など) 精神障害 2 事務補助作業(発送関連業務、書類開封・書類チェック業務、PC関連業務、シュレッダー業務など) - 目次


1.事業所の概要
(1)会社設立
平成21年3月18日(営業開始:平成21年5月)
(2)企業理念
「個性」を尊重し、「多様性」を活かし、「無限の可能性」を追求するとともに、社員一人ひとりの能力を結集し、社会に貢献するかけがいのない企業であり続ける。
(3)事業の概要
アフラックの保険契約を管理している事務部門を中心に、関連会社を含めた幅広い部門からオフィスサービス業務(事務補助作業)を受託。
2.障害者雇用の経緯と推移
アフラックは日本で初めてがん保険を発売して以来、「生きるための保険」のリーディングカンパニーとして、がん保険や医療保険を中心に順調に業績を伸ばしてきた。CSR経営の実践を強く意識した会社で、関わるすべての方々(ステークホルダー)に対するさまざまな社会的責任を着実に果たしていく企業経営を目指している。
しかし、会社の成長に伴い従業員数が急激に増加し、これに障害者雇用が伴っていかなかった。
当社は、直ちに障害者雇用の推進強化を図るために人事部に専任部門を発足させた。 アフラックは、これまで身体障害者の雇用を行い、社内の各部署で活躍していた。今後の展開として身体障害者の雇用だけではなく、知的障害者の活躍の場も創出していくという方針を決めた。
まず、知的障害者の雇用を行うにあたり、どのような形態で運営していくかについて検討した。その結果、彼らへの配慮をより実現しやすい体系を考慮し、社内の各部署に配属するのではなく、特例子会社を設立して障害者雇用を推進していくことを決定した。
アフラックは、米国に本社を置く外資系保険会社の日本支社である。特例子会社を設立するにあたり日本社経営陣の了解を得て、更に、米国本社の承認を得る必要があった。ノーマライゼーションの進んだ米国本社からの反応を心配する向きもあったが、ほどなく了承された。設立趣旨がCSRやコンプライアンスの実現であったこともあるが、アフラックの特徴のひとつである、日本社の経営は日本社経営陣に任せるといった風土によるところが大きかった。
設立が決まり、次に懸案事項として挙がったのが事業内容をどのようなものにするかである。知的障害者を雇用するためにあえて仕事を創出するということではなく、本業である保険会社の業務を従業員とともに携わることに主眼を置いた。そして、彼らの雇用については、会社の戦力として雇用していくという視点で検討を始めた。
まず課題となったのが、人事部門の設立担当者を含め関係者全員が、知的障害者の雇用が初めてであったことである。彼らの障害特性や、彼らは何が出来て何が苦手なのか、彼らに向いている仕事はどのようなものかなど全く分からず、手探り状態であった。
そこでまず既存の特例子会社への見学を数多く行うことからスタートした。先例のアドバイスはもちろん、何よりも自分達が彼らと接することで様々なことを学ぶことができた。
そして、検討を重ねた結果、事業内容をオフィスサービスに関する事業と決めた。アフラックの保険契約を管理する事務部門での業務を補助する仕事を切り出すことにした。
特筆すべきは、この見学に人事部門の設立担当者だけではなく、業務を切り出す現場の事務部門の管理職、10名ほどが参加したことである。このことにより人事部門が各事務部門に対し、これから設立する特例子会社に切り出せる仕事を求めるのではなく、発注元である各事務部門が「こんな仕事を特例子会社にお願いできないか」という業務提案をするという体制ができた。
その結果、各部門から100種類以上の様々な業務の切り出しの提案があった。
採用活動については、ハローワークと連携するとともに都内の就労支援機関向けの説明会を実施した。その後、東京しごと財団の委託訓練を経て、平成21年5月に5名の知的障害者の従業員で営業を開始した。特例子会社の設立を決めてから約半年後である。
その後、順調に採用と職域開拓を進め、1年半後にはチャレンジド社員35名の体制となり、1.8%を上回ることができた。
3.取り組みの内容
(1)障害者の受け入れ体制について
①実習の受け入れと採用について
・実習の受け入れ
実習は、独自の職場実習と東京しごと財団の委託訓練とを並行して実施している。昨年(平成22年)の実習実績は1ヶ月に1回のペースで実施し、実施1回の期間を 2週間とした。
この実習は、採用を見据えた実習・訓練としている。従って、実習受け入れの面接は慎重に行っている。
当社では「求める人材像」を明確に打ち出しており、各地域の就労支援機関、特別支援学校の進路担当の先生、ハローワーク向けの会社説明会を数多く開催し、どのような人材を求めているかを出来るだけ具体的に伝えている。
「求める人材像」とは
*自立性:ひとりでの通勤、非常時の連絡、通勤経路の変更ができる。
*コミュケーション:挨拶、自己紹介、質問及び「わかる」「わからない」の意思表示ができる。
*作業能力:手先が器用、20まで数えられる、ひらがなで業務日誌の記入、理解ができる。
*業務特性:集中力があり、細かい作業、継続作業が得意、反復業務を一定のスピードを維持して作業できる。
*その他:就労支援機関等の適切な支援が継続的に受けられる方、清潔感がある、就労前に適宜職業訓練を受けた経験がある方、本人に就労意欲がある方、学校もしくは作業所等福祉機関と会社の違いが本人なりに理解できている方など
・採用について
2週間の職場実習を通して、当社への適性や本人資質を確認後、合格者には3ヶ月のトライアル雇用を実施し、採用の合否を決めている。
②職域開拓、職務設計
障害者のために仕事を用意するということではなく、アフラックの本業業務の中で彼らをどのように戦力化していくかという視点で職域開拓を行っている。その結果、アフラックの契約管理部門のオフィス内で、アフラックの一般従業員と一緒に仕事を進めることが多く、ごく自然な形でノーマライゼーションの啓発に繋がっている。
また、アフラックおよび関連会社の各部門にAHS窓口担当者がおり、常に連携をとりながら職域開拓に努めている。






主な受託業務
①シュレッダー業務:4フロア(10部門)にて、25~30袋/日
②封筒の三つ折作業:返信用封筒、約1,300部/日、他に月毎に行うものもある
③スタンプ押し作業:返信用封筒、お客様案内レターを入れる封筒など
④各種封入作業:発送書類の封入作業、3点封入や4点封入、複雑なものもある
⑤開封作業:到着した書類を開封しクリップ留めをする作業
⑥付箋作成作業:鋏、裁断機などを使用し、注意事項が記載された各種付箋作成
⑦整番作業:12桁の証券番号が記載されている書類を番号順に揃えてファイリング
⑧突合作業:代理店宛にFAXした質問状の控と戻ってきた回答書を付け合せてファイリング
⑨スキャン業務:PCを用いて紙ベースの情報をデータとして取り込む作業
⑩約款のプリントアウト作業:PCを用いて、お客様の契約データを検索し、契約している保険の種類、契約日を確認し、約款データベースから選択し、プリントアウト
⑪各種発送業務:従業員向け、福利厚生の会報誌、ノベルティグッズなどの梱包、発送
⑫書類の仕分作業:役所等公的機関からの問い合わせ書類を、問い合わせ内容別に分類・仕分け後、会社印、デート印などを押印して種類別に纏める
⑬まねきねこダックの検品
③教育訓練(目標管理の設定と発表など)


月曜日の朝礼の時間を使い「社会人の基本動作」や「仕事と責任」といった様々なテーマについて教育を行っている。その後、その週の目標設定をチャレンジド社員各自で行い、所定の用紙に記入後、それをオフィスの目標掲示コーナに張り出す。そして、その目標に対して1週間どのように向き合ったかを、金曜日の朝礼で各自が全従業員の前で 1週間の振り返りを発表している。
④指導員体制
チャレンジド社員4名~5名に1人の割合で指導員を配置している。指導員はチャレンジド社員の業務遂行を援助し、彼らの特性に応じた対応を心がけている。また、定着支援についても担当制としている。各指導員がチャレンジド社員5名前後を受け持ち、日頃の業務の様子や週に1回行っているチャレンジド社員との面談時の様子などから彼らの様々な変化を捉え対応している。
問題点や要改善事項などが見受けられた場合は、内容により就労支援機関の担当者と対応策を講じたり、業務日誌を通じて家庭との連携をとっている。指導員は全員が障害者職業生活相談員の資格を有しており、ジョブコーチや社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有者も多い。
⑤障害のない従業員への啓発
アフラックとグループ会社の社員向けAHS見学会を開催し、ひとりでも多くの従業員に朝礼やチャレンジド社員の仕事ぶりを直接見る機会を設け、チャレンジド社員に関しての理解啓発を図っている。 また、この見学会では、特例子会社の設立から現在に至るまでの経緯や趣旨、AHSの存在意義等を参加者に伝える時間も設けている。
⑥障害者の育成ポイント
チャレンジド社員の育成には、自らが就労意欲を持ち、会社に対する帰属性を持ち続けていることが必要であると考え、人によりその表現方法は違うが、それを本人に確認したうえで指導するよう全指導員に徹底している。
(2)支援について
定着支援の考え方は、本人が登録している「就労支援機関」と「家族」そして「会社」のトライアングルで、チャレンジド社員を支えていくことを基本としている。
また、定着支援担当の指導員を配置し、週1回のチャレンジド社員本人との面談と毎日の業務日誌で、家庭との連携を図り、会社として出来る限りきめの細かい対応を行っている。
(3) 助成金の活用
・ハローワーク関係:特定求職者雇用開発助成金
・独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(当時)等:
障害者職業コンサルタントの配置または委嘱助成金(配置)、業務遂行援助者の配置助成金、委託訓練修了者雇用奨励金等を受給している。
(4)アフラック・ハートフル・サービスの障害者雇用のポリシー
AHSは、障害者を障害のある人として見るのではなく、それを個性として捉え、彼ら一人ひとりが会社の戦力であり、その戦力をどのように活かしていくかという考え方を基本としている。
そして、彼らの個性を尊重し、それを融合させ、彼らの結集した力の無限の可能性を追求しながら社会に貢献し続ける会社であることを目指している。
また、会社生活を通して彼らの成長を促すことにも注力している。AHSは、これが最良の定着支援であると考えている。
4.今後の展望と課題
現在、設立1年半でチャレンジド社員は35名となった。今後、設立3年でチャレンジド社員を60名体制の規模に拡大する予定である。
規模拡大に伴う職域開拓は、今後、他部門への新たな展開を図っていく予定であるが、特にマーケティング部門はチャレンジド社員が活躍できる職域が潜在的に多いと想定しており、まず第一に取り組んでいく予定である。
また、現在のチャレンジド社員の平均年齢が27.8歳と若いが、今後、彼らがAHSに夢を持って一生勤め、生涯設計ができるような賃金体系などを含めた制度の整備を行っていく方針である。
副理事長 小林 幸夫
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