事業所名

アイテックス株式会社

所在地

新潟県燕市

事業内容

現金自動支払機の組立製造やリサイクルトナー・リボンを主力としたOA機器及びサプライ製品の販売。

従業員数

77名

うち障害者数

8名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	3	車用部品の組立
内部障害
知的障害	1	車用部品の組立
精神障害	4	車用部品の組立

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 障害者の従事業務
4. 取り組みの内容
5. 障害者雇用における効果・メリット及び今後の取り組み
6. 障害者雇用について
7. まとめ

事業所外観

1．事業所の概要

（1）事業の特徴・内容

平成13年12月1日に設立。製造基盤は、現金自動受払機、給油器具部品加工等の組立製造や、医療機器・日用品研磨加工等のもの作りにおきながら、リサイクルトナー・リボンを主力としたOA機器及びサプライ製品の販売にも取り組んでいる。

従業員のどんな発想・企画・アイディアも即事業に取り入れる、即実践企業である。

（2）経営方針

社是　3つの意（心）　創意・熱意・誠意

品質スローガン『SHINKA』

①新しいものに挑む「新化」

②技術や知識を深めて「深化」

③そして改革し前へ進む「進化」

様々な分野に視野を向け、一心にお客様に喜んでもらえる商品作りを目指している。

又、環境応援企業として環境保護は人として義務づけられた事項と考え、積極的に取り組んでいる。

（3）障害者雇用の理念

障害のある人がその能力と適正に応じた雇用の場につき、自立した生活を送ることができるような社会の実現に向け、会社として貢献することが、日々支えとなってくれている周囲への恩返しになると考えている。

特別扱いするのではなく、何事にもチャレンジし全員で取り組む姿勢を大切に、雇用を進めていきたい。

2．障害者雇用の経緯・背景

代表のI氏は5歳の頃、農機具に右腕を巻き込まれ、肘から先を失った。障害のあることでの社会的ハンデの大きさについては身をもって体験していた。

障害者に対しての特別な思いはなかったが、もの作りに向いている人はどんな人だろうと考えていた時に、近隣の精神障害者通所施設を見学する機会があり、“彼らが向いているのではないか”と感じた。

見学を縁に、施設の先生方から実習の受入を打診された。障害者雇用を考え始めた頃から、採用するのであれば、1名よりも複数での雇用の方がコミュニケーションをとりやすいのではないかと考えて、3名の精神障害者を実習受け入れし、その後採用した。

3．障害者の従事業務

特定のラインでの作業を実施している。ライン全体を障害者のみで構成するのではなく、障害のない従業員と共に行う作業である。

主に自動車用部品の組立作業を担当している。同じ作業の中で難易度をあげながら、それぞれのスキルアップにつなげている。

自動車部品の組立作業

4．取り組みの内容

（1）具体的取り組み

精神障害のある人を採用するにあたっては、代表のI氏より従業員全員に対し、障害者雇用が会社の方針であることを伝え、理解を求めた。

作業指導は、採用当初から事業課係長のKさんが担当している。Kさんは過去に自身が心を病んだ経験があり、相手の気持ちがわかるという点では、先入観を持つことなく接することができたようだ。指導に際しては、よりわかりやすい説明をと心掛けたが、知的障害のある従業員に対しては、当初マッチする仕事を探し指導することに苦慮した時期もあった。

何事においても、全員で取り組む環境を整えている。障害を理由に分けてしまうことは、働く意味が本人達へ伝わらないのではないかという考えから、社内での活動等も全員参加としている。又、毎日現場日誌を記入させ、本人と家庭と会社（現場）の連絡ノートとして活用し、定期的に障害者就業・生活支援センターの支援ワーカーからの支援もお願いしている。

製造ラインへの部品供給

（2）活用した助成金等

障害者職業生活相談員でもあるKさんを業務遂行援助者として、独立行政法人高齢・障害者支援機構（当時）所管の障害者介助等助成金「業務遂行援助者の配置助成金」を現在利用中である。

●その他利用した助成金

・特定求職者雇用開発助成金（特定就職困難者雇用開発助成金）

5．障害者雇用における効果・メリット及び今後の取り組み

障害のない者と共に作業することで、障壁が取り除かれ、対人関係及び社会でのバリアフリーコミュニケーションの場が出来上がった。障害を理由とする差別や特別視を受けた等の経験があるからこそ、“仕事のありがたみ”を持って働いている姿勢が、他の従業員へも良い影響を与えている。

又、営業活動の中でも“障害のある人達が頑張ってくれるのであれば”と業務提携や契約につながることも増え、多くの人との繋がるきっかけにもなっている。

今後の取り組みとしては、精神障害のある従業員の担当業務のスキルアップについて、障害者就業・生活支援センターの支援ワーカーと相談しながら、メンタル面や体調面でのバランスを崩さないよう配慮しながら、取り組んでいきたいとのことである。

6．障害者雇用について

（1）会社として感じていること

人の悪口・批判を全くせず、基本作業に忠実に真面目に取り組む姿には頭が下がる思いである。入社時、休み時間のたびに家や施設に電話していた人が、他の従業員と笑顔で話す事が増えたり、社内部活動に入部したりと、仕事を任せられたことへの自信が、心も含めた様々な面に変化をもたらしていると実感している。

向き不向きはあるにせよ、やらせてみなければわからない。思わぬ力を発揮することもあり、そんなことの積み重ねで、現在どの社員も会社になくてはならない大切な存在である。

（2）従業員の声　～業務遂行援助者Kさんより～

①障害のある人もない人も違いは無い

障害者雇用の成功の鍵は“如何に人を活かせるか？”だと考えます。

障害の有無に関わらず、人には個性があり、適正な業務に就く事は本人にとって何より幸せな事だと思います。それは本人にも知りえない真実かもしれません。それを的確に正視し、適材適所に配置が済んだ後は、誰でも判りやすい作業手順の確立です。それは障害のない人にも同じ事が必要です。障害のある人・ない人の違いは、スタートラインが違うだけだと思います。結論は如何にして人を活かして行くかが大切であると考えます。

②障害者雇用は人を成長させる

障害者を支援するようになって、以前と比べると具体的な指示を出せるようになりました。説明もより判りやすくするように考えます。伝わるまで何度でも行います。日々社長から「できないのは本人の能力に問題があるのではなく、させる事ができない指導者が悪い」と叱咤激励を受け、日々業務改善を行っています。それは業務だけではなく普段の生活にも及びます。冷静に求めている事に対する結果の分析、根気よく今求めている事だけを達成する施策、静かに相手の言動や現実を受け入れる。

障害者雇用を通じて、私の心は豊かになりました。支援する側とされる側は相互関係にあり、結果、人としても成長できた気がします。

③障害者雇用は企業だけでは成し得ない

企業だけでの障害者雇用は難しいです。不安・戸惑い・迷いは、各支援機関の協力により解決していただき緩和されています。

取り組み当初に比べ、支援機関との関係も密接になり、そのことも雇用促進の要因の1つです。又、助成金の利用も障害者雇用のさらなる促進に繋がっています。

まだまだ始まったばかりの障害者雇用ですが、みんなが安心して働ける企業を目指し、更には未着手の企業に向けて、少しでも低リスク高リターンの障害者雇用の情報を発信して行きたいと思います。

7．まとめ

この冬、当事業所のある燕市は、大雪に見舞われた。

精神障害のある社員は、代表のI氏の誘いで生まれて初めて雪かきに挑戦したという。こういう機会も大切なコミュニケーションの時間。仕事のこと、悩みごと、色々な話をしながら少しずつ様々な壁が消えていく。

「ある時、精神障害を抱えてしまった理由を話してくれたんです。相当な勇気が必要だっただろうに。本当に嬉しかったですよ」とI氏は満面の笑顔で話してくれた。

「自分には何十人の家族がいる！頑張るよ！見ていて！だからみんな手を貸して！」あふれるエネルギーといっぱいの愛情で、会社全体を包み込むI氏を中心に、今日もまた新しいアイディアが、発見が、そして出会いが生まれていることであろう。

執筆者：社団法人新潟県雇用開発協会  障害者雇用アドバイザー  高木 江麻