地元NPO法人・作業施設と連携した障害者雇用
- 事業所名
- 株式会社ユーミー管理
- 所在地
- 神奈川県藤沢市
- 事業内容
- 賃貸物件管理業務/プロパティーマネジメント業務/賃貸物件仲介業務
マンスリー事業/サブリースによる不動産運用事業 - 従業員数
- 180名
- うち障害者数
- 25名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 7 清掃業務 精神障害 18 清掃業務 - 目次
1.事業の概要
株式会社ユーミー管理は、「湘南エリアの活性化と地域の発展に貢献すること」を使命とする『ユーミーらいふグループ』の一員として1997年に藤沢にて創業。グループ全体では、不動産活用からビジネスホテル経営や高齢者福祉事業まで幅広い事業を展開しているが、当社は不動産の賃貸事業の部門を中心に手掛ける。更にグループ企業には、株式会社ユーミードリームという同社賃貸物件の清掃事業等を行う会社があり、グループ全社に先駆けて、株式会社ユーミー管理と株式会社ユーミードリームが、積極的に障害者の雇用と職域の拡大を進め、2007年7月1日より地元NPO法人等との連携による巡回清掃パートナーシップ・プロジェクト『ユーミーハートフル事業』を行っている。本プロジェクトは、障害者の経済的・社会的自立を目指しており、現在、知的障害者7名、精神障害者18名の合計25名が活躍中である。
2.障害者雇用の動機とその経緯
同グループの使命である「地域の活性化と発展に貢献する」という想いの下、2007年から地元湘南で開催される「湘南国際マラソン」にスポンサーとして参画、障害者マラソンのボランティアとして全社をあげて参加するなど、地域貢献という観点からこれまでも積極的に障害者のバックアップを行ってきた。その活動の発展形として、会社自ら出資すると共に同社管理物件のオーナーから協賛金を募り、障害者のための雇用事業を展開することを決定。同時に近年急増している精神障害者の就労の場を創出したい、という同社代表の想いから、藤沢で心の病を持つ人の社会参加を応援するための活動を行う「NPO法人ポトピの会」等との連携が実現し、現在、同社が管理する建物の共有部分の清掃業務にて多くの障害者が活躍をしている。
3.障害者雇用の取り組み内容
(1)障害者の採用方法
前出の「NPO法人ポトピの会」や「NPO法人ともだち」、「スタジオ クーカ」等、地元のNPO法人や障害者作業施設と連携を図り、作業所に通っている障害者と雇用契約を結ぶ形を取っている。これらのNPO法人や作業所で障害者個々人の仕事への適性や、やる気、現状の障害の状況などを見極めて推薦してくれるため、ミスマッチなく同社で活躍している。そして、雇用後も様々なフォローやバックアップを受けることが出来るのが、この連携の優れた点である。
(2)障害者の具体的業務内容
現在同社では約400棟の建物を管理しており、その内140棟の建物を障害者スタッフが中心になって清掃を行っている。基本的な1日の流れとしては、従業員2名に対し、障害者スタッフ3~4名が一つのチームとなり、午前中に3棟、午後に3棟清掃を行う。担当者、担当建物のシフトの決定の際には、本人の対応力についてNPO法人や作業施設の助言も参考にしている。まだ多くのメンバーは午前か午後どちらかのみの勤務だが、本プロジェクトのスターティングメンバーの中には午前・午後を通して勤務をし、他メンバーのリーダー的立場として活躍してくる者も出てきている。
現場では、同社従業員2名が清掃の指示を出すが、本取組開始当初は気分の波があり、なかなか集中して作業に取り組めなかったこともあった。しかし、就労期間が長くなるにつれ、一度集中したら決して手を抜くことがない真面目な取組姿勢や、積極的に清掃に取組む前向きな姿勢が同社内でも話題になり始め、障害を持っていない他のメンバーにも「負けてなるものか」と良い刺激になっている。
現場で指示を出す同社従業員が常に気にかけていることは、「役割を明確にすること」「急がせないこと」そして何より「無事故で完遂すること」。今はとにかくこれだけを気にして指示を出せば、特に大きな問題もなく、ある程度はメンバー一人ひとりが正しい判断の元、作業に取り組めるまでになっている。また、最近では、清掃をしている建物の住人の皆様からも「元気な挨拶が気持ち良い」などのお褒めの言葉をいただくことも増えてきており、それがまた障害者一人ひとりの仕事のやりがいにもつながっている。
(3)ある日のスケジュール
■【基本的な一日のスケジュール】
9:00 着替え等準備、朝礼。
9:30 同社従業員の運転する車で現場へ向かう
10:00~12:00 マンション清掃(平均3箇所) ※同社従業員(2名)が指導
12:30 ※午前中のみ勤務のメンバーはここで終了
13:30~15:30 マンション清掃(平均3箇所) ※同社従業員(2名)が指導
16:00 解散
■【作業施設との役割分担】
会社と作業所の協力関係として、作業所はメンバーの相談を行っている。
■【雇用契約】
メンバー各人と会社はパートタイム契約を交わす。
■【勤務時間】
基本、1日実働2時間の仕事で、各人の希望で週1~週5日。土日祝日休み
2007年7月の取り組み開始当初は、全メンバー午前中の2時間のみの勤務であったが、勤務成績が良好であり、かつ、障害者の手を抜くことのない仕事に対する真摯な姿勢が障害のない従業員に非常に良い刺激になるなど、予想をしていなかった相乗効果が生まれたため、2009年11月からは、午前中だけでなく午後も清掃に回って貰うようになった。また、これまでほとんどのメンバーが週1日~2日の勤務だったのが、主にスターティングメンバーの中から週5日勤務出来るメンバーが出てきている。また、清掃担当物件の数も着実に増え、現在同社保有約400棟の物件のうち、140棟を担当するまでに成長してきている。
4.今後の展望
本取り組みは『ユーミーハートフル・パートナーシップ・プロジェクト_YHP』と称し、「湘南地域に住む仲間として、オーナー・障害者・ユーミーらいふグループとが手を携えて、障害者の経済的、社会的自立の一助になる」という趣旨に賛同いただいたオーナーからの支援=パートナーシップで成り立つ善意の活動という形を取っている。パートナーシップの形の1つとしては、建物オーナーの施設内に自動販売機を設置し、その収益をこの事業に役立てるのだ。現在、本プロジェクトに賛同いただいているオーナーは300名にものぼり、自動販売機の設置台数も100台を越えている。
また、職域の拡大という観点から、ゆくゆくは今の管理物件の清掃業務に加え、同社のサービスである物件退出後の原状回復業務である「マルチワークス」や、公共の場での清掃作業にも積極的に障害者に雇用の場を広げていきたいと考えている。
5.まとめ
障害者メンバー一人ひとりが毎日書いている日報より、一部をご紹介したい。
~メンバーの作業日報より抜粋~
●スタッフAさんの声:
「この仕事をするようになって食事が美味しくなりました」
(同社従業員より:メンバーの多くがこの仕事を何とか継続しようと、仕事中心の規則正しい生活に変えたそうです。)
●スタッフBさんの声:
「昨日、ユーミーらいふさんから貰ったお給料で、生まれて初めてお母さんに靴を買ってあげました。」
(同社従業員より:この方は本当に嬉しそうに、このことを毎日のように皆さんにお話されていました。)
●スタッフCさんの声:
「僕の奥さんも同じ障害者で、二人の障害者手当だけだと苦しかったけど、ユーミーらいふさんのお給料で少し余裕が出ました。」
(同社職員より:障害のない人でも仕事が無い時代に、このお仕事は天から頂いた仕事と思ってみんな一生懸命やります、と言ってくれています。)
このように、「障害者の経済的、社会的自立の一助になる」という本プロジェクトの趣旨はしっかりと達成されてきている。また同時に前出の通り、清掃をしている建物の住民やオーナーの方々からも感謝の言葉をいただける場面が増えている。
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